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第十章

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 バッとこちらを振り向く小さな女王様。

「まさかお主等の話、ほんとうの事じゃったのか?」

 実はそうなんですよ。

「おっ、お前等、なんてことしてくれたんじゃ! これじゃわらわのくっちゃね生活が台無しだろっ!」
「いえいえ、ローゼマリア様におかれては、今後も何もせずにくっちゃねしてもらうつもりですよ」
「ならば良し!」

 いいのかよ?

「マリア、お逃げなさい。そしてあなたは……還るべき場所へ行くのです」

 どこからともなく先ほどの美女の声が聞こえる。
 良く見ると、魔術師の手に鳥かごのようなものがあり、その中に人形サイズに小さくなった先ほどの美女が見える。

「ねえ様……」

 どの道、逃がすつもりはありませんがな、と魔術師風の男が手を上げる。
 すると背後の地面から茨のような真っ黒な何かが立ち昇る。

「さあローゼマリア様、こちらに来るのです。でないと戦いに巻き込まれてしまいますぞ」
「どうしたら良いかのう?」
「オレに聞かれましてもねえ」

 とりあえず向こうは逃がす気はない。
 となると、戦うしか道が無いわけで。

「ラピス、ドラスレを借りるぞ」
「お坊ちゃま、それは……」

 ラピスが何か言いそうになるのを遮り、オレはドラスレを前につきだす。

「やらないか、そこの騎士さんよ? これでオレは100パーセントの力を出せる。さっきよりは楽しめるぜ」

 そう挑発してみる。

 するとその挑発に乗ったのか、向こうも青白いオーラを纏った白銀の騎士が前に出てくる。
 あの120はオレがなんとかする。
 それ以外なら、お前の力でなんとかなるだろ?

 ラピスから借りたスカウターで見たところ、その他の奴も70前後ぐらい。
 とはいえ、パラメーターはそれほど大した事はない。
 スピードでならスーパースターのラピスが勝っているし、知能でもほぼ変わらない。

 この世界には上級職って概念がないから、下級職のまま高レベルとなっても、上級職であるラピスの敵ではないのではないか。
 ただし、あの120は除いてな。
 さすがに120は論外だ。

 数値上では勝ち目が無い。

「勝算はあるのですか?」
「無いのにオレが挑むと思うか?」

 ちょっと耳貸せ。

「ふむふむ、なるほど」
「お、おい、やめたほうがいいのじゃぞ? アレはとっても怖いんじゃぞ?」

 小さな女王様が心配そうな顔つきそう言ってくる。
 この子もお姉さんと一緒で優しい子だな。
 いったい古代王国は、何を考えてこんな子達をアンデットにしたんだ。

「心配しなくても大丈夫だ、ちゃんとお姉さんを助け出してやる」
「べっ、別に心配なんてしておらんぞっ!」

 ツンレデかよ。
 オレはフッと笑って騎士の前に立つ。
 騎士の構えか、目の前にいる騎士は剣を胸の前で立てる。

『パワードスーツ・オン!』

 オレの全身に刺青の様なものが奔る。
 そして両者見合った、その時だった!
 またしても、突如上空から一体の巨大なものが落ちてくる。

「ああっ、わらわの王宮が穴だらけなのじゃー!」

 その巨大なものは、一体のドラゴンゾンビをめがけて急降下!
 地響きと共に踏み潰す。
 すみませんねえ、うちのドラゴンは空気を読まなくて。

 そう、落ちて来たのは、ドラゴン(大)に変身しているロゥリだったのだ。

 ロゥリはそのまま二体目のドラゴンゾンビに襲いかかる。
 いつのまにか敵の後ろに回りこんだラピスが、ボーっと突っ立っている首の無い騎士をステッキで串刺しにしている。
 確かにオレとあんたは一騎打ちだ。だからと言って、他の奴等が戦わないとはかぎらねえ。

 のんびり見学しているほうが悪い。

「ちょっとおぬし等、卑怯すぎではないか?」
「卑怯じゃ悪いか?」
「まあ良い! 卑怯結構、コケコッコー! 勝てば官軍よ!」

 オレもここぞとばかりに目の前の騎士に向かって斬りかかる。
 奴は盾を構えてそれを受け止めようとする。
 フッ! ドラスレの切れ味を舐めてるな! その盾ごと真っ二つだ!

 と思ったのだが、

 ドラスレが盾に止められた。
 ウェッ!?
 もしかして、お宅もドラスレ並の装備なのでしょうか?

 まずいぞ、スカウターにパワードスーツ。鉱石Mにドラスレと、装備でゴリ押ししようと思ったのに。
 だが! そっちは片手剣、こっちは両手剣、攻撃力はこっちの方がまだまだ上だ!

 オレは力任せにドラスレを振り回す。
 盾を持っていなくとも防御力は低くない。
 鉱石Mは手に持つ必要が無い盾なのだ。体から生えてるからな。
 防御力はトントン、攻撃力は少し上。
 残りのレベル差は、パワードスーツに補ってもらうとしよう。

「おお……凄いのじゃ、あのナイトスペクターのペンテグラムと互角に戦っておる。千年前の聖剣の担い手ですら戦闘を避けたというのに」
「お坊ちゃまは、戦闘経験だけなら人類最高クラスですからね。装備さえ整えばそう簡単にはやられはしません」

 ラピスの奴は早々に残り三体の首なし騎士を片付け、今は魔術師へ睨みを利かしている。
 ロゥリの奴もドラゴンゾンビを片付け終わったようだ。
 今は人間(大)になってお姫様の傍にいる。手が空いてんなら手伝ってくれないかな。

「イッキウチダロ、ガンバレ」

 さいですか。
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