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第十六章

レベル255 第十六章完結

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 それよりコイツラ、なんとかしてくれないかな?

 精霊石から現れた小人さん達、オレの髪を引っ張ったり、頬を抓ったりしてくる。
 ええい、うっとおしい!
 掴んでは投げ、掴んでは投げを繰り返すが、その度にピョーンと飛び掛ってくる。

 イダダダ、サウ、お前まで調子にのるんじゃない!

「……みんな、止めて」

 アポロがそう言うと、ピタッと止まって机の上に整列する。
 ふむ、アポロの言う事は素直に聞くんだな。

「そりゃ王様だしな」
「王様には逆らえませんよ」
「王様バンザイー!」

 しかしこいつら役に立つのか?
 こんな姿じゃ、まだ猫の手の方がマシなんじゃなかろうか。

「元々精霊は特定の姿を持たぬもの。成長すれば姿も変わる、精神的に大人になれば先ほどの姿になれるやもしれぬぞ?」

 そう言ってニヤリとアポロを見やるダンディ。

「くぅ……それは私の精神が子供っぽいと言いたいのか」
「ま、そんなに急いで大人になる事もない。ゆっくりと自分の望む姿を目指せばよいのではないかな」
「そうッスよ、急に大きくなっても良い事はないッスよ?」

 こんなの重くて動きづらくなっただけッス。
 そう言って自分の胸を持ち上げるティニー。
 そりゃ使う予定がない奴は関係ないよな。って毒づくアポロ。

「それどういう意味ッスか!?」

 まあまあ、おさえてティニーさん。
 その時、コンコンと扉をノックする音が聞こえる。
 そっと扉の隙間から顔を出したのはサヤラであった。

「あの~、もうこれ以上仕事増やされますと、その、体が持たないというかなんというか……」

 どうやらダンディが呼び出していた模様。

「え、あれ、アポロ……? というか、どうして裸なの!?」

 サヤラに指摘されて始めて気づいたのか、キャッと言ってうずくまるアポロ。
 すると、アポロの体が一瞬ぼやけたかと思うと、一瞬にして服を纏っていた。
 なるほど、そうやって姿を変えていける訳か。

 コスプレし放題だな!

「うむ、久しぶりに来たのだ、サヤラにも会って行けばどうかと思ってな」
「そうだったんですか、良かった。またなんか仕事を増やされるとばかり」

 おめえ、あんまサヤラに無理させるなよ。

「そんなに無理はさせてないわよ。ねえ」
「あはは……ところで、アポロが居るってことはクイーズさんも、こっちきに来てたり……あ、でも戻って来れないんだっけ」

 いやいや、ちゃんと戻ってきてますよ?

「え……これがクイーズさん……」
「どうであろう、なかなかの物ではないかな」
「サウの、最高ケッサク。ケケケ」

「どうしてこんな事に……」

 どうしてでしょうかね?

「そ、その、私は以前の方が、その、かっこよくて良かったと思いますよ?」

 サヤラだけだよ! そんな事、言ってくれるの!

「どちらにしろ、精霊王のスキルについては今後の要検証にあたりますね。それよりもダンディ、私は現在の王宮の状況が懸念なのですが」
「そ、そうよ! 一体全体どうしてこんな事になっているのよ!?」
「ふむ、先に説明したであろう。ぷらすちっく、とやらを生産するためである」

 いやそれは分かるんだけどね。
 問題は、なぜその工場を王宮を潰してやってるかってことですよ。
 帰ってきたらマイホームが工場になってたって、さすがのパセアラさんでもびっくりですよねえ。

「実はこのぷらすちっく、作り方はさほど難しくはないのである」

 なんぜ精霊水を熱して固形部分を取り出すだけである。
 精霊水を作るの自体も特別な技術は必要ない。
 材料と配分、それさえ知れれば誰でも作れる。

 そして材料はどこにでもあるものばかり。

「どんなに秘匿しようとも、完璧などはありえない」

 量産しようとすれば、多くの者がその材料と配分を知る事になる。

 ならば、だ。
 例え作り方を知られても、それを作り販売しようと思われないぐらいに、先に市場を独占しようと。
 大量生産・大量消費で一気にコストを下げる。

 他所が真似して製造所を作ろうとしても設備投資が見合わないぐらい徹底的に。

「それには、広大な土地と警備のしやすい安全な場所が必要になる」

 まさしく、王都にある王城など、うってつけではないか!

