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第十一章

レベル167 これは夢オチです。ええ、夢オチですとも!

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「で、なんであなたはそっち側に居るのでしょうかね?」
「えっと、なんていうか、成り行き? みたいな」

 西には大地を埋め尽くさんがばかり犇めくモンスターの群れ。
 東には様々な紋様の旗が立っている、鎧騎士や傭兵達の軍勢。
 今ここに、人とモンスターの、一大決戦の火蓋がおとされようとしている。

 突如、魔境にて魔皇帝を名乗る者が建国宣言を立てる。
 そしてモンスターの軍勢を率いて各国へと進軍を開始。
 瞬く間に大陸のほとんどを掌握するに至る。

 人々の希望が消え去ろうとしたその時、一人の女性が立ち上がり残存勢力を纏め上げる。
 その女性は強大なモンスターの軍勢を、たった一人で受け止めたと言う。
 やがて聖王と呼ばれることになったその女性は、人々の王としてモンスターの軍勢と戦うことになっていった。

「聖王なんて呼ばれて、随分いい気になっているようですねカシュア」
「全然いい気になってないからね! むしろ担がれて困っているぐらい?」
「だったらすぐに降りたらいいんですよ? 今なら見逃してあげます」

 そういう訳にもいかないんだよねえ。とかぶりを振る、聖王カシュア。
 それに対し、苛立たしげに腕を組んで指をトントンとさせる、魔皇帝ラピス。

「なぜです? 私が世界を支配すれば、戦争も無くなり、異世界知識で一気に文明を発展させる事ができるのですよ」
「だからといって、違う歴史、価値観を歩んできた人々を十把一絡げにしてしまうのもどうかなと。ほら、良く言うじゃない、混ぜるな危険って」
「その例えはどうかと思いますが、確かに反乱やら暴動やら色々おこるでしょうね」

 特に絶対王政のこの時代。
 急に民主主義なんて始めたら、とりあえずあいつらボコろうゼ。って採択が出て、ギロチンが大活躍するかもしれない。

「ま、そんなものも数百年も経てば、ああそんな事もあったなで済む問題です。むしろ美化されて記念日まで作られそうですよ?」

 いや確かにそうかも知れないけど、実際そうだった国もあったりしたそうだけども。

「数百年後の子孫の事を考えたらそれが一番かもしれない、でもね、今生きている人の事も考えてあげようよ」
「お坊ちゃまに、あのような仕打ちをした今の人類は滅んでもいいと思っています」

 それを聞いてカシュアも渋い顔をする。

「それについてはボクも思う所はあるけど、一部の人が起こした行動を、人類全ての罪とするのは無理があるよね? それに、元々はラピス君の派手な行動がげんい・」
「はいそれでは交渉決裂です~、総力戦と行きましょう!」
「えっ!? まだ何も交渉していないよね!」

 その熾烈な戦いは三日三晩続き、地形を変え、大地を歪ませ、空を赤く染めたと言う。
 その戦いの恐ろしさは後世まで末永く語り継がれる事になった。
 そんな激しい戦いにも係わらず、最終的には双方痛み分けで互いに兵を引く結果に至る。

「どうしようニース、ラピス君、本気だよ?」
「せめて主と接触出来れば良いのだが……今どこで何をしているのやら……」
「お坊ちゃまの事なら、ロゥリがしっかりと守っているから気にしなくても大丈夫ですよ」

「そうか、それなら良か……えっ、ラピス君!? どうやってここに!」

 戦争が終わり、カシュアとニースが居る本丸の作戦会議室に突如敵の総大将、魔皇帝ラピスが現れる。

「私にかかればこれぐらい普通に潜入出来ますよ」
「どっ、どっ、どうしようニース!」
「落ち着け、ちょっ、やめっ、私のズボンが脱げるわっ!」

 カシュアはニースの後ろに回って小さく縮こまっている。

「安心してください、別に戦いに来たわけじゃありません。今後の打合せをしたいと思いましてね」
「今度の打合せ?」

 大陸の半分、魔境を中心とする西のエリアは私が、旧王国跡地を中心とした人間達をカシュアが、共に治めれば何も問題がない。

 カシュアの上も私の上も、結局はお坊ちゃまに辿り付く。
 それは、お坊ちゃまが大陸の全てを支配した事になるのも同意義。
 そう言っているラピスの話を、目を点にして聞くカシュアとニース。

「えっ、もしかしてこれってマッチポンプ?」

 確かに、力ずくで平定しても不満を持つ人間は後を立たない。
 ならば、共通の敵を作り出し、矛先をそちらに向ける。
 モンスターを使って人の町を襲い、それをカシュアが撃退する。

 そうすれば、カシュアに対する民衆の人気もうなぎ登り。

「そこでコレですよ」

 そして様々なグッズを持ち出す。
 異世界知識を総動員して作ったイリュージョンセット。
 これで神の奇跡を演出して、さらに求心力をアップ。

「そうですね、人間サイドではイージス、聖神イージスという名前にしましょう」

 カシュアが人間サイドでイージス教を作り聖神イージスを祭る。
 ラピスがモンスターサイドで邪神クイーズを祭る。
 だがその実、聖神も邪神も同一人物だったりする。

「いくらなんでも無茶じゃね?」
「神は正と邪、両方の顔を持つなんてよくあることでしょ? なあに、バレなきゃ大丈夫」
「お主の大丈夫は、大丈夫だった試しがないんじゃが……」

 ま、結果的に二つの勢力を手にいれ、それをうまく使うことに成功した訳ですね。と、ラピスは呟く。
 それを聞いて竜王ニースは慄く。

「まさか……最初からこの事態を想定して行動していたのか!?」

 さてそれはどうでしょうか。とゆっくりとニースへ振り向くラピス。

「数ある選択肢の一つではありましたけどね」

 そう言って妖しく微笑むラピスであった。

◇◆◇◆◇◆◇◆

「ハッ、なんだ夢か……」

 オレはその場面で飛び起きた。

「ふう、夢オチで良かったぜ……」

 モンスターと人間を適度に争わせ、漁夫の利を得るとか、マジ邪神な所業。
 人様にバレたら袋叩きどころでは済まない。
 いかにラピスでも、そんな邪道な事は考えていない…………はずだ!

 ふむ、ところでここはどこなのだろう?

 辺りを見渡すといつものベットではない。なにやら棺のようなものに寝かされている。
 部屋を見渡すと随分広い、四方にはクリスタルのような物が浮かんでたりする。まったく見覚えの無い部屋なんですが……
 地面にはびっしりと魔法陣のような紋様が描かれている。

 それはまるで、前世のゲームで見た、邪神復活のステージのようで……

「ようやくお目覚めになられたようですね」

 部屋の中にロゥリを引き連れたラピスが入ってくる。

「お喜びください! 少々(数百年)お眠りになっている間に世界はお坊ちゃまの物となりました!」
「は?」

 ・

 ・・

 ・・・

 ・・・・

「などという夢を見たのだが」
「夢の中で夢を見ていたのですか? 珍しい事もありますね。で、なぜそれを私に?」

 いやなに、やけにリアルな夢でな。
 もしかしたら予知か予見の類かと思ったわけだ。
 そう言いながらラピスの顔をジッと見つめる。

 そのラピスの頬に一筋の汗が流れた。

「………………」
「………………」
「おまえ、まさか……」
「いやですねえ、私がそんな事考えている訳ないじゃないですかぁ。HAHAHA」

 笑いが乾いているぞ。
 今度から眠る時は、コイツをカードに戻してからにしようと思った瞬間だった。


――――――――――――――――――
――――――――――――――――――
ただし、正夢になる可能性大☆
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