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第九章
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曲が始まり、子供達が踊りだす。
オレ達がダンジョンに行ってる間に練習してた模様。
楽しそうににクルクル回っている。癒される風景だ。
しかし、お客さんの一部には、まだ一曲目の伴奏だというのに帰って行こうとする人達もいる。
「おい、もうちょっと見て行けよ」
「もう十分だろ? 俺達にはああいうのは似合わないさ」
「義理は果たした、分かるだろ? 擦り切れた俺達にゃ、あれは毒さ」
普段から荒んだ生活をしているおじさん連中には、ちょっとばかし不興のようだ。
まあ仕方ない、せっかく頑張ってくれた冒険者さん達にも悪い事をしたかなあ。
後でなにかプレゼントでもしようか。
サヤラの銃とか気に入ってくれないかな?
酒を煽っていた人がウトウトと船を漕ぐ。
ごついビルダーな女性が無言で背を向けて去っていこうとする。
中には微笑ましい表情で子供達を見てくるおじさんも居たりはする。
前奏が終わり、いよいよエクサリーの歌が始まる。
エクサリーが一歩前に出て大きく深呼吸をした。
そして次の瞬間!
―――私の歌を聴けぇええーー!!
「えっ!?」
「エクサリー!?」
突如エクサリーが叫ぶ。
船を漕いでだおじさんが、背中を向けていた冒険者が、子供達を見ていた男性が、全員がエクサリーの方を向く。
そんなエクサリーがオレに向かってバチッとウィンクをする。
なるほど、じゃあいっちょ、やってやりますか!
静まり返った会場で、エクサリーがパンパンパンと三回の手拍子を打つ。
オレがギターを思いっきり掻き鳴らす。
アップテンポの激しい曲調。誰もが目を釘付けせざるを得ない、そんな名曲。
そして――エクサリーの歌が始まる。
予定にはなかった激しい音楽が会場を包みこむ。
子供達も観客達も、唖然とした表情でそれを見てくる。
だがさすがに我がメンバー。急な変更でも、みな分かっていたかのように合わせてくる。
カユサルの奴がセレナーデと顔を見合し、やっぱ師匠と一緒なら退屈はしないな。と呟く。
ラピスの奴はいい笑顔で、観客が楽しめるものを選択するのは当然ですよね。って顔を向けてくる。
今回カユサルがベースに入る事になって、始めてギターを弾いているユーオリ様はちょっと慌てているけど。
「いい声じゃねえか……」
「なんだこりゃ……なんだが心がざわつくな」
「………………」
曲に合わせて子供達が踊り始める。
予定にはない曲なのでみなバラバラだ。
しかし、この曲にはそんなバラバラこそがよく似合う。
もう誰も、子供達を微笑ましい顔で見ている人はいない。
むしろそんなバラバラな子供達を応援している風ですらある。
去って行こうとしたお客さんも近くの椅子に座り込む。
誰もがエクサリーの歌を、声を、その姿をジッと見つめている。
そしてそれは、予定通りのポップな曲に戻っても変わることなく続くのであった。
「こめんね皆、急にあんな事始めちゃって」
当日のライブが終わった後、夜中の晩餐時にエクサリーが皆にそう謝ってくる。
本日のライブはお昼から1時間、夕方から2時間、という2回の公演であった。
夕方からの2時間は、昼の冒険者達が触れ回ってくれたのか、結構な人が集った。
このペースなら明日も期待できそうではある。
「いや、あれはオレが悪かった。事前に客層に合わせて修正するのも必要なことだった」
オレ達はただ、音楽を聴かす為に演奏をするのじゃない。
観客に喜んでもらう為に演奏するのだ。
お客が望むものを提供する、それこそがエンターテイナーって奴だろ?
オレはそれを、エクサリーに思い出させてもらった気がする。
「オレは最初、客層が合ってないから今回はダメだなって諦めてしまっていた。今日の演奏が成功したのは、エクサリーのおかげだ!」
「えっ、私、そんなつもりじゃ……ただ、クイーズの演奏を聞こうとしないのが、なんか悔しかったから……」
でもその悔しさって大切な事なんだと思う。
ダメだなって、諦める奴は大成しない。だからオレは前世も大成しなかったのだろう。
だけど、カユサルやエクサリーにはそれが備わっている。
悔しさをバネに出来る奴は強い。さらに諦めない不屈の闘志が加われば無敵だ!
「いやっ、そんなっ、なんかクイーズに褒められると頭がグルグルしてきちゃう」
「お坊ちゃまは、どっか諦観している様な雰囲気がありますからねえ」
だれがじじくさいだよ? おい。
別にそこまでは言ってませんよぉ。とシラをきるラピス。
「よしっ、子供達には急な変更にも付いて来てもらったんでボーナスを上げよう」
『出でよ! お料理セット!』
オレはお料理セットを取りだす。
祭りだけあって、様々な食材が売りに出されていた。
その中で、お菓子になりそうなものを大量に買ってきたのだ。カシュアが。
コイツほんと、食べ物の事になると、謎の行動力を起こすよなあ。
「うまっ、ウマッ! なんだねこれば! 見たことも無い食べ物だねっ!」
「ガウガウ、ウメエ!」
「お前等ちょっとは遠慮しろよ、子供達に行き渡らないだろ?」
オレ達がダンジョンに行ってる間に練習してた模様。
楽しそうににクルクル回っている。癒される風景だ。
しかし、お客さんの一部には、まだ一曲目の伴奏だというのに帰って行こうとする人達もいる。
「おい、もうちょっと見て行けよ」
「もう十分だろ? 俺達にはああいうのは似合わないさ」
「義理は果たした、分かるだろ? 擦り切れた俺達にゃ、あれは毒さ」
普段から荒んだ生活をしているおじさん連中には、ちょっとばかし不興のようだ。
まあ仕方ない、せっかく頑張ってくれた冒険者さん達にも悪い事をしたかなあ。
後でなにかプレゼントでもしようか。
サヤラの銃とか気に入ってくれないかな?
