上 下
118 / 279
第八章

レベル118

しおりを挟む
 ある日の事だった。
 ロリドラゴン達三匹が、一匹のゴブリンを連れ帰ってきた。

「…………飼うのかソレ?」
「ガウガウ、チョットコッチコイ」

 そう言ってオレを部屋の外に連れ出すロリドラゴン。
 えっ、ゴブリンじゃない? エルフだって?
 本日は、ダークエルフのサウの里帰りをしていたらしい。

 なんでも熟したうまい木の実があるとか。
 ダークエルフもエルフと同じで、森の恵みにはあまり手を付けない。
 なのでその森は、そりゃもう食べ物の宝庫で有ると。

 ちなみにこのサウ。エルフの癖に森の恵みが大好きなんだと。
 なんで目の前に、うっめえものがあるのに我慢しにゃかならんのか。
 日々、不満を持って過ごして居たそうな。なを、偶に黙って食ってたようだ。

 そんなんだからイケニエに選ばれるんだよ。

 で、森を探索している途中、なにやら戦闘音が聞こえる。
 急いでそこに向かったところ、

「エルフ同士で戦っていたと……?」
「ウムリ」

 たどり着いた時には既に戦闘は終了しており、小さな子供が手を引かれて、どこかへ連れて行かれそうになっていたようだ。
 事情を聞いたところ、掟を破って森の恵みに手を付けた一家に粛清を加えて居るとのこと。
 普段温厚であるエルフ達だが、仲間が掟を破った時は非常に厳しい。
 自らの仲間が森の恵みに手を付けた場合は、その一家を追放又は惨殺するらしい。

 逆にダークエルフ達はそこまで厳しくなく、その価値観の所為で、お互いいがみ合って居るそうだ。

 父親が怪我をして漁が出来なくなり、代わりに母親が漁に出たのだが、逆に巨大魚に襲われ瀕死の状態に。
 どうしようもなくなって、子供が森の果実を取ってきて、磨り潰して両親に与えていたそうだ。
 そしてそれがバレて、子供が処刑されるとなった時に、両親が連れ出して逃げ出そうとしたのだが、怪我が元で捕まってしまったようだ。
 この後、子供も処刑すると言われて、ちょっと辺りのエルフを殴って強奪して来たらしい。

「ガウガウ、マズカッタカ?」
「いや、良くやった。とは言わないが、オレはお前を支持する!」

 価値観はそりゃ、人それぞれ、場所によりけり。かもしれない。
 しかし、そのまま見捨てる事はオレでも出来なかっただろう。

「両親は死んだ。村にも居られない……頼む! ここに居させてやってくれ!」

 ハーモアがオレにそう頼みこんでくる。
 同じ両親を無くした者同士、共感を感じているようだ。
 オレはそんなハーモアの頭にポンと一度手をのせて部屋に入る。

 オレを見て、怯えたような顔をするエルフの子供。腕の中にはサウをしっかりと抱いている。
 ふうむ、良く見てみると確かにゴブリンより美形に思えない事は無い。
 ゴブリンはたいがいハゲなんだが、この子の頭はフサフサしている。

 オレはそのエルフの子供の前にかがみ込む。
 サウを抱きしめている腕に力が入ったのか、グエッって悲鳴を漏らすプチデビル。
 パタパタと抜け出そうとしているが、エルフの子供は抱きしめて離さない。

 オレはゆっくりと手を伸ばしてその子の頬に触れる。
 触れた瞬間、ビクッと痙攣したが、その後はオレの自由にさせてくれている。
 随分冷たいな。ゴブリンの肌ってこんなものなのか?

 今はちょうど夏真っ盛り、ひやっこいこの肌は中々の肌触りでござる。

「ナンカ、テガエロイ」

 えっ、決してそんな気持ちはありません!
 気づいたら両手で顔をナデナデしていた。
 ちょっとエルフさん、なんか顔が赤くなっている。

「うわ……ロリコン気持ち悪い」
「シネシネ、ウッキッキ!」

 ハーモアとサウの奴がオレにそんな事を言ってくる。
 お前らもうちょっと言い方があるだろ?
 オレはポンポンとエルフの頭を優しくたたいて立ち上がる。

「名前はなんて言う?」
「…………レリン」
「じゃあレリン! これからよろしくな!」

 そう言って手を差し伸べる。
 えっ、と言った顔でオレを見上げてくる。
 オレはニカッと笑ってやる。
 そっとオレの手をとってくるエルフの子供。

 オレはレリンを引き寄せてひょいっと持ち上げる。

「聞いているかも知れないが、こっちの三匹はオレのスキルでこんな姿になっている」

 あわわわって慌てているレリンちゃんかわいい。

「もし望むなら、レリンも人間にならないか?」
「人間……なれるの?」

 オレは力強く頷く。
 うん、実はさっきクリスタルカードでこの子を見てみた。
 そしたらなんと! そらもうどこの海外俳優かというぐらいのとんでもないブロンド美女であった。

 儚げな見た目! 長くとがった耳! 胸は残念だがスラッとした四肢!

 そう! これこそ、夢にまで見た伝説のエルフ!
 でかしたぞロリドラゴン! こういうのを待っていた!

「パパとママを殺したエルフは……嫌い。なれるなら、人間になりたい」

 ちょうどラピスも居ない事だし。使っちゃいますか、こないだ増えたモンスターカード!
 ラピスの奴は、アクアと一緒にガソリンが作り出せないか試行錯誤中だ。
 アクアが水素を分解出来るなら、同じ液体で有るガソリンも作り出せないかと考えているそうだ。

 そしてガソリンを作れるようになったら、ダチョウもどきであるビックフットをオートバイに変えようと。

 ただまあ、ガソリンの精製には非常に高度な知識と技術が必要だと聞く。
 なお、決して水から作り出せる成分ではない。
 あと、あのビックフットにも愛着がわいたしなあ……無機物にするには忍びない。

 と、いう事で使ってしまおう! うん、エルフならきっと戦闘にも役立ってくれるに違いない! ラピスも許してくれる……はず!

 いいですか、決して下心なんてこれっぽちもないんですよ? 本当ですからね?
 だからそこのロリドラゴン、オレを軽蔑した目で見るんじゃない。

『モンスターカード!』
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~

イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」   どごおおおぉっ!! 5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略) ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。 …だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。 それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。 泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ… 旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは? 更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!? ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか? 困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語! ※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください… ※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください… ※小説家になろう様でも掲載しております ※イラストは湶リク様に描いていただきました

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

処理中です...