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第十一章

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「やばいよ! やばいんだよ! たっけてラピえも~ん!」
「久しぶりに来ましたねソレ、今度は何やらかしたんですか?」

 店に帰ったらラピスが居たんで、さっそく泣きつくことにした。
 ん? そういえば何かラピスに聞かなきゃならない事があったような気が……
 いや、今はそれどころじゃないんだ!

「ふむふむ、エクサリーの祖父に婚姻を拒否された? いつもの屁理屈でなんとかならなかったんですか?」

 おい、誰が屁理屈マンだって?
 いやまあ、それはいい。
 そんな事より、一体オレのどこが駄目なんだ?

「ドラスレの称号に、三カ国の貴族位、これ以上となると、王様か英雄クラスですかね」
「どっちも一昼夜でなれる様なものじゃないよなあ」
「そうですねえ……王様といえば、只今絶賛、古代王国跡地が空白地帯となっています」

 いやおめえ、あんなとこに建国しても周り中、敵だらけだぞ。
 えっ、自分達が居るから大丈夫?
 大丈夫なわけないだろ? 人間様をなめんなよ。

 かつて栄えた竜の王国も、不死者の楽園でさえも、全ては人の手によって滅ぼされてきている。

 ましてやここは、スキルと言うチート設定がある世界。
 力で成り上がった者は、より強い力によって滅ぼされる運命にある。
 国を作って運営する為には、出来る限り敵を作らないか、出来る限り味方を増やすしかない。

「と、なると、英雄枠ですが」

 えっ、骸骨を魔王に仕立て上げて、ソレを討伐すればいい?
 マッチポンプはやめてあげてください。
 バレたら英雄どころかお尋ね者だし、バレなくても被害が尋常じゃないだろ。

 あと骸骨がそのまま魔王として翻意したら困る。

「まったく今時の若い者ときたら、アレが駄目、コレが駄目と」
「いやおめえ、提案する内容がひど過ぎな上に、お前の方が歳は若いんだぞ」
「仕方ありません、もっと現実的な案にしますか」

 最初っからそうしてください。
 コイツはオレをからかっているのだろうか?
 いやでも目はマジだったし。

 あれがマジ提案なほうが怖いか。

 ラピスが立ち上がると本棚から一冊の本を手にとって戻ってくる。
 ふむふむ、なになに、世界称号一覧?
 なるほど! ドラゴンスレイヤーの様に誰もが知る有名な称号をゲットすれいばいいと!

「ドラゴンスレイヤーの称号は戦士の誉れではありますが、国に一人か二人は居るレベルです」
「ふむふむ」
「称号の中には世界に一つ、などというものもいくつか見受けられます」

 たとえば?

「勇者、聖女、賢者、は、有名どころですね。これらは特定の機関に認められる必要があるので除外します」

 実力さえあれば誰もが成れる物で、なおかつ時間も掛からない。
 その中でもお勧めは……と、とあるページを開くラピス。
 そのラピスが開いたページ、そこに乗っていた称号は、

「剣聖……か」

 これ、ここに乗ってるおっさん打ち倒したら成れるものなの?
 えっ、剣聖の弟子10名、あわせてぶっ飛ばせば成れる?
 おっ、これ、今の剣聖が居る場所ってエクサリーの祖父が居る国じゃねえか。

 ここで剣聖ぶったおして称号ゲットしたら、あのおじいさんも認めてくれるかもしれない。
 替え玉受験とかありでしょうか?
 ほら、うちにも剣聖さんが居ることだし。

「ありな訳ないでしょ」

 デスヨネェ。

「実際、今のオレの実力で成れるようなものなのか?」
「魔法は禁止、魔法に準ずるスキルも禁止、あくまで剣のみの戦闘による。と書かれています。しかしながら装備については持参オッケーです。まあ、相手の了承はいるようですが」
「三種の神器が使えれば、勝てる可能性はあるってことか」

「面白い話をしているな」

 と、そこへ大昔の剣聖であるペンテグラムが会話に入ってきた。
 あんたから見て、オレって剣聖になれる?

「リミットブレイクか? アレを使いこなせれば私ですら危うい」
「補助魔法ってアリなの?」
「駄目ですよ、とはいえ、お坊ちゃまのソレは魔法じゃないので、ひっかからない可能性もありますが」

 なんでも、魔法を使ったらバレる魔道具が闘技場に設置されているとか。
 まあ、どちらにしろアレは駄目だ。
 実質一分も持たないんじゃ使い道はない。その上、どう見ても補助魔法。誰も納得しないだろう。

「ちなみにソレ無しだとどんな感じ?」
「話にならん」
「ですよね~」

 なあに、俺について10年も修行をすれば、成りたくなくても剣聖にしてやるわ。などという。
 いや10年もたぶん持ちません。
 というかこの先、10年も修行漬けにするつもりだったの!? かんべんしてください!

「やはり剣聖はやめよう!」
「ただ名声を上げるというだけなら、別に剣聖にならなくとも、その剣聖を打ち倒すだけでも十分なアピールになりませんか」

 そこへ、さっきまでペンテグラムと話しこんでいたカユサルまで会話に加わってくる。
 この二人、あれ以来、大層仲が良いらしくて、いつも剣術について話しこんでいる。
 カユサルは古代の剣術に付いて、ペンテグラムは現代の剣術に付いて、互いにいい交換会になっているそうだ。

「ご祖父に認められればいいのですよね? 地元であるというのなら、ソレだけでも十分な成果になると思いますよ」

 それに打ち倒すだけならば魔法禁止にこだわる必要はありません。と言う。

 なるほど、おめえ、頭いいな!
 何も世界が認める英雄になる必要は無い。
 ご祖父にだけ、英雄レベルだと思われればいい。

「それではさっそく、私がセッティングして来ましょう」

 そう言って立ち上がるラピス。
 うむ、お前に任せ……いやちょっと待て、こいつに任せたら碌な事にならない。
 それにもう一度冷静に考えて見ろ。

 その剣聖打ち倒した後、どうなる?

 三人が三人ともオレから顔を逸らす。
 ねえ君達、どうなるの?
 えっ、師匠はもう少し本気で生きたほうがいい?

 オレはいつだって本気だよ? もしかしてアレか? そんな事したらそこら中から目を付けられて、毎日、たのもうな世界が待っているのか?

「よし止めだ! 中止、中止!」
「え~、せっかくお坊ちゃまがやる気になっていたのに」

 いかん、危うくラピスにのせられるとこだった。
 世界に一つの称号なんてゲットしてみろ、その称号を巡っていらん争いが勃発するに決まっている。
 エクサリーと結婚できたとして、その後、エクサリーとの甘々な日々が送れないなら意味がない。

「しかし、ソレも駄目だとなると、英雄になれる道は他にありませんよ?」

 なんかないか? この国でモンスターが暴れて困ってるとか?
 相手がモンスターならオレの本領発揮だろ?
 えっ、そうそう旨い話はない?

 ないなら作るか……おっとヤバイ、オレまでラピスの思考に毒されてきている。

「いや、ちょっと待ってください。この国名、今朝の軍法会議で名前が上がった気が……」

 カユサルが何やら魔道電話でどこかに連絡を取っている。

「やはりそうです、現在この国、それまでおとなしかった竜王ホウオウが急に暴れだして、各国へ救援依頼が出ています」

 ほうほう、突然暴れだした竜王が、森を焼き、山を砕き、近隣の村々に非難勧告がでていると。
 急にどうして?
 えっ、どっかのバカが竜王にちょっかいを出したのじゃないかと噂になっている?

 …………嫌な予感がして来た。
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