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第十章

レベル162 『モンスターカード!』で、ゲットしてみたら空気な感じになりました。

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 やべえ……そうきたかぁ。
 一騎打ちだなんて言わなきゃ良かったかなあ。
 目の前のナイトスペクター、徹底的に防御に徹するようになって来た。
 その癖、こっちが休もうとしたら攻撃を加えてくる。

 向こうはアンデット、コッチは生身の人間。
 どうしても超えられない壁がある。
 スタミナ消費と言う持久戦。

 アンデットは何年でも何千年でも戦える、それに引き換え、こっちゃ5分も全力だしゃ息切れだ。
 こいつ、こんだけレベル差あって大人気なさすぎだろ?

「ふむ、遊ぶべき相手から、倒すべき相手にジョブチェンジしたんじゃなかろか」

 そんなジョブチェンジはした覚えが無い!

「光栄な事じゃぞ、そやつがそこまで慎重になるのは、わらわが知る限り二人目じゃろう」
「そんな光栄はいらねえよ!」

 うぉっ、あぶね、ナイトスペクターの剣がオレの胸元を掠める。

 鉱石Mの変形が鈍ってきた。
 こいつもスラミィみたいに自動で動いてくれればいいんだが、生憎、こっちが考えないと動かない。
 注意が散漫になると、どうしても防御が遅くなる。

 そしたらまっていたかのように怒涛の攻撃が始まる。
 目に見えない漸激があちこちから飛んでくる。
 ヤバイ! まったく見えねえ。

 互いに一撃必殺の攻撃力を秘めて居る場合、攻撃を受けている方は防御に徹するしかなく反撃の余地が無い。
 隙を見せたら一撃で終わる。
 攻撃は最大の防御っていうが、そのとおりな状況。

 敵の攻撃はまったく見えない。
 そして一撃一撃がとてつもなく重い。
 オレはドラスレを地面に突き立て重量軽減を解き、そこを支点として奴の攻撃を防ぐ。

 だが! それで剣を防いではいたが、左手の盾を忘れていた。

 その盾でオレを激しく打ちつける。
 しまった、シールドバッシュか!
 ドラスレから手が離れ、大きく後ろに弾き飛ばされる。

 まずいっ!

『モンスターカード!』

 咄嗟にオレはモンスターカードを取り出す。
 それと当時、ドカドカッと鉱石Mを背中から生やし、それ以上の後退を防ぐ。

「いけっ! モンスターカード!」

 そしてモンスターカードを宙に放り投げる。
 そこからまばゆい光がナイトスペクターに照射される。

「お坊ちゃま、早過ぎですよ!?」

 いいんだよ!
 なんたってこれは……ただの目くらましだからな!
 ただの目くらましに一枚消費するのはきついが背に腹は変えられない。

 だがそれが意外な効果を生む。
 その光に怯えるように盾で全身を守るナイトスペクター。
 完全に足が止まっている。

 そういえば、サンムーンのアンデット達もモンスターカードの光を恐れていたな。
 なるほどアンデット、強い光には苦手意識がある模様。

 やるなら今しかない!

 背中から突き立てた鉱石Mをそのまま伸ばす。
 そのスピードに一瞬グエッって息が詰まったが、さらにパワードスーツを全力にしてスピードを上げる。
 道中、地面に刺さっていたドラスレを抜き、そのまま奴の鎧の隙間に向かって思いっきり叩き突ける。
 グニャリと体が折れ曲がるナイトスペクター。

 頼むぜドラスレ! そのまま真っ二つだ!

 強い光に照らされたナイトスペクターは、そのまま姿をかき消すのであった。

「ナイトスペクター、ゲットだぜ!」

 空から落ちてきたモンスターカードをキャッチする。
 んっ? んんんっ……

 オレは目をゴシゴシとこする。
 そしてもう一度良くカードを覗き込む。
 ん? んんっ!?

