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第十一章

レベル180 スーパースター・ラピス!

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「やってられるかよ!」

 オレはパワードスーツを解除する。ついでに鉱石Mをカードに戻す。
 そして壁の近くにあった木刀を剣聖に投げつけた。
 真剣でなんてやりあえるか!

 万が一、なんかあったら取り返しがつかないだろ!

「ほう……装備を放棄して、剣、のみで戦うか」

 中々見所のある男だな。と言ってくる。
 冗談じゃないッスよ。なんで真剣でやりあおうとするの? どっちか死ぬだろ。
 えっ、それが剣聖の儀だって?

 だからオレは剣聖に……えっ、コレ、次代の剣聖を決める儀式なの?

 ラピスがグッと親指を立てた拳をつきだしてくる。
 いやおめえ……
 やんねえつっただろ!

 勝っても罰ゲームが続くだけだろ!

「そこに立った時点で勝負はもう始まっています。諦めてください」
「おめえ、嵌めやがったな」
「良い機会ではないか、剣術とは、強い相手と切磋琢磨してこそ、更なる向上が見込めるものだ」

 くっそあのハラグロラビット、後で覚えとけよ!

(しかし不味いですね、さすがにリミブレなしでは勝てませんよね?)
(まあ良い経験となるであろう。これを切っ掛けに剣の道に目覚めてくれるやもしれん)

 聞こえているぞ、そこの二人。
 そんな道なんて絶対に目覚める事は無い。
 オレは将来、エクサリーさんといちゃいちゃして過ごすんだ!

 そんなオレの抵抗も空しく、剣聖との一騎打ちが始まってしまう。

 目にも留まらぬ速さで斬りかかってくる剣聖に、オレは背中を向けて一目散に逃げ出す。
 会場の全員が、えっ、て感じで目が点になる。
 そしてオレは壁際まで来ると剣を構えて剣聖の方を向く。

 強敵を前にして戦うなら、壁を背にして戦うのは鉄則だろ。

 えっ、そんなの剣士の戦いじゃない?
 バカ言ってもらっちゃあ困る。
 剣士? オレは冒険者だぜ、これが冒険者の戦いだ!

 ダンジョンでは自分の実力以上のモンスターに出会うことはしょっちゅうだ。
 そういった時、どうするか。
 もちろん逃げる。

 だが、時と場合によっては逃げ切れないこともある。

 そんな場合はどうする?
 出来るだけ自分に有利な場所へ誘導するんだよ。
 数が多いなら狭い通路へ、巨大な獲物を持っている奴なら、障害物の多い場所へ。

 相手の装備が木刀や棍棒なら壁を背にするのも有効だ。
 それで突きや、大振りな攻撃は出来なくなる。
 なにせ壁に当たるからな!

 無理して攻撃したら壁に凸って手を故障したりもする。

「お坊ちゃま……」
「………………」

 ペンテグラムの奴が額に手を当てて空を仰いでいるが、知ったこっちゃない。
 勝てばいいんだろ、勝てば!
 冒険者にとっちゃ、名誉の戦死なんてクソの役にも立たないんだぞ!

 と、なにやらヒラヒラとタオルが投げ込まれる。

「はい、お坊ちゃまの不戦敗です。まったく、ちょっとは空気を読んでくださいよ」

 えっ、観客の人達がドン引きだって?
 だったらおめえが戦えよ!

「仕方ありませんね」

 そう言うと、なにやら運営委員の人が居るらしき場所へ向かうラピス。

『え~と、只今の件ですが、挑戦者は剣士ではなく冒険者だとの事。なので剣聖の儀は取り止めになります』

 そうアナウンスがされる。
 会場の皆さんからブーイングが飛び交う。

『代わって、その冒険者と剣聖、どちらが上かの模擬戦を行う事になりました』

 ん? 会場の皆さんからも頭に? が浮かんでいるかのようだ。

『竜王ホウオウを倒したという、冒険者クイーズ! その彼が、その力を持って剣聖ゴウキへ挑みます!』

 さあ皆さん、見てみたくはありませんか? かの竜王を倒したその手札を!
 何時の間にか、ラピスがアナウンサーに成り代わっている。

「さあお坊ちゃま、舞台は整いましたよ」

 えっ、一旦戻してカード召喚から行う?
 なんで?
 いいからやれって?

 オレは再び、剣聖と相対する。

 ただし、今回戦うのはラピスだ。
 竜王を葬ったオレのスキル、モンスターカード。
 そのモンスターカードから生まれたラピス。

 その力がどこまで通用するか。これはそういった戦いということらしい。

『モンスターカード!』

 そう言ってラピスのカードを呼び出す。
 会場の皆さんから、おおっ、という驚きの声が上がる。
 ふむ……よし!

 オレはそのラピスのカードを、観客に良く見えるように片手で高々と掲げ叫ぶ。

『出でよ! スーパースター・ラピス!』

 そのカードが光の欠片となって弾け飛ぶ!
 その光が前方少し上方に向かって集っていき、バニーな美女のシルエットを形どっていく。
 そのシルエットが回転するたびに、足元から光が弾け、艶めかしい美女の体が現れてきた!

 最後に虹色のフラッシュと共にキメポーズをとるラピス。

 どこの魔法少女もんだよ? おめえ、そんな登場の仕方が出来たんだな……
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