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第十四章

レベル223 ビーチリゾート・カリュブディス

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 その昔、ニースとホウオウは周りから見て、そりゃもう美男美女の組み合わせで、いずれ結婚して子をなすのは間違いないと思われていたそうだ。
 それがなぜかニースは人間に浮気。
 怒ったホウオウが竜の世界を燃やし尽くす。

 そんなホウオウに恐れをなしたオスのドラゴン達は女性不信に陥る始末。

 メス達は、ニースとホウオウが別れた事により自分達にもチャンスがあるのでは、などと思いこむ。
 ニース様、当時はけっこうモテてたご様子。
 元々出生率の低かったのが、これで更に下がったとか?

「えっ、私の所為なのか? いやいや、そんなはずはないじゃろ?」
「ガウガウ、ジッチャンガワルイ」

 そんな事ないよね? って顔でオレを見てくるが、その場を見ていないオレには判断がつきかねる。
 もういいじゃないかお前の所為で。
 責任とって、ホウオウなりウィルマなりとねんごろになれよ。

「私はもう人間だモン。クォースちゃんと添い遂げるのじゃ」

 良い年したジジイが、だモンなんて言うなよ。
 可愛くないどころか、鳥肌が立つわ。
 そのうちクォースちゃんに嫌われても知らないぞ。

「何を言う、最近はジッちゃん、ジッちゃんと大層懐いてくれているのだぞ」
「反抗期が来るまで持てばいいな」
「えっ、もつよね? えっ、反抗期? それ来たらどうなるのじゃ」

 いいか良く聞け、どんなに可愛い子でも、世の中に反発したくなるときが来るものだ。
 将来、お父さんのお嫁さんになる。なんて可愛く言ってた子も、反抗期が始まると、親父ウゼエ、洗濯物一緒に洗うなよ、みたいな感じになるそうだ。
 うちの子に限ってそんな事はありません。などと言っているが、そう言っている家庭ほど危ういものはない。

「いかん! こうなったら一刻も早く帰ってクォースちゃんのご機嫌を取らねば」

 おい待てニース、何処へ行く。
 こっちの問題はまったく片付いていないぞ。
 竜の姿になったニースが飛び立って行く。

 気づけば、海を荒らしていた竜巻は消えうせている。

「私の後継者はロゥリじゃ! 後は任せた!」
「アッ、コラジッチャン、ニゲルナ!」

 ロゥリが竜の姿になって慌てて追いかけようとするが、その前に巨大な海竜が立ち塞がった。
 あれは、海神ウィルマの真の姿か……?

「あなたが白竜でしたのね。どうやら変化の能力だけは高いようですが、それだけではニースの後継者と認める訳にはいきませんわ」
「コウケイシャ、ナッタオボエハナイ」
「あなたの想いはどうでもいいのですよ。ニースが指名した、それだけの事実があれば」

 空で睨み合う、白竜と、それよりさらに一回り大きな水色のドラゴン。
 ただでさえロゥリは最大サイズなのに、それよりさらに海竜王ウィルマはデカイ。
 水棲生物は体が大きくなりがちだと聞くが、それはどうやらドラゴンにも当てはまるようだ。

「とりあえず戻って来いロゥリ、その巨体で戦争したら島が沈む」

 ロゥリがオレの下へ戻って来て人型の姿を取る。
 さらにウィルマも人型の姿でオレ達の前に立つ。

「ようは力を示せばいいのだろう。だが、ドラゴン戦はなしだ、それでいいなら受けて立つ」
「良いでしょう、ならば戦場は私に指定させてもらいます」

 そう言って島で一番広そうな砂浜を指差す。
 その砂浜に降り立つ一同。
 広いその砂浜には人っ子一人いやしない。

「人払いは済ませておきました。これならば、そちらも実力をフルに発揮できるでしょう」
「勝てそうかラピス?」
「無理じゃないですかねえ……まあロゥリには良い経験になりますか」

 そんな事よりちょっと見てくださいよ。と言って肩をくっつけてオレの目の前にクリスタルカードを掲げる。
 そんな事よりってお前、もっとロゥリを心配してやれよ。
 と、差し出されたクリスタルカードを覗く。

 そこに映っていたものは、巨大な鉄の船。

 おおっ、あれはもしかして……戦艦!?
 クリスタルカードを通してみたウィルマさん、鉄の壁がそそりだっている。
 巨大過ぎて全貌は映らないが、見た感じ、船らしき構造をしており、ギリギリ見える甲板には砲塔らしきものが映っている。

 これは何が何でもゲットせねば!

「おいロゥリ、意地でも勝てよ! もしかったら、たらふくうまいモン食わしてやる!」
「ガウガウ、マカセロ!」

 戦艦とかパネエな!
 ゲットできたらとんでもない戦力になりうる。
 ぜひロゥリには勝ってもらわねば。

「いっそのこと、不意打ちで後ろからヤりますか?」
「なんて事、考えてるのお前、それ仮にゲットしても、逆に戦艦に狙われるぞ、オレ達が」

 やってみるだけの価値はあるんじゃないですか? と言ってくるが却下だ。
 下手に怒らせて後々まで糸を引くより、気持ちよく仲間になってもらったほうがいいではないか。

「ロゥリにやられても、気持ちよく仲間にはなってもらえそうにありませんけどね」
「そこはほら、夕日をバックに分かち合えるとかないのか?」
「まだ日も高いですしねぇ……まあ、なにはともあれ、ロゥリが勝たないことには話になりませんが」

 そのラピスの視線の先には、手も足もでず、ボールの様に転がされているロゥリがいる。
 最初は警戒して海の上に立っていたウィルマも、今では水の王座らしきものを浮かべて座っている。
 ロゥリは基本、接近戦メイン。

 近寄れなければその本領は発揮できない。

 対して海神ウィルマの攻撃は水の弾丸。
 足場が砂な事もあり、持ち前の機動力も発揮できず、右往左往するしかない。
 少しでもかすれば、持ち上げられてお手玉だ。

 猛ダッシュで突っ込もうにも、波が壁の様になって襲ってくる。

 そんな手も足も出ないロゥリを見て、だんだんと興味をそがれた視線になりはじめる海神ウィルマ。
 このままでは、ロゥリの力を発揮できないまま終わってしまいそうだ。
 まあ、戦艦は惜しいが、オレ達に興味を失うのなら、それはそれでいいのかもしれない。

 とはいえ、

「タイマンらしいが、別に助言ぐらいは構わないよな」
「駄目なら何か言うでしょ」
「それもそうか」

 ロゥリがバカにされたまま終わるのも気に食わない。
 オレはロゥリに声をかける。
 ウィルマはチラッとこっちを見たが何も言わない。

「万有引力を使え! 水にだって重さがある、それを利用するんだ!」
「ガウッ!」
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