 カードを空に透かしてみる。
 そしてもう一度よく見てみる。
 んっ? んんんっ……

「もんすたぁあ?」

 なんだこれ? …………真っ白じゃないか。

 手に取ったカード、何処をどうみても何も描かれていない、即ち、無地の白カード。

 えっ、なんで? 零体だから空気だとでも?
 いやそれでも、タイトルすらないのはおかしい。
 などと訝しんでいると、カードが徐々に空気に溶けるように消えていくではないか。

 これはもしかして……!

「ゲット失敗した!?」
「彼はこちらの切り札ですからね、申し訳ないが回収させてもらいましたよ」

 ふと見ると、魔術師の手に先ほどのナイトスペクターとそっくりの小さな人形が握られている。
 一騎打ちじゃなかったのかよ! 卑怯だぞ!

「あなた方には言われたくないですな」

 ごもっともで。

「いやはやまったく、今日は予想外の事が良く起こる。これは益々、貴方達を逃がすわけにはいきませんなあ」

 そう言って薄く笑う。

「たった一人で私達三人を相手出来るとでも?」
「確かに、このバルデスだけでは、どうしようもないでしょうな。しかし、私が一人だと、なぜ勘違いしているのか」

 そいつがそう言った瞬間、広間の扉が開いて無数のアンデットが流れ込んでくる。

「急な事で集めるのに時間がかかったようだが、なんとか間に合ったようですなあ」

 そう言って薄く笑う。
 ああ、そうかい。じゃあこっちも間に合ったようなんで使わせてもらうとするか!

『出でよ! プリンセスナイト・カシュア!』

「ファアア……、なんか良く寝たような気がするよ。おはよう、キミ!」
「おはよう、じゃねえ!」

 思わずその顔に蹴りを入れてしまった。
 えっ、折檻しない事にしたんじゃないかって?
 いや、顔をみたらつい。

 というかコイツ、絶対天然だろ。

「何をするんだね、痛いじゃないかい!?」
「とりあえず敵だ、アイツラを蹴散らせ」
「ふむ、良し!」

『ホーリーノ・・』

 ―――ゲシッ!

「やめんかバカ者! お前のソレの所為で洞窟が崩壊したんだぞ!」
「えっ、またまたぁ、ボクを担ごうとしていない?」

 覚えてないんか?
 とにかく使うなら威力を落とせ。
 オレはラピスにドラスレを渡す。

「お前とカシュアでなんとかなりそうか?」
「だいたい40から50レベルと言った所ですか、ちょうどいいレベル帯ですね。スーパースターの性能を試すのにもってこいです」

 代わりにと言ってステッキを差し出してくる。
 いやそれ役に立たないし。ん、欲しいのか?
 そのステッキをロゥリが欲しそうにしていたので渡す。

「良し、カシュア、ラピス、ロゥリ、奴等を殲滅せよ!」

 オレが手をつき出すと同時、三人が駆け出していく。

「フォォオオ……たった三人でどんどん敵が減っていくわ」

 敵でいいんですかね?
 やられてるの、元は部下だったんじゃないんですかね?

「わらわの部下は誰一人としておらんよ。まさしく裸の王様という奴じゃな、アッハッハ!」

 そこ笑うとこなの?
 ここに居た騎士達も王座を守るためだけに存在したもの、それ以外の者は皆、バルデスかねえ様に付いていったと言う。

「スキルも無い、戦闘も出来ん、そんなわらわなど、存在すら知らん者も多いんじゃないかなっ」

 まるで他人事のように答える小さな女王様。
 相変わらず、表情はよく変わるが、目だけは感情を映していない。
 表情が少しアンバランスな感じを与える。

「なんじゃ、わらわの顔になにかついとるかえ?」
「このままオレ達が勝ては、この死者の王国は無くなるだろう。王様としてそこんとこどうなの?」
「無くなると言うのならそれもまた定めじゃろ! ラストエンペラーとして胸を張って終わってやるわっ」

 そもそも、この死者の王国を作り上げた原初の理由は、わらわにあるのだからな。
 と、にこやかな表情を作り出すのであった。


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所謂、ゲット失敗って奴です☆
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