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第十六章

レベル251

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「それではここからは、わたくしことサキュバスのフフが道案内を勤めさせて頂きます!」

 翌日、ラピスが助っ人を連れてきた。
 それは、以前アスカさんのパーティメンバーの人が連れていたサキュバスのフフ。
 なんと、カード化したときに魔王と表示されたモンスターだった。

 なんでもこのフフ、実はこの先のモンスターの国からやってきたらしい。

「国、と言っていいかどうかは分からないけど。統治とかそんなのはない、ただ、アイツに逆らったらヤベエってのが居て、そいつの命令がなによりも優先されるだけよ」

 で、実はこのフフ、そのヤベエ奴が父親なんだと。
 本来、異種族間の子供は父親の種族が優先される。
 しかし生まれてきたのは、母親と同じサキュバス。

 コイツ実は本当の子供じゃないんじゃね? なにせサキュバスだし、どこで男を誘惑したか分かったもんじゃない。

 などと回りから言い振らされて、親子共々、命からがら逃げ出して来たという。
 この先には高い山々がそびえる山脈があり、向こうのモンスター達からは始まりの山脈と呼ばれているそうだ。
 そしてその山脈に近づいたものは理性を失い、凶暴化してしまうと言われ、誰もが近寄らないと言う。

 さらに山脈の向こうには竜王が治める世界があり、自分たちモンスターは竜王の餌となる運命しかない。
 そう言い伝えられてきた。
 もはやここには生きる場所は無い、と悟ったフフ達親子は決死の思いで、その山脈を超えてきたわけだ。

「まっ、実際は山脈も大した事、無かったし、竜王なんてとっくの昔に廃れてた訳だけどね」
「しかし大丈夫なのか? レベルも1になっているし、来たときとは随分難易度が違うぞ」
「ラピス様のご所望とあれば、このフフ、命だって惜しくはありません!」

 良い子ですね、といってフフの頭を撫でるラピス。
 フフの悪魔の尻尾がエライ勢いで左右に振られている。
 まるでよく懐いている子犬のようだ。

 いつのまに調教したのお前。

「フフは本当に役立ってくれてますよ。この大地の情報もしかり、ハイフレムの残党の件しかり……」
「はいっ、力はありませんが情報だけなら任せておいてください!」
「最終的に戦争は、情報を制した者が勝利者となるのですよ」

 そう言って褒めてやると、益々、恍惚の表情でハァハァと息を荒らげている。
 大丈夫かソイツ?
 ちょっと目がイっちゃってるぞ。

 なんでも、向こうでは何をしても褒められる事はなかったそうだ。

 力こそが正義の世界。
 サキュバスのような絡めてで攻めてくるモンスターは周り中から毛嫌いされていた。
 ハイフレムの部下となっていたときも、さんざんこき使われた挙句、労いの言葉ひとつなかったそうだ。

 しかしラピスは違う。
 情報こそが最も重要であると考えている。
 その情報を容易く集めてくるフフをとても重宝している。

 そんな、地獄から天国に変わった職場にフフは大歓喜。ラピスこそが理想の上司に見えている訳だ。

「さて、それでは気を取り直して、本日も頑張りましょうか」
「そうは言うがおめえ、少しばかり戦略を練り直さないさないと無理じゃね」

 当初、この地域のモンスターをゲットして、ボディガードに雇おうと思っていたのだが、見事に思惑がはずれた訳だ。
 やはりこのカードはレベル関係が重要なのかもしれない。
 オレがゲットすればいいのだろうが、その場合はレベルが1になる上に、下手すりゃ面倒な奴になりかねない。

「やはりここはじっくりとレベル上げに専念すべきではなかろうか」
「昨日来た様なボス格? あれらを倒して行けば、一帯のモンスターは退けるそうですよ」

 そうやってダンディは開拓していったらしい。

「勝てるとは思えんのだが……」

 亡霊だった頃のペンテグラムよりレベルが高いんだぞ。
 しかも今は、フル装備じゃないし。
 えっ、あと少しだった?

 次も同じ様に油断してくれるとは限らないぞ。

「レベルを上げるにも避けては通れない道です」
「随分張り切ってるなぁ、お前」
「いつまでもウジウジしてないで行動しなさいよ、男でしょ」

 そう言って背中をバシンと叩かれる。

 今日は朝から機嫌のいいパセアラさんである。
 昨日まではどこか影があったのだが、今日は何か吹っ切れた感じがする。
 夜中に何かあったのだろうか?

『大丈夫っスよクイーズさん、今日は何かやれそうな気がするっす』
『……何か急に力が沸いた気がする。今なら黒竜も一人でやれる!』

 ほんとに大丈夫か二人とも?
 急にレベルが上がって心がおいついてないんじゃ……
 なんかテンションがおかしいし。

 ティニーなんて、たった一日で10レベル以上あがっている。

 このまま突き進んで大丈夫なのだろうか……

◇◆◇◆◇◆◇◆

「逃げるやつはモンスターだ! 逃げないやつは、訓練されたモンスターだ!」

 ちょっとティニーさん、人型で暴れるのはやめましょう。
 ティニーが向かってくるモンスターに二丁拳銃をブチかます。
 弾が切れると同時、上に放り投げて落ちてきたところに器用に弾丸をセットしてさらに撃ちまくる。

 防御なんて考え無しに突っ込んで行く。
 ティニーって、こんな性格だったっけ?

「クイーズさん、ここらのモンスターは制圧完了ッス」

『レディガンナー・ティニー』
 ☆4・レベル23
 スキル:必中、弾丸練成
 備考:狂化

 備考になんかトンでもない物が追加されている。

 銃型スタイルの方でもモデルチェンジが4つになり、機関銃が増えた。
 非常に役に立っているのでティニーばかりを使っていたのだが……
 ちょっと短期間にレベルを上げ過ぎたかもしれない。
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