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第六章

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「という事で、相談したら工房付きのお店を用意してくれるって」

 話になりまして。
 ユーオリ様、そりゃもう飛び上がらんばかりに喜ばれて、さっそく用意しなくちゃって張り切ってございました。

「ま、ま、ま、待て、その娘と二人だけで……か?」

 姫様、随分動揺されているご様子。
 隣の虹色の髪をしているメイドが、卑怯だぞこのヤロウって目線を送ってきている。

「……アポロも行く!」
「うう……なんとか頑張ります」
「置いて行くなんてとんでもないッス」

 ユーオリ様のご好意で、隣にサヤラの工房も作ってくれる事になった。
 銃の本体は向こうじゃ作れないので、こっちからの輸入となる。
 逆に弾はサヤラしか作れないので聖皇国からの輸出となる。

 サヤラの仕事は倍に増えるわけだ。

「パパとママも頑張ってくれてるから、多少なら生産が出来るんだけど……需要には全然追いついてないからなあ……」
「聖皇国で売り出して、どんだけ需要が増えるかによるッスね」
「こっそりと売れば、大丈夫だよね?」

 オレは向こうでもヒットすると思うけどなあ。
 姫様はそれを聞いて今度はとある人物へ目線を向ける。

「ん? ボクかい? もちろん憑いて行くに決まっているじゃないか! ボクとクイーズ君は離れられない仲だからね!」

 また誤解されるような言い回しを……

「せ、聖皇国との直通竜路を……今すぐ作らねば」
「一国の姫様がおいそれと他国を訪問出来ますかね?」
「か、カユサルはしているだろう!」

 姫様と隣の虹色の髪をしたメイドさんが揉めていらっしゃる。
 カユサル様は向こうからの招待ですしね。ならば、私も招待されてやる! 誰にだよ? なんてやり取りをしている。
 まあ直通竜路は欲しいかな。今だと、一度ヘルクヘンセンに行って、そこから聖皇国に向かわないと行けない。

 ヘルクヘンセンまでは約2時間。そこから聖皇国までは3時間。ほぼ半日がかりになってしまう。
 直通だと2時間ちょいぐらいで行けそうだ。

「すぐに帰って竜路を王へ進言してくる!」

 そう言うと颯爽と外へ出て行く。
 隣の虹色の髪をしたメイドさんがヤレヤレと肩をすくめている。

「カイザー、何をしている! 早く来ぬか!」
「はいはい」
「はいは一度だ!」
「ういっす」

 グリフォンさんとも随分打ち解けているご様子。
 そして進言された竜路は一瞬にして採用された。
 元々、サンムーン再建で必要だったとの事。

 だが姫様、そんな事はおくびにも出さす、

「私の成果でこことの距離が近くなった! なにかご褒美が欲しい!」

 などと強請ってきます。

「何かと申されましても……」

 えっ、赤ちゃんが欲しい? このままだとカユサルに先を越されてしまう?
 いや、どうなんでしょう? グランドピアノさんに子供が出来るのでしょうか?

「そんな事、認められない」

 エクサリーが姫様の前に立つ。
 なんか今日のエクサリーさんは何時にも増して迫力がございます。
 思わずウッと後ずさりする姫様。
 姫様でも後ずさりするか……どんだけ迫力があるのよ?

「フンッ、なんだ貴様か、お前の言葉など聞くに値しない」
「これでも、それが言えますか」

 エクサリーが一つの紋章を机の上に置く。
 それは――――聖皇国の公爵家である証。

「貰えるものは貰っておく」

 姫様の口が開いたまま塞がらない。

「私はもう、どんな事をしてでもクイーズを手放さない!」

 エクサリーがそうはっきりと言うのは初めてじゃないだろうか?
 なんだかオレ、感動してきちゃった。

「ま、まだだ! クイーズはピクサスレーンの貴族! そう易々と他国に渡る事は適わん」
「その点は感謝しています。直通竜路が出来たおかげで頻繁に戻って来られますから」

 ガビーンって顔で隣の虹色の髪をしたメイドを見やるお姫様。
 そのメイド、哀れげな視線でそれを返す。
 おい、何か策は無いのか! いや、もう無理っしょ。ってやり取りをしている。

「ま、まだだ! 私は決して諦めない! 退かぬ! こうなれば……」

 ガシッとオレの肩を掴む姫様。
 ちょっと、何をしようとしているので?

「このまま城に連れ帰って檻に閉じ込め・・ハウッ!」

 その姫様をチョップで黙らせる虹色の髪をしたメイド。

「少々姫様が暴走されたご様子、本日はここの所で引き上げるとします」

 そう言ってズルズルと姫様を引き摺って行く。いいのかソレ?

「ちょっとアポロ、どんどん突き離されていない?」
「そうッスよ、やばいッスよ」

 サヤラとティニーが心配そうにアポロの顔を除きこむ。

「…………まだ平民枠が在る。クイーズと一緒なら妾でも構わない」
「アポロ……」
「ウゥッ、切ないッス」
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