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第十二章

レベル196 レイヴンクロウ城

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 と、いうことで、やってきましたアンダーハイト王城。
 砦から堂々と歩いて来てやったぜ。
 足疲れた……カシュア、ちょっと回復魔法掛けてくれないかな?

『君はじつにバカだねえ』

 どっかの未来型ロボットみたいな言い方をするなよ。
 ちょっと、町の様子も見てみたかったんだよ。
 最近、戦闘続きで心が荒んで来てるからな。

 ゆったりとした気持ちで交渉に挑みたいものじゃないか。

『今回も戦闘がないとは限らないんじゃない?』

 こんな敵地のど真ん中で戦うかよ?
 そうなったらさっさと逃げるわ。
 一応、今回の趣旨は外交って事になっているしな。

 ところで、お城に着いたのはいいんだが、どうやって入ればいいのかなコレ?

 辺りをぐるりと見渡しても扉らしきものが見当たらない。
 城に続く道とかもないんだよな……
 もしかして、入り口とは真逆の場所に居るのだろうか?

 やっぱ迎えに来てもらったほうが良かったかな?

 城の壁に添って歩いていると、遠くの畑に人影が見える。
 オレはそこに居たおじさんに入り口はどこか聞いて見る事にした。

「へっ? 城の入り口でっか? おいらもみたことないでさあ」

 なんで地元の住民が知らないのよ?
 えっ、城の人間が町に来る事は無い?
 中に人が居るのかどうかすら知らないんだと。

 どうなっているんだ?

『アレじゃない、草の者って感じで、普段は平民として暮らしているとか?』

 なるほどな。ここの兵士は、普段は百姓や商人の振りをして過ごしているのだろう。
 敵にスパイを送り込むところってのは、敵からもスパイを送り込まれる可能性が高い。
 そしてここはスパイの聖地。

 どうすれば情報を洩らさずに済むか、その手段は心得てるって訳か。

 兵士の姿をしていれば、そいつから城の情報を聞きだせばいい。
 だが、その兵士が農民の姿をしていれば?
 誰に城の情報を聞けばいいか、さっぱり分からない。

 自分は農民だから知らないって言われればどうすることも出来ない。そう、目の前に居るおじさんのように。

 仕方ない、ちょっくら壁に穴空けるか。
 そうすりゃ向こうからすっ飛んでくるだろうよ。
 そう思い、城壁に近寄って行く。

「どうせ戦闘する気はないしな、スーパーノヴァいっとくか?」

 どうやらオレはえむぺーが少ないらしく、一発売ったら打ち止めだ。
 威力も精々壁に穴が空くぐらい。

「えっ、何するんだべか?」
「向こうから招待を受けていてね、入る場所が見当たらないので、ここ壊していこうかなと」

 と、とたん慌てだす農民のおっちゃん。

「ちょっ、ちょっと待つべ! じゃない、待ってください! もしや貴方様はクイーズ卿であらせられますか?」
「ああ、そうだ。呼び出しといて締め出すとは何事かなと」
「ひ、一人で? えっ、どこから!?」

 オレは遥か向こうに見える砦を指差す。

「えっ、歩いて? ええっ!?」

 何をそんなに驚いているの?
 少々お待ちください。と言って走って行く。
 さっきまでの、のんびりとした農民の姿はどこへやら、やけにキビキビした動きだ。

 暫くすると城壁から縄梯子のようなものが垂らされる。
 ここ、マジで入り口ないんだな?
 オレはその縄梯子をよじ登って行く。

 するとなにやら頭上で驚いたような声を上げる兵士達。

 どうやら垂らされた縄梯子を昇って来るとは思わなかった模様。
 なんだ、下で待っていれば誰か迎えに来て、魔法ででも連れて行ってもらえたのかな?
 まあいいか、折角登ってきたんだし。おっ、眺めもいいな、ここからなら城の中身もまる見えだ。

 慌てた様子の兵士に城の中へ誘導されていく。

 そんなに慌てなくても、ミュージックプレイヤーのドローン機能で城の中身はとっくに知り尽くしていますよ?

「随分とフットワークの軽い御仁だな。貴族の真似事などせず、冒険者のままでおられたほうがよろしかったのではないですかな」

 謁見の間らしき場所についた後、暫くしてからアンダーハイト国王、ユベールハイノと名乗る人物が現れる。
 そして開口一番、そう言ってくる。

 そういや、フットワークが軽いと言えばユーオリ様、どうして次期皇帝がユーオリ様を飛ばしてクォースちゃんなのかといえば、その昔、城を飛び出して冒険者をしていたらしい。
 結婚が嫌で15で家を飛び出し、冒険者の真似事をし始めて、そこで知り合った旦那さんと結婚、クォースちゃんが生まれたんだ。
 実はその旦那さん、ユーオリ様を守るため国から派遣された騎士で、それを知らず献身的に尽くしてくれるその人にどんどん惹かれていったとか。

 旦那さんは旦那さんで薄々その事を気づきながらも、騙している後ろめたさもあり、なかなか間は進展しない。

 そんな旦那さんに痺れを切らして猛アタックを開始するユーオリ様。
 パーティメンバーの後押しもあり、とうとう子供を身ごもってしまう事態に。
 ユーオリ様が妊娠した事を知った旦那さんは、その場で自害しそうになったとか。

 泣きながら事情を話す旦那さん、それを聞いて大激怒なユーオリ様。

 今までのアレやコレは全部ただの仕事だったの! と詰め寄るユーオリ様。
 確かに仕事なのだろう……しかし、此れほど誉れな仕事はない! 愛する者をすぐ傍で守れるのだから! と答える旦那さん。
 じゃあ、その証拠を見せてよ! のセリフに熱烈なキスで答える旦那さん。その日二人は随分しっぽりとした夜を過ごしたという。

 翌日、大神殿に居る皇帝陛下の元へ赴き「私達、結婚します」と報告に行ったそうだ。

 実家でのティーパーティの時、オレとエクサリーの事ばかり聞かれるので、そっちはどうなの、と聞いたら、結構なドラマチックでござった。
 うちのお袋さんまで、今から冒険者になる。なんていいだして困った。あんたすでに旦那居るだろ?
 おっと、今はそんな事考えている場合じゃないな。

 アンダーハイトの王様は、そのままオレの正面まで歩いてくると全ての兵士を下がらせた。

「あんたがこの国の王様?」
「いかにも、私こそがこの国を率いている者である」

 へえ……

「それにしてもクイーズ卿、そなたは本物ですかな? 我々の調べによると、もっと慎重な人物かと思っておりましたのに」
「こっちこそ疑ったよ、あんたが王様なんてな」
「それはどういう意味でしょうかな?」

 あんた、随分うまく人間に化けているようだが……モンスターだろ?

「ハッハッハ! いや失礼、随分愉快な事をおっしゃる御仁だと思ってな」

 モンスターカードのスキルのおかげかどうかは分からないが、オレには、目の前の人型をした何かがモンスターだと確信できる。
 こいつが王様かどうかは兎も角、ここにこうして出てきてるって事は、この国は随分、モンスターに侵されている訳だ。
 なるほど、他所の国とは一風違った行動を取るわけだ。

 なんせ、モンスターに支配されている訳だからな!
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