酒を煽っていた人がウトウトと船を漕ぐ。
ごついビルダーな女性が無言で背を向けて去っていこうとする。
中には微笑ましい表情で子供達を見てくるおじさんも居たりはする。
前奏が終わり、いよいよエクサリーの歌が始まる。
エクサリーが一歩前に出て大きく深呼吸をした。
そして次の瞬間!
―――私の歌を聴けぇええーー!!
「えっ!?」
「エクサリー!?」
突如エクサリーが叫ぶ。
船を漕いでだおじさんが、背中を向けていた冒険者が、子供達を見ていた男性が、全員がエクサリーの方を向く。
そんなエクサリーがオレに向かってバチッとウィンクをする。
なるほど、じゃあいっちょ、やってやりますか!
静まり返った会場で、エクサリーがパンパンパンと三回の手拍子を打つ。
オレがギターを思いっきり掻き鳴らす。
アップテンポの激しい曲調。誰もが目を釘付けせざるを得ない、そんな名曲。
そして――エクサリーの歌が始まる。
予定にはなかった激しい音楽が会場を包みこむ。
子供達も観客達も、唖然とした表情でそれを見てくる。
だがさすがに我がメンバー。急な変更でも、みな分かっていたかのように合わせてくる。
カユサルの奴がセレナーデと顔を見合し、やっぱ師匠と一緒なら退屈はしないな。と呟く。
ラピスの奴はいい笑顔で、観客が楽しめるものを選択するのは当然ですよね。って顔を向けてくる。
今回カユサルがベースに入る事になって、始めてギターを弾いているユーオリ様はちょっと慌てているけど。
「いい声じゃねえか……」
「なんだこりゃ……なんだが心がざわつくな」
「………………」
曲に合わせて子供達が踊り始める。
予定にはない曲なのでみなバラバラだ。
しかし、この曲にはそんなバラバラこそがよく似合う。
もう誰も、子供達を微笑ましい顔で見ている人はいない。
むしろそんなバラバラな子供達を応援している風ですらある。
去って行こうとしたお客さんも近くの椅子に座り込む。
誰もがエクサリーの歌を、声を、その姿をジッと見つめている。
そしてそれは、予定通りのポップな曲に戻っても変わることなく続くのであった。
「こめんね皆、急にあんな事始めちゃって」
当日のライブが終わった後、夜中の晩餐時にエクサリーが皆にそう謝ってくる。
本日のライブはお昼から1時間、夕方から2時間、という2回の公演であった。
夕方からの2時間は、昼の冒険者達が触れ回ってくれたのか、結構な人が集った。
このペースなら明日も期待できそうではある。
「いや、あれはオレが悪かった。事前に客層に合わせて修正するのも必要なことだった」
オレ達はただ、音楽を聴かす為に演奏をするのじゃない。
観客に喜んでもらう為に演奏するのだ。
お客が望むものを提供する、それこそがエンターテイナーって奴だろ?
オレはそれを、エクサリーに思い出させてもらった気がする。
「オレは最初、客層が合ってないから今回はダメだなって諦めてしまっていた。今日の演奏が成功したのは、エクサリーのおかげだ!」
「えっ、私、そんなつもりじゃ……ただ、クイーズの演奏を聞こうとしないのが、なんか悔しかったから……」
でもその悔しさって大切な事なんだと思う。
ダメだなって、諦める奴は大成しない。だからオレは前世も大成しなかったのだろう。
だけど、カユサルやエクサリーにはそれが備わっている。
悔しさをバネに出来る奴は強い。さらに諦めない不屈の闘志が加われば無敵だ!
「いやっ、そんなっ、なんかクイーズに褒められると頭がグルグルしてきちゃう」
「お坊ちゃまは、どっか諦観している様な雰囲気がありますからねえ」
だれがじじくさいだよ? おい。
別にそこまでは言ってませんよぉ。とシラをきるラピス。
「よしっ、子供達には急な変更にも付いて来てもらったんでボーナスを上げよう」
『出でよ! お料理セット!』
オレはお料理セットを取りだす。
祭りだけあって、様々な食材が売りに出されていた。
その中で、お菓子になりそうなものを大量に買ってきたのだ。カシュアが。
コイツほんと、食べ物の事になると、謎の行動力を起こすよなあ。
「うまっ、ウマッ! なんだねこれば! 見たことも無い食べ物だねっ!」
「ガウガウ、ウメエ!」
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