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第八章

レベル120

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「お兄ちゃん、私の所為で怒られたの?」

 オレとラピスの話が、どうやら部屋の外まで聞こえていたらしくて、心配そうな顔をしたレリンが駆け寄って来る。

「大丈夫だ。レリンが心配する事はなにもない」

 その頭をなでながらそう答える。

「でも……私みたいに、なんの役にも立たないモンスターをげっとしても……」
「今は、だろ?」
「お兄ちゃん……」

 オレはお前の将来に期待している!
 きっとお前は素晴らしい魔法戦士になる。に違いない!

「……うん! がんばる!」

 ラピスが、ハァ……とため息を付いて立ち上がる。

「まあいいでしょ。見たところ、今クラスチェンジしても碌な物がありませんね。クラスチェンジして戦力アップになりそうなのは、ハーモア、サウ、レリンの3名ぐらいです」

 そんなにひどいのか?

「今ここに無いカードはどうだか知りませんが……カシュアのとかひどいですよ?」

 ふむふむ、うわっニクダルマやっ! こわっ!
 膨張して街とか破壊しそうだな。
 ギターにお料理セットは普通に元のモンスターになるだけだし、骸骨と竜王はクリスタルカードで見ても大して変化が無い模様。
 鉱石Mに至っては、見た所、なにが変わったか分からないレベル。

「ハーモアは虎になるのか?」
「虎じゃねえ! ライオンだ!」

 まあメスの場合は区別つかねえし。
 いたたた、冗談だって!

「それでは、今後の育成方法は、レリンを20レベルにしてエロフにする。でいいですね」
「だな」
「はいっ!」

 ちょうどその時、エクサリーが店から帰ってくる。
 あっ、ちょっとそこのロリドラゴン! いい顔してどこへ行く!?

「ガウガウ、クイーズガ、マタ、コドモコサエタ!」

 ちょっ、おおお、おまっ、言い方! その言い方はまずいだろっ!

「また?」

 笑顔でロリドラゴンを迎えようとしたエクサリーの表情が凍り付く。

「こいつ浮気してたぞ! いやらしい目つきで顔をナデナデしてた!」

 ハーモアの奴までそれにのっかかる。
 サウが隣でウンウンと頷いている。
 しかも言った後逃げ出しやがった。

「どういう事かなクイーズ」

 凍りついた笑顔で迫ってくるエクサリーさん。うぉっ、これはこれで怖い。

「いやだなあ……ボクが浮気なんてするはずないじゃないですか~」

 オレはエクサリーの両頬に人差し指をそれぞれあてて笑い顔を作る。うん、怖い。
 なんか悪魔がニタァって感じになった。

「何やってるのクイーズ?」
「いや、こうすれば少しは怖くなくなるかなと。逆に悪魔の微笑みになったがな」
「………………」

 あっ、ヤバイ。エクサリーの目がだんだんつり上がって行く。
 スマイル、スマイルっすよ?

 ――ニタァ

「ひぃいいい!」

 なんとか事情を話して許してもらった。

「もう、ロゥリちゃんもあまりからかっちゃだめよ」
「デモコイツ、ゲットシタラビジンガ・・モゴモゴ」

 おい! いらんでいいことは言わんでよろしい。

 ――ガブリ

「イダダダ! このクソドラゴン!」
「ガウガウ!」
「もう、こんな所で暴れちゃダメよ」

 そしてその日の夜中。

「えっ、一緒に寝る?」

 どうやらまだ幼かったようで、一人では寝られないご様子。
 まあいいか、一緒に寝るかってなったんだが。

「ずるいぞ! ハーも一緒に寝る!」

 ハーモアの奴まで潜り込んでくる始末。
 ちなみに、サウの奴は前から足元に潜り込んで来ている。小さいから皆、気にはしていなかった。

「…………じゃあ私も」

 いやいや、さすがにアポロさんはまずいっしょ。
 なお、ロリドラゴンの奴は冬場は潜り込んでくるが、夏場は熱いので寄り付いてこない。ほんと自由な奴だ。

「お坊ちゃま、モテモテですね~」
「幼女にモテてもなあ」

 で、いざ寝ようとした時、なにやらシクシクと泣き始めるレリン。
 堪えていたものが溢れだした模様。
 それにつられてハーモアの奴まで泣きだす始末。
 サウの奴が一生懸命二人を笑わそうと変顔をしている。

 オレはそんな三人を胸に抱きかかえてゴロンと横になる。

「今は泣いて良いぞ。泣けるだけ泣いて、涙を枯らしておけ。そうすれば明日はきっと笑える」

 なにやらサウの奴まで泣きだし始めた。
 こいつの両親はどうだか知らないが、孤児にはかわりない。
 もしかしたら悪戯癖も、寂しさを紛らわせる為の手段だったのかもしれない。

「オレ達はもう家族なんだ。血よりも濃い、同じ命を共有する存在なんだ。互いが互いを支えあい、皆で一緒に生きていこう」
「お兄ちゃん……」
「ウウッ……」

 と、そこへ、バンと扉を開けてロリドラゴンが飛び込んでくる。

「イダダダ! 何しやがるこのクソドラゴン!」
「ナカシタナ! テンチュウ!」

 だから、天誅じゃねえ!
 格闘を繰り広げるオレとロリドラゴンを見て、いつの間にか三人の顔に笑顔が溢れているのだった。
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