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第十五章

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「船舶の停泊料、及び王城の崩壊について、損害賠償を請求する!」

 あいつらも懲りないなあ……パイレーツ諸島連邦から、またしても書状が届いた。

 空母の停泊料は兎も角、王城はそっちの自業自得だろ?
 しかもコレ、城どころか国が買えそうな金額を請求してきている。
 一体何を考えているのやら。

 仕方ない、

「とりあえずこっちも請求書だしとくか、この金額にゼロ一つ足して」

 名目は海神とやらをオレ達にけしかけた事にしとくか。
 シラをきろうにも、こっちにゃ証拠がごまんとある。
 これでおとなしくなるだろう。

 と、思っていたのだが、

「これだけの金額を支払う能力はない! よって我々はすべて現物としてそちらに受け渡す事となった!」

 どういう意味だってばよ?

「やられましたねお坊ちゃま。最初からこれが狙いだったかどうかは兎も角、見事、お坊ちゃまの保護下に入ったわけですよ」

 オレが請求した金額に対して、この国には支払い能力がない。
 よってこの国は、まるごとごっそり担保になったと。
 そして担保になった以上はオレの財産となるので、何かあったら守らなくてはならない。

 などという事らしい。

「株主になった感じか?」
「近いかもしれませんね。国の運営、体制そのままに、お坊ちゃまと言う強大な後ろ盾を手に入れた」
「なるほど大胆な事を考えるな、下手すりゃ国を乗っ取られてもおかしくないだろうに」

 向こうもお坊ちゃまの性格を調べてきてるか……あるいは、それが蔓延しているか……と、ブツブツ呟きながら考え込むラピス。

「それじゃあ株主総会でも開いてもらわないとな。突然こんな事を言われても困る」

 とりあえず脅しの意味も込めて、島々の主要都市を回る事にしたのだが。
 なぜか各地で、もの凄い歓待を受ける。
 空母クィーン・ウィルマが町の上空を通ると、人々は笑顔で両手を振って迎えてくれる。

 いったいどういう事だってばよ?

「調べてきました。どうやら海神様が船の姿をとって、守り神として光臨した。という設定になっているらしいですね」
「マジか~……」
「もはや大陸の言いなりにならなくてすむ、なんて涙ぐんでいましたよ?」

 確かに、内容自体は間違ってはないのかも知れないが。

 最後にこの島々を纏めているという、例の王城があった街へ訪れる。
 そこではまるで、街の人々が全て出てきているかのように、道という道に人が溢れかえっていた。
 船が近づくに連れ大歓声を上げる人々。

「よっぽど大陸に煮え湯を呑まされてきたのかな?」
「それもあるかもしれませんが、やはり海神ウィルマが姿を現したという部分が大きいのでしょうね」
「あっ、マスター、何か歌ってますよ! 私達も歌い返しましょうよ!」

 ギターちゃんが身を乗り出してそう言ってくる。
 この距離じゃオレでも聞こえないんだが?
 えっ、曲は覚えた?

 ふむ……ラピス、いけるか?

 ラピスが耳をピクピクさせながらいいですよ。と答える。
 よし! 良いだろう!
 轟かせよう、この空母で運ぶ音楽を!

 オレは久々にギターを手に取る。
 ギターちゃんはなにやら大喜びのご様子。
 いつもよりも音が澄んで聞こえる。

 ラピスが地上にまで聞こえるようにドラムシンセの調整を行う。

 徐々に空母から広がって行く音楽。
 馴染みのある歌が空母から聞こえてきたことにより、地上の人々は大パニック!
 中には興奮で失神している人も見受けられる。

 ちょうど王城跡地の上空へたどり着いたところでクィーン・ウィルマ号は停止する。

 跡地の中心では幾つかの机と椅子が並べられ、何人かの人が待っていた。
 オレは空母の底を変形させ、丸いエレベーターのような形に変えてその場所へ降りる。

「ようこそおいでくださいました! 我等一同、首を長くしてお待ちしておりました」

 手紙とは違って、随分腰の低い人達だな。
 あれかな、文面になると人が変わるタイプかな?
 なにやら長ったらしい前置きをしてくるので、いいからさっさと本題へ入れと催促してみる。

「議題の通り、我々としてはお望みのものは用意する事はできません。よって我等の身上は全て、海神様のモノとなります!」

 誰が海神なんだよ?
 海神様は上で浮かんでいるぞ。
 と、なにやら金銀財宝を美男、美女が運んでくる。

 えっ、コレ貰って良いの?
 えっ、運んできた美女も貰えるの?
 えっ、やったぁああ!

 隣で、もしもし、ホウオウですか、今隣でお坊ちゃまがですね、などとラピスが言いだしたので慌てて返品させてもらった。
 おまっ、即効チクろうとするなよ!
 別にそんなやましい気持ちでは決してなかったのですよ?

 ほら、空母のクルーも必要だし。

「それにしては、随分慌てて返品されてましたねぇ……」
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