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第九章

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「……それはもう、とてもかっこ良かった」

 アポロが上気した顔で、サヤラとティニーに熱く語っている。
 普段あまり喋らないアポロが熱弁を振るうのを見て、私も見てみたかったなあと呟くサヤラ。

「クイーズさんが真面目に戦う事なんて滅多にないっすからね」
「なぜか何時も誰かに邪魔されているよね」
「クイーズさんの本気、見てみたかったッス」
「……また一つ、私は惚れなおした」

 そう言って最後に握りこぶしを固める。

「ねえねえ、それでどうだったの旅の道中は? その……寝るときとか、二人っきりだったんでしょ?」

 サヤラがニヤニヤとした顔でアポロを肘でつつく。
 あそこまでお膳立てしたんだから、きっと何かあったよね! と興味津々である。
 しかしアポロさん、先ほどまでの上気した顔はどこへやら、なにやら沈んだ雰囲気となり、

「……全部カシュアのおっぱいに奪われた」

 と、ポツリと呟く。
 そしてサヤラの胸をジッと見つめる。
 サヤラさん、意外と巨乳でございます。

「……っく、同じモノを食べているはずなのに、どうしてこうまで違う!」
「いたっ、痛いよアポロ!」

 サヤラの胸に掴みかかるアポロを、まあまあと宥めるティニー。

「しかしほんと不思議ッスよね。なんでサヤラだけがこんなにデカイのかと」
「べっ、別に大きさなんて、どうでもいいんじゃない?」
「……そんな事は無い、私にもっと胸があれば……今頃クイーズは私のもの」

 その自信はどこからくるんすかねえ。と呟くティニー。

「まあ、そんだけ大きかったら、ちょっとは分けてもらえないかと思うッスけど」
「別にティニーは使う予定ないんだからいらないでしょ?」
「それどういう意味ッスか!」

 などというやり取りがあったとは露知らず、オレはひたすら身を隠す。

「ふう、まともに寝れやしないな」

 ロリドラゴンの奴、毎晩人の布団を鉄並に重くしていきやがる。
 潰れるだろが!
 えっ、寝てる間も体を鍛えられていいだろ。だって?
 そんなわきゃねえ、寝れねえよ!
 もう許してくれよぉ。

 という事で、こっそりとエクサリーさんの部屋に逃げ込む事にした。
 うん、下心はないのですよ?

「仕方ないわね。ロゥリちゃんには私から言っとく。今日は……もう遅いから、ここで寝る?」

 そう言いながら、ちょっと恥ずかしそうな仕草をするエクサリーさん。
 ズキューンってキタッす!
 ルパンダイブしてもいいっすか!?

「あれ? エクサリー、ちょっと化粧している?」
「えっ、今はその……何もしてないけど、してた方がいい?」

 そう言って恥ずかしそうに布団で顔を隠そうとするエクサリー。
 それにしては、ちょっと見ないうちに、なんていうか、美人度が上がっているような気がする。

「もう、そんなお世辞なんていいから」

 いや、お世辞じゃないって。
 そういえば聞いた事が有る。
 お化粧をする事により心理的影響を与え、顔つきを優しいものにするとか。

「そうですね、お化粧をする事により、脳の刺激、身体の運動、老化予防等の効果が得られます。また、鏡を見て理想の形にしようとする働きで、筋肉も自然とそれに近づくそうですよ」
「ほうほう、なるほどな。ってことは、この先エクサリーはどんどん綺麗になっていくという事か」
「そうですね、うかうかしていると横から攫われちゃいますよ」

 あの、化粧後の顔が地顔になる可能性もあるのか……まずいな、レベル上げとかしてる場合じゃないぞ。
 って、なんで居るラピス!?
 えっ、当作品は全年齢向けなので、お坊ちゃまが期待しているような展開にはならない?
 なんだよ当作品って? 単に邪魔しに来ただけだろ!?

「そうとも言う」
「そうとしか言わねえよ!」
「フフッ、じゃあ三人で寝ましょ」

 ええ~い、ラピスの奴などカードに戻してくれる。
 あれ? 何で戻らないの?
 えっ、カード統率のスキル忘れたのですか。だって?
 ええっ、オレの意思より優先なのソレ?

「もうお前が居たらオレ要らないジャン!」
「何言ってるんですか、お坊ちゃまが居てこそ、このラピスが居るんですよ」

 さあ寝ましょって、オレをエクサリーの布団に押し込んでくる。
 ちょっと待て、なんでお前がエクサリーとオレの間に入るんだよ?
 違うだろ? 両手に花はオレの立場だろ?

「やだ~、なんだかんだ言って、すっかりノリ気じゃないですか~」
「ハッ、しまった、ついホンネが!」

 いや違うんすよ! 自分エクサリーさんが居ればそれでいいんですから! うぉっ、や~らけ。
 止めろっ、オレを誘惑するんじゃない!
 だからエクサリーさん、そんな軽蔑するような目で見ないでください。

「別に軽蔑なんてしていない」
「ホントニ?」
「本当」

 じゃあ両手に花でもいいですか? えっ、ダメ? ですよね~。
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