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第十六章

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「これは決して、彼にとっても悪い提案ではないと思っている」

 竜王ニースを前にして聖皇国の皇帝がそう告げる。

「彼は力を持ちすぎた。モンスターを操るスキルは数多くあれども、竜王を従えた者は存在しない」

 たった一体でも国を滅ぼす能力を持つといわれている竜王。
 それを4体も従える。
 そして実際、その力をもってアンデッドの古代王国を滅ぼした。

 それができるという事は、彼がその気になれば普通の国を滅ぼす事も可能だと言える。

「それを脅威に思わない国はどこにも存在しない」
「だからといって敵対する行為は、逆に滅びを加速するだけじゃぞ」
「そう思わない国もあるのだよ」

 かつて人は、不可能だと思われた竜の支配から独立した。
 かつて人は、不可能だと思われた不死者の国を打破した。

 たとえどんな強大な敵が立ち塞がろうとも、人々が団結すれば、不可能は無い。

「そう思う国は少なくない」
「正直な話をするが、私一人が人側についたとしても、アレらには適わない。万が一戦うというのなら、私はクォースを連れて逃げる」
「…………だからこそ今なのだよ。今ならまだ追放ですむ。本格的に彼が危険視される前に、人の前から姿を隠して欲しい」

 今はまだ、彼の危険性は漠然としたものだ。
 彼の性格もあるのだろうが、その力を鼓舞して人々を恐れさしたことは一度も無い。
 むしろ、その力を使って国々を良い方向へすら導いている。

「今回の件、竜王クラスには動いてほしくはない。そのかわり……」

 あくまで追放を受けるのはクイーズ本人のみ。
 彼の関連者については、全て身の安全を保障する。
 かつてのピクサスレーンのように、無人の荒野を切り開くのならば力を貸すこともやぶさかではない。

「何かあってからでは遅い。ひとたび彼のモンスターが人を傷つけるようなことがあれば、我々は彼との全面戦争に突入せざるを得なくなる」
「そのような事は主が望まない……か」
「この事を彼に伝えて欲しい。我々は決して、悪意があってこのような形になった訳ではないということを」

◇◆◇◆◇◆◇◆

 という事がありましてね。

「うむ、そもそもが、ここまで力を備えること事態がありえん訳だ」

 ニースが腕を組んだままそう答える。

 普通ならば力を持ちすぎる前に何らかの手を打たれる。
 天啓のスキルの持ち主であったならば、すぐに国に囲われただろう。
 モンスタカードという、未知で、一件、使い道の狭そうなスキルだったからこそ、ここまで放置されていた訳だ。

「だれも竜王クラスをゲットできるなんて思わないでしょうしね」
「まずは竜王に勝たないと駄目だからなあ……」
「ガウッ、ロウリニ、カンシャシロ」

 最初に、ホワイトドラゴンであるロゥリをゲット出来たのが幸いだった訳だ。
 それにより竜種特効を得、後々の竜王戦を優位に展開できた。
 そう思えばロゥリの手柄は大きいのだろう。

 まあ、それもこれも全てコイツが提案した事な訳だが……

「何か?」
「いや、よく考えたらあの提案がターニングポイントだったんじゃないかなあと、な」

 まあそれは過ぎた話だ。

「とにかく、オレがこの提案をまるくのめば、エクサリーや子供達の身は保障される訳だ」
「うむ、万が一お主等の身に何かあれば我等、竜王が一斉に立ち上がると脅しておいた」
『私が付いているのよ? 何かあるわけないジャン。まっ、何かあるのは先に向こうになるわね』

 なお、ニースの奴はホウオウから少し距離をとってビクついている。
 よっぽど昔になにかあったんだな。
 いいかげん仲直りしろよ?

 エクサリーはジッと腕に抱いた子供達を見つめている。

「とりあえずオレはピクサスレーンの西、未だ人類未踏のエリアに行ってみようと思う」
「ダンディがやったように西の大地を開拓していくの?」
「いや、オレはそこまでは求めてはいない。ただ、安全に住める場所があれば……」

 小さな村ぐらいでもいい。
 モンスターの集落でも作って回りをがっちり囲んで。
 なんなら鉱石関係をゲットして高い壁を作ってもいい。

 安全な場所さえ確保できれば、後はエフィールさんに時空魔法でもセットしてもらおう。

「そうすれば、ちょっと遠い自宅ができるだけだ。エクサリー、少しの間だけ、待っていてくれないか」
「少しの間ってどれくらい?」
「そうだな……一ヶ月?」

 さすがにそれは無理じゃないでしょうかね。と隣でラピスが呟く。
 おめえオレの参謀だろ、なんとかしろよ。

「なんとかと言われましてもねぇ……まあ、主の無茶を聞くのも参謀の務めですかね」

 何をやっても怒らない、という約束をして頂けるのなら、なんとかいたしましょう。などと言う。

「………………」

 いいだろう、お前を信じてやる!
 この際だ、少々の無茶は目をつぶる。
 一月以内にオレとエクサリーの愛の素を作ってくれ!

「それではさっそく、ゲットしたいものがあるのでカードをもらえませんか?」
「何をゲットするんだ? 最後の一枚だから大事に使えよ」
「分かっていますよ」

『モンスターカード!』

 そう言うと、おもむろにカードを掲げる。
 その光にオレの全身が照らされる。
 ちょっ、おまっ、なにすんっ!


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ラピスまさかの下克上 Σ(゚Д゚)
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