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第八章

レベル125

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「あつつつっ!」

 ちょっとサヤラさん! 近いっすよ!

「私の弾丸は魔道具扱いになるのか普通に爆破が発動しますね」
「……私の方は掻き消えた」

 本日はアポロ達三人娘に、パワードスーツの検証をお願いしている所だ。
 魔法無効範囲は3メートル程度。
 アポロの魔法は防げても、サヤラの魔法銃は防げない。

 魔法銃の弾は魔道具扱いで、魔法無効のスキルの対象外になるようだ。

 また、無効と言っても、範囲内での発動が無効なだけであり、すでに発動済みの魔法が掻き消える事は無い。
 ファイアーボールとかが遠くから飛んで来たら普通に当たる。

 基本魔法は遠距離攻撃なので、味方の魔法を阻害し、敵の魔法は普通に食らう。使えねえなあ……
 着弾・爆発と二段階を踏む魔法は爆発の部分だけでも防げるから、完全に使えないって事もないが。
 サヤラの弾丸のように魔道具扱いになっている場合はそれも駄目みたいだけどね。

 まあ、おまけのようなシステムだな。

「しかし、クリスタルカードを使ったにしてはしょぼいな」

 クリスタルカードじゃなければ何になったんだろな?
 骸骨が骸骨王だから騎士王か? そっちの方がよかったかな。セイバーさんとか来てくれないかな。無理か。
 今後のレベルアップに期待するとしよう。

「…………相談が有る」

 ちょろっとレベル上げも経験して、街に戻ろうかとなった時、アポロがそんな事を言ってくる。
 なんでもちょっと迷惑な御仁に付き纏われている模様。

「えっ、いつからなのアポロ?」
「うちら全然気づかなかったスよ?」
「……昨日急に現れて、私に自分の国に来いという」

 なるほど、スカウトのようなものか。
 言われてみればアポロは優秀だしな。
 全属性の魔法を高いレベルで扱えるのはアポロ以外見た事が無い。

 今までスカウトが無かった事自体がおかしかったのかも知れない。
 しかし困った、アポロはオレ達のメンバーで唯一の魔法職。
 居なくなったらアスカさんちみたいにガチ勢になってしまう。

「…………大丈夫、私はどこにもいかない」

 そう言ってチョコンとオレの服の裾を掴むアポロさん。
 ちょっとかわいい。
 しかしいいのだろうか? 話だけでも聞いて置いたほうがいいかも知れない。
 アポロの話ではきっぱり断ったのだが、今後も付き纏われそうな雰囲気だったと言う。

「明日にでもオレと一緒に街を廻って見るか?」
「えっ……コクコク」

 なにやら嬉しそうな感じでウンウンと頷くアポロ。

 おっ、クイーズさんとデートっすか良かったっすね。
 明日はとっておきのおめかししなくちゃいけないわよ。
 ……うん、あのクズに感謝。

 なにやら三人で内緒話をしておられる。

「……腕組んでもいい?」

 翌日、お姫様のような大層豪勢な姿をしたアポロが現れた。
 えっ、そのかっこで街行くの?
 あとエクサリーさんの目が怖いからやめようね。

「……ふふっ、今日はクイーズとデート」

 いやデートじゃないよ? デートじゃないんですよ? 昨日話したよね?
 だからエクサリーさん、そんな闇討ちしそうな目で見ないでください。

「別に闇討ちなんてしない……」

 エクサリーさんの刺すような視線に見送られ暫く歩くと、急に一人の男が立ちふさがって来た。

「…………チッ」

 アポロさんがめずらしく舌打ちをしている。
 はええよ、感謝して損した。とか呟いている。

「ほう……随分見違えたね。これは是非にこそ僕の国へ来てもらいたいものだね」
「…………何度来てもムダ」

 そいつは、オレの事など目に入って居ない様子でアポロに話しかける。
 見た目は普通の貴族に見えない事も無い。が、なにやら動きに隙がなさそうな雰囲気だ。
 先ほども目の前に現れるまで一切気配がしなかった。

 向こうがこっちに興味を持つ前に、オレは予定通り待機中のカシュアを召喚しておく。
 待機と言っても、どうせゴロゴロしてポテチ食っているだけだろうけどな。

「突然何事だね?」
「ああ、アレだよアレ、今朝言ってた奴」
「ああ、アレかね! なんだっけ?」

 聞いてなかったんかよ! まあどうせ聞いてないとは思ってた。

「こないだのオーガ殲滅戦は見せてもらった。あれほどの力、放置しておく訳にはいかないのだよ」
「…………アレは私の力では無い」

 どうやらこの御仁、こないだのオーガ侵攻戦で使った、水爆らしきものを危険視して居る模様。
 アレはアポロの力じゃなくてアクアの能力なんだが……

「調べはついている。隠そうとしても無駄だ」

 どうも話を聞かないタイプの人のようだ。
 アポロがアクアを出して見せても、

「それもまた君の力だ」

 などと言って勝手な解釈に落ち着く。

「僕も強硬な手段はあまりとりたくない。出来るだけ自発的にこちらに来てもらいたいものだ」

 アポロがヤレヤレと言った表情でオレの方を見てくる。
 うん、これは駄目だな。ちょっとアポロを預けてもいいなんて思える御仁じゃない。
 オレはそっと前に出てアポロを庇うように立つ。

「なんだね君は、僕と彼女の邪魔をしないでくれないかな?」
「生憎、こっちが先約でね。オレには彼女を幸せにする義務がある、お前のような輩には決して渡せない」
「……クイーズ!」

 アポロはギュッと服の背中の部分を握り締め額を当ててくる。

「何を言うんだね? 僕と一緒に来れば、金も、名誉も、思いのままだ! それこそが彼女が幸せになる第一歩であろう!」
「人の幸せとは、愛され、褒められ、役に立ち、必要とされることだと聞く」
「その全てを僕は彼女に与えられる事が出来るだろう!」

 だがそこに、誰に、という本人の意思が入ってくる。
 愛されたい、褒められたい、役に立ちたい、必要とされたい、でもそれは、誰でもいい訳じゃない。

「少なくとも、オレよりは強く思われている奴じゃなければアポロは渡す気は無い!」
「ならば君が居なくなればそれも達成できる!」

 次の瞬間、殺気が迸る!
 カシュアの盾がオレの視界を防ぎ、そして何かを受け止めるような音がする。

「ほほう……僕の剣を受け止めるとは……察知系のスキルかな? ふむ、どんなスキルだろうね」

 なにやら、満面の笑みでカシュアを見つめている。

「クイーズ君に万一の事があったらボクが怒られるからね! 手は出させないよ!」

 というかコイツ、問答無用で斬りかかってきたのか?
 こんな人通りの多い所で?
 カシュアを呼び出しといてほんと良かったよ。

「いきなり斬りかかってくるとは頂けないな。こう見えてもオレは公爵。クイーズ・ファ・ゼラトースの名を知らないかな?」
「ほうほう……聞いた事があるな……確か、父親殺しとか?」

 殺していないよ! 言いがかりにも程が有るよ!
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