上 下
226 / 279
第十四章

レベル226 『モンスターカード!』で、ゲットしてみたら空母になりました。

しおりを挟む
 ロゥリのカードがオレの目の前に浮かび上がる。
 その備考欄、そこには一つ、文字が増えていた。
 その名も、メテオブレイカー!

 以前、黒竜をエルメラダス姫様が倒したときに使った必殺技。

 それがなぜかカードの備考欄に描かれている。
 ロゥリの突き出した手にドラゴンスレイヤーが現れた。
 そしてそれは、その場で高速回転を始める。

 なるほど! ただ投げるじゃなくて回転運動を加えたわけか!

 ロゥリにしては中々の発想じゃないか!
 ただちょっとロゥリさん、回転させ過ぎじゃないですか?
 剣に纏わりつく空気が、地面の砂を巻き上げて荒れ狂う砂塵の嵐となっている。

『ガウッ! メテオブレイカー!』

 それが頂点に達した時、先端を赤く染めながらとんでもない衝撃派を伴って射出される。
 それは巨大なウィルマの本体を貫き、大穴を空けた!
 ウィルマが空気を震わすような大きな咆哮を上げる。

 ウィルマから雷を纏いながら回転する、無数の水の塊がロゥリに向かう。

 だが!

『鉱石M・ライオットシールド!』

 オレがそれをさせはしない。
 メテオブレイカーを撃ち出すまでの間、オレがロゥリを守ってやる!
 アポロも頼む!

『任せて!』

 メテオブレイカーにより、体中に穴を空けられていく海竜王ウィルマ。
 世界を支配していた、様々な魔法は色あせ、今はもう、ただ水の固まりが力なく襲ってくるだけ。
 最後に、長い長い咆哮を上げて地響きと共に崩れ落ちるウィルマの巨体。

 それを見てオレとロゥリは、共にハイタッチを交わすのであった。

◇◆◇◆◇◆◇◆

「これが、古き竜の時代の終焉……なのでしょうかね」
「終わりなどではない、これは始まりなのだよ」
「ニース! どこかへ行かれたのではなかったのですか?」

 竜王ニースが、力なく海に浮かぶウィルマの下へゆっくりと歩み寄る。

「確かに竜の世界は終わりを告げたのであろう」

 だが、これからは竜と人との世界が始まると言う。

「竜と人、ですか?」

 見てみよ、と指を差すニース。
 そこでは人と竜がハイタッチを交わしている風景がある。
 竜だけではない、人だけでもない。

 人と竜、それがそこにあるのだ。

「竜は昔、世界を支配していた。しかしその竜は人に滅ぼされることになる」
「竜より人の方が種として上であったと言いたいのですか?」
「いや違うな、存在そのものは竜が上であろう。違ったものは、竜は竜だけであった、だが、人は人達であった」

 竜という存在は、基本、単騎で戦う。
 ハイフレムの様に下級なモンスターを扱うことはあっても、竜と竜が協力して戦うことはなかった。
 その結果、集った人達によって滅ぼされることになったのだ。

「そしてその人達だけの世界も時期に終わる」

 これからは竜と人、それとモンスターが共に暮らす世界となるのだ。

「フフッ、まるで預言者のようですわ。……私はその先を見る事は適わないようですが、貴方が言う、そんな世界も見てみたかったですね」
「まだ諦める事はない」
「あの剣に貫かれた箇所が回復しませんの。それにもう、私も年ですしね……」

 そう言ってゆっくりと瞼を閉じる海竜王ウィルマ。

「もう一度やり直したいと思わないのか?」
「やりなおせるものなら……ああ、私は筏になりたい、筏になって、この広い海をどこまでも漂っていたい」

 ウィルマは海を漂う筏のようなものに憧れていた。
 巨体で重量のある彼女は常に泳いでいなくては沈んでしまう。
 海はいつも彼女を、暗い海底に引き込もうとしているかのようで。

 それでも彼女は海が好きだった。
 海の中にいればどこにでもいける。
 どんなに悲しい感情も洗い流してくれる。

 どんな大粒な涙も、海の雫の一滴でしかない。

 お前らしい答えじゃな。と呟いたニースの気配が遠ざかって行く。
 人と共に歩む道を選んだニース。
 彼は人と竜は分かち合えると言う。

 私もまた、人と分かち合えたら良かったのかもしれない。と小さく呟くウィルマ。

「ならば試してみないか? あんたとオレ達が分かち合えるかどうかを」

 ふと瞼を開くと、一枚のカードを手に掲げている人が見える。
 そのカードから照らされる優しい光に包まれていくウィルマ。
 その光はどこか、まるで海に包まれているかのような錯覚を覚えさせるのであった。

◇◆◇◆◇◆◇◆

 おいラピス! ラピスたん! とんでもないものが出たぞ!

 クリスタルカードは現状一枚しかない。
 仮に戦艦になったとしてもレベルの上げようが思いつかない。
 砲塔があっても砲弾がなければ役に立たないだろう。

 とりあえずノーマルカードでゲットして、レベルを上げてから戦艦にするかどうか考えようと思ったわけだが。

『空母クイーン・ウィルマ』
 ☆10・レベル1
 スキル:水生成

 空母! 空母ですってよ!
 クリスタルカードが戦艦で、ノーマルカードが空母!
 こりゃとんでもないものゲットしたぜ!

 と、思ったわけですがぁ。

「凄いどころじゃないですよ! 空母があれば、海を支配したも同然じゃないですか!」

 ところでお坊ちゃま、どうしてイラスト部分を手で隠しているのですか? と聞いてくる。
 いやだってねえ、それがですねえ。
 まあ、とりあえず呼び出せば分かるか。

『出でよ! 空母クイーン・ウィルマ!』

 全長30メートル、直径3メーターはあろうかという――――丸太。
 その丸太が敷き詰められた一面。
 はい、どうみてもただのデカイ筏でございます。

 この時代だと、これでも空母と言えるのだろうか?

 確かに、これぐらいでかけりゃロゥリぐらいは乗れるだろうが……
 ラピスがええ……って顔で見つめている。
 その気持ちはよく分かる。

 オレもカードを見たときはそう思ったよ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~

イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」   どごおおおぉっ!! 5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略) ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。 …だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。 それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。 泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ… 旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは? 更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!? ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか? 困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語! ※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください… ※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください… ※小説家になろう様でも掲載しております ※イラストは湶リク様に描いていただきました

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。

まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」 そう、第二王子に言われました。 そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…! でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!? ☆★☆★ 全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。 読んでいただけると嬉しいです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

処理中です...