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第十四章

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「ボクがついていなくていいのかい?」
「ああ、カシュアはロゥリの治療に専念してくれ」
『大丈夫、クイーズは私が守る。……決してカシュアを出し抜けるチャンスだなんて思っていない』

 アポロさん……いやまあ期待してますけど。

 オレは、呼び出したカシュアをロゥリにつけ、海神ウィルマと対峙する。
 奴さんの攻撃は基本水を使ったものばかり。
 あの糸のような攻撃以外はコイツでなんとかなるか?

 うぉっと、意外に難しいな。

 オレは手にしたドラスレの万有引力のスキルを発動した。
 重量軽減と同じで持っていればオレでも使える。
 オレはその万有引力を使って体を浮かしてみたのだ。

 しかし、フラフラして動きが定まらない。

 これはちょっと、いきなり実戦投入は難しいな。

『……大丈夫、私に任せて』

 アポロがそう言うと、オレの体が安定し始める。
 足元に風の渦が発生している。
 なるほど、こいつを足場にしろというわけか。

 でもコレ使いながら別の魔法使えるの?

『……それはちょっと難しいかもしれない』

 アポロの力を移動に使うか、攻撃に使うか。
 今の所、空飛んでも良い事はないし、ちゃんと地面に足をつけて戦うか。
 ウィルマの付近では、水の竜巻がまるで水竜の頭の様にグネグネと蠢いている。

 まずはアレをなんとかするか、任せたぞアポロ!

『任された!』

 オレの両肩付近から丸いボールのような何かが生まれ、放物線を描いて海に向かって飛んで行く。
 それがポチャンと落ちた瞬間だった!
 突如、そこを中心に凍り始める海。

「なっ!?」

 驚いた声を上げるウィルマ。
 さてと……そんじゃやりますかね。
 オレはドラスレを水平に構える。

 そしてそのまま手を離す。

 すると猛スピードですっ飛んで行くドラゴンスレイヤー。
 おっ、これ使えるな。
 万有引力でウィルマに向かって一直線。

 ウィルマに当たったと思った瞬間、バシャッと水に変わるウィルマの本体。

 すると氷を割って海中から巨大な体を現す海竜王ウィルマ。
 どうした、海神ごっこはもうおしまいか?
 オレは再度ドラスレだけを召喚しなおす。

 もういっちょ行くぜ! ドラゴンスレイヤー!!

 狙う必要もなく深々と突き刺さるドラゴンスレイヤー。
 と、同時に、体のあちこちで爆発が発生する。
 アポロの魔法が次々と炸裂しているのだ。

 図体がでかけりゃその分、的もデカイって事だ。とりあえず投げりゃどこかには突き刺さる。

 しかし、その巨体にドラスレ程度の刺し傷では大したダメージには見えない。
 奴さんも急所を避け、わざと肉厚な場所でドラスレを受け止めている。
 まあ、これだけで勝てりゃ世話はないわな。

 ウィルマが口を開きそこに水飛沫が集っている。

 咄嗟に、その口に向けてドラスレを放るが、見事に避けられしまう。
 そして完成する水のブレス。
 砂浜一面を強烈なジェット水流が襲う!

『出でよ! マンドラゴラ・ギター』『音の世界・発動!』

 オレはそれを音の世界に逃げ込んでかわす。
 再び舞い戻ってみると、砂浜の中心は抉れて海と一体化していた。
 とんでもない威力だな。

 まともに食らえば、鉱石Mとて、もたないだろう。

「アポロはこのまま海面を凍らすことに集中してくれ!」
『了解した!』

 オレは凍らせた海面の上を滑って行く。
 ドラスレにかけた万有引力で、ソリのように直進する。
 なんかジェットスキーみたいで楽しいなコレ!

 ウィルマからの攻撃を鉱石Mで受けたり、避けたりしながらの巨体へ辿り付く。

 そのまま重力を上に向ける。
 そう、奴の頭に向けてだ!
 咄嗟に首を捻って避けようとする、だが、曲がらないと誰が思った?

 手を離せば一直線にしか飛ばないが、今はしっかりと握っている。

 そのまま首を深くドラスレで切り裂く。
 突き刺すじゃなくて、切り裂くならそっちも堪らないだろう。
 再度上空から、首に向けて切りかかろうとしたその時、オレの全身が真横に引っ張られるような衝撃を受ける!

 見ると、ウィルマの全身がスパークしたかのように電撃に包まれている。

『……危なかった』

 どうやら危険を察知したアポロが、魔法でオレの体をウィルマから引き離した模様。

「人間ごときが……いつまでも手加減してやっておればつけ上がりやがって!」

 突如ウィルマの周辺に雷が轟き落ちる!
 それは海の表面の氷を次々と破壊していく。
 さらに砂浜が隆起し、手のような形をとって襲ってきた。

 なんだアイツ、水以外も使えたのか!?

 吐くブレスも変わってきた。
 水だけじゃなく、雷も纏っている。
 その雷は、地面に飛び散った水を伝って襲ってくる。

『くっ、させない!』

 アポロが水の壁を作り出して、その電気を逃がそうとしたとき、突如その水の壁が爆発する。
 猛烈な温度のシャワーがオレを襲ってくる。

「炎の魔法まで!?」

 あちっ、アチチチ!

「竜王とは全ての属性を持つ存在よ、ただ私は海竜として誇りを持って水にこだわっていたに過ぎない」
「だったらもっとこだわってろよ!」
「それを辞めさせたのはキサマの所為だ!」

 まずい、水まで全開で襲いかかってくる。
 上空から巨大な水の塊が落ちてくる。
 咄嗟にドーム状にした鉱石Mで周りを囲んだが、上から押される圧力で変形していく。

 くっ、このままだとぺしゃんこになっちまう!

 と思った瞬間、今度は下から水が突きあげてくる。
 上にばかり気をとられていたオレは高々と打ち上げられてしまった。
 空中で咄嗟に万有引力で体勢を立て直したのも焼け石に水。

 次々と遅い来る様々な魔法に地面に叩き付けられるオレ。

『クイーズ!』
「お坊ちゃま!」

 息の詰まったオレがゆっくりと目をあけた先に見えた物は、いくつも立ち上がっている雷をまとった水柱。
 オレを取り囲むほうに隆起している砂浜。
 さらに大口を開けて迫ってくる海竜王。

 あっ、これはもう駄目かもしれない。

 と、思った瞬間だった!
 一陣の風がそれらを吹き飛ばす!
 開けた先に見えたのは、腕を突き出したロゥリだった!!

「ガウッ! ソイツヲカジッテイイノハ、ロゥリダケダ!」

 おめえ……
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