 それに王都ならばインフラも整っている。
 特に、ヘルクヘンセンはピクサスレーンと他国を繋ぐ要的な場所であったため、多くの国々と直通道路も存在している。
 そして、簡単に壊される心配も少ない。

「人は城、人は石垣、人は堀。王城の周りには街がある、王都を壊滅させようとしない限り、この工場を襲うことは不可能!」

 そのことわざの使い方はちょっと違う気がするぞ。
 それ人を盾にしてるじゃん。
 いやまあ、やろうとしてる事は一緒なんだろうけど。

 ちゃんと「情けは味方、仇は敵なり」もなければ自滅するぞ。

「少しくらい穴がなければ、万が一、我輩が攻める側になった時に困るであろう」

 ほんとこの腹黒は……

「現王が力を持ち過ぎる形になっていませんかね」
「王城跡地が工場であるからな。ほとんどの貴族は今回の利権には噛んでおらん。利益はまさしく王様の独り占めであるな」

 跡地って言っちゃってるよ。

「大きく力を持ち過ぎた王! もはや貴族の地位は地に落ちる。そうゼラトース家も含めてな」
「何が言いたい骸骨……」
「このままでは主の実家も被害を被る。それでなくても前回のクーデターの首謀者、現王からは大層恨まれておろう」

 だがそれを覆す一手も存在する。

「そう、現王の一人娘、パセアラ姫を娶れば良いのだ」

 しかし、それらの富はいずれ一人娘のパセアラが継ぐもの。
 だとすれば、そのパセアラを取り込めば、全ては主のものとなる。と、ニヤニヤした表情でオレの方を向くダンディ。
 こっち見んな! そんなの無理に決まってるだろう。

「ならばこれはどうかな、パセアラ姫と主の間に子供を作るというのは」

 そう言って懐から小瓶を取り出す。
 パセアラは一人娘。
 次期王様は、本人か伴侶、あるいは子。

「パセアラ姫が王位を放棄した場合、その子が次期国王。聖皇国のユーオリ殿のお子様のようにな。まさしく現状は似たようなものでもあるし」
「それは生命の雫か……?」
「そうである。ま、コレじゃなくても本当に作っても良いのだろうがな」

 開拓地にはエクサリーは居ない。
 こっそりやるのは今しかないわよぉ。
 とパセアラに囁くダンディ。

 おまっ、いい加減にしろよ!

 そもそもパセアラがそんな事考えるわけがないだろう。

「そ、そうよ、どうして私が……クイーズがどうしてもって言うなら、か、考えてあげない事もないけど」
「それに婚約の件も、未だ正式に破棄されている訳ではないであろう」
「そ、そうよ、貴方から申し出た婚約でしょ。男が一度言った事を簡単に翻すってのもどうなのよ」

 え、そうでしたっけ?

◇◆◇◆◇◆◇◆

 その日の晩、久しぶりにパセアラは父と同じ食卓を囲う。

「パセアラよ、もう十分満足したであろう。いい加減帰って来てはくれぬか」
「いいえ、まだ彼等には私の時空魔法の力が必要なのよ」
「そうであるかのう……せめて護衛の一人でも連れて行ってはくれぬか」

 彼等以上の力の持ち主なら考えてあげるわ。と、取り付く島もないパセアラである。

「はぁ……本当にお前は昔から、こうと決めたら頑固なところがあるのぉ」
「別に私は頑固じゃないわ」
「よく言うわ。クイーズを自分の許婚にすると連れてきたときもそうであっただろう」

 えっ、て表情で顔を上げるパセアラ。

「覚えておらんのか? まあ小さな時じゃったからの」
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