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第十章

レベル160 死せる国の王城アルバトリオン

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 とりあえず、オレとラピスはここへ来た経緯を語って聞かせる。
 その少女はどことなく焦点があっていない目をして訝しげな表情をする。

「は? 100万の亡霊を浄化した? わらわを子供だと思ってバカにしておるだろう」

 まあ、信じられませんよね。

「それにバルデスごときがねえ様に敵う訳がなかろう。ん? 浄化の魔法を食らって弱体していてる? はっ! 人間ごときが、ねえ様に傷一つ付けてみせたらへそでちゃー沸かしてくれるわっ!」

 レベル92ですからねえ。
 普通にやったら敵わないでしょうね。
 100万の亡霊を浄化する魔法食らってもピンピンしてましたし。

 実際、あのレベル120の鎧、そこそこ切れ味のいい鉱石M刀でも傷すら付いてませんでしたからなあ。
 でも全部ほんとの事なんですよぉ。
 えっ、信じられない? そう言われましてもねえ。

「まあそのうち、ねえ様も来るじゃろ」

 そう言って王座に腰を掛ける。

 しかしその王座、後ろにさらにデカイ王座がある。
 ざっと座高だけでも10メーターほど。
 もしかして先代の王様は、のっぽさんでしたのでしょうか?

「うむ、わらわの父王はそりゃもう大きいお人じゃった! 物理的になっ!」

 そっかあ、座高だけでも10メーターかあ。
 そんなのと戦って勝ったのか先代の聖剣の担い手は。
 カシュアも、もっと頑張らないとな!

 その小さな女王様が首を後ろに倒して、その王座を見上げている時だった。
 上から大きな音が響いたかと思ったら、突如、何かが天井を突き破って落ちてきた。
 落ちてきたのは巨大な3体の生物。

「な、なにごとぉ?」

 生物と言っていいのだろうか、コレ?
 落ちてきたのは、巨大なトカゲの様な体躯、鱗が剥げてむき出しに成った肉、所々飛び出している骨。
 そう、アンデットモンスターの中でも最凶の部類に入る、ドラゴンゾンビであった。

「おまっ、おまえら! 天井を突き破るとは何事じゃ! 雨漏りしてしまうだろがっ!」

 いや、それどころでは、ないんじゃないでしょうか?
 その落ちてきたドラゴンゾンビは周りにいた騎士達を丸呑みにしていく。
 騎士達は小さな女王様を守ろうと必死のようだが、いかんせん戦力が違い過ぎる。

「ええ~い、下がらぬか! わらわを誰と心得ておる!」
「言って聞くような相手じゃないと思うぞ。さっさと逃げ出したほうが……」
「はんっ! わらわは王であるぞ、ここから一歩も動くつもりはないわ!」

 とか言いながらも、王座にしがみ付いて涙目でござる。
 それをラピスが引っぺがして、王座から離れる。

「逃げますよ!」
「おう!」
「ちょっ! おまっ! わらわは王であるぞ! 猫のように首根っこをつかむでない、もっと丁寧に持たんかっ!」

 もう王座はいいのかよ?
 ふとその王座の方を振り返って見ると、ドラゴンゾンビがなぜかおとなしくなっている。
 そしてその視線の先には……

「良くやったなお前達」
「バルデスッ!」

 先ほどオレ達を襲ってきた魔術師と騎士達が勢ぞろいしていた。

「これはお前の仕業かっ! いったい何の真似じゃ!」
「いえいえ、このバルデス、姫様の重荷を取って差し上げようとしただけですよ」

 そう言って薄く笑う。

 王座はローゼマリア姫には重過ぎるもの、自分がとって変わってその重荷を背負ってさしあげようと。
 王座に手をかけた魔術師が、なにやらそれらしい事を言っている。
 それを聞いて小さな女王様はプルプルと震えている。

「いい度胸だなバルデス! そんな事をしてみろ、ねえ様に言いつけてやるからなっ!」

 子供かよ?

「なんじゃその目は。自慢じゃないが、わらわには戦闘力がまったくないぞ!」

 ほんとに自慢じゃないな!
 仮にも王様だったんだろ?

「とう様がいなくなり、ねえ様がやらんと言ったから仕方なくじゃ。まあ日がな一日、あそこに座っておるだけだから楽なものじゃっ!」

 それでいいのか王様……まあ、人間達からしたら襲ってこられるよりマシだったのだろうが。
 ただまあ、あちらのお方が王様になると、そうも言ってられないような気がする。

「何度も進言差し上げたのですがな、エフィール様は頑として首を縦に振りませんでした。このバルデスが王座に付けば、王国の再興も容易い事であったのに」

 再興なんて言ってるし。

 二人の会話を纏めると、先代の王様が居なくなった後、魂の解放を願う派と、王国を再興する派に別れたらしい。
 正当な王位は魂の解放を願う派閥であるエフィール姫となるが、再興を願う派閥との軋轢を避ける為に、そんなの興味がねえって感じだった妹に王座を譲ったと。
 それ以来、天秤はどちらに傾くことなく、ただ時だけが過ぎてきたとの事だ。

「だがそれも先ほどまでの話、今やもうこの地には解放を願う魂など居ない。ならばこのバルデスが残った者を率い、この地に、過去の栄光を呼び戻して見せようではないか!」
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