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第六章
レベル94
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「という事で、相談したら工房付きのお店を用意してくれるって」
話になりまして。
ユーオリ様、そりゃもう飛び上がらんばかりに喜ばれて、さっそく用意しなくちゃって張り切ってございました。
「ま、ま、ま、待て、その娘と二人だけで……か?」
姫様、随分動揺されているご様子。
隣の虹色の髪をしているメイドが、卑怯だぞこのヤロウって目線を送ってきている。
「……アポロも行く!」
「うう……なんとか頑張ります」
「置いて行くなんてとんでもないッス」
ユーオリ様のご好意で、隣にサヤラの工房も作ってくれる事になった。
銃の本体は向こうじゃ作れないので、こっちからの輸入となる。
逆に弾はサヤラしか作れないので聖皇国からの輸出となる。
サヤラの仕事は倍に増えるわけだ。
「パパとママも頑張ってくれてるから、多少なら生産が出来るんだけど……需要には全然追いついてないからなあ……」
「聖皇国で売り出して、どんだけ需要が増えるかによるッスね」
「こっそりと売れば、大丈夫だよね?」
オレは向こうでもヒットすると思うけどなあ。
姫様はそれを聞いて今度はとある人物へ目線を向ける。
「ん? ボクかい? もちろん憑いて行くに決まっているじゃないか! ボクとクイーズ君は離れられない仲だからね!」
また誤解されるような言い回しを……
「せ、聖皇国との直通竜路を……今すぐ作らねば」
「一国の姫様がおいそれと他国を訪問出来ますかね?」
「か、カユサルはしているだろう!」
姫様と隣の虹色の髪をしたメイドさんが揉めていらっしゃる。
カユサル様は向こうからの招待ですしね。ならば、私も招待されてやる! 誰にだよ? なんてやり取りをしている。
まあ直通竜路は欲しいかな。今だと、一度ヘルクヘンセンに行って、そこから聖皇国に向かわないと行けない。
ヘルクヘンセンまでは約2時間。そこから聖皇国までは3時間。ほぼ半日がかりになってしまう。
直通だと2時間ちょいぐらいで行けそうだ。
「すぐに帰って竜路を王へ進言してくる!」
そう言うと颯爽と外へ出て行く。
隣の虹色の髪をしたメイドさんがヤレヤレと肩をすくめている。
「カイザー、何をしている! 早く来ぬか!」
「はいはい」
「はいは一度だ!」
「ういっす」
グリフォンさんとも随分打ち解けているご様子。
そして進言された竜路は一瞬にして採用された。
元々、サンムーン再建で必要だったとの事。
だが姫様、そんな事はおくびにも出さす、
「私の成果でこことの距離が近くなった! なにかご褒美が欲しい!」
などと強請ってきます。
「何かと申されましても……」
えっ、赤ちゃんが欲しい? このままだとカユサルに先を越されてしまう?
いや、どうなんでしょう? グランドピアノさんに子供が出来るのでしょうか?
「そんな事、認められない」
エクサリーが姫様の前に立つ。
なんか今日のエクサリーさんは何時にも増して迫力がございます。
思わずウッと後ずさりする姫様。
姫様でも後ずさりするか……どんだけ迫力があるのよ?
「フンッ、なんだ貴様か、お前の言葉など聞くに値しない」
「これでも、それが言えますか」
エクサリーが一つの紋章を机の上に置く。
それは――――聖皇国の公爵家である証。
「貰えるものは貰っておく」
姫様の口が開いたまま塞がらない。
「私はもう、どんな事をしてでもクイーズを手放さない!」
エクサリーがそうはっきりと言うのは初めてじゃないだろうか?
なんだかオレ、感動してきちゃった。
「ま、まだだ! クイーズはピクサスレーンの貴族! そう易々と他国に渡る事は適わん」
「その点は感謝しています。直通竜路が出来たおかげで頻繁に戻って来られますから」
ガビーンって顔で隣の虹色の髪をしたメイドを見やるお姫様。
そのメイド、哀れげな視線でそれを返す。
おい、何か策は無いのか! いや、もう無理っしょ。ってやり取りをしている。
「ま、まだだ! 私は決して諦めない! 退かぬ! こうなれば……」
ガシッとオレの肩を掴む姫様。
ちょっと、何をしようとしているので?
「このまま城に連れ帰って檻に閉じ込め・・ハウッ!」
その姫様をチョップで黙らせる虹色の髪をしたメイド。
「少々姫様が暴走されたご様子、本日はここの所で引き上げるとします」
そう言ってズルズルと姫様を引き摺って行く。いいのかソレ?
「ちょっとアポロ、どんどん突き離されていない?」
「そうッスよ、やばいッスよ」
サヤラとティニーが心配そうにアポロの顔を除きこむ。
「…………まだ平民枠が在る。クイーズと一緒なら妾でも構わない」
「アポロ……」
「ウゥッ、切ないッス」
話になりまして。
ユーオリ様、そりゃもう飛び上がらんばかりに喜ばれて、さっそく用意しなくちゃって張り切ってございました。
「ま、ま、ま、待て、その娘と二人だけで……か?」
姫様、随分動揺されているご様子。
隣の虹色の髪をしているメイドが、卑怯だぞこのヤロウって目線を送ってきている。
「……アポロも行く!」
「うう……なんとか頑張ります」
「置いて行くなんてとんでもないッス」
ユーオリ様のご好意で、隣にサヤラの工房も作ってくれる事になった。
銃の本体は向こうじゃ作れないので、こっちからの輸入となる。
逆に弾はサヤラしか作れないので聖皇国からの輸出となる。
サヤラの仕事は倍に増えるわけだ。
「パパとママも頑張ってくれてるから、多少なら生産が出来るんだけど……需要には全然追いついてないからなあ……」
「聖皇国で売り出して、どんだけ需要が増えるかによるッスね」
「こっそりと売れば、大丈夫だよね?」
オレは向こうでもヒットすると思うけどなあ。
姫様はそれを聞いて今度はとある人物へ目線を向ける。
「ん? ボクかい? もちろん憑いて行くに決まっているじゃないか! ボクとクイーズ君は離れられない仲だからね!」
また誤解されるような言い回しを……
「せ、聖皇国との直通竜路を……今すぐ作らねば」
「一国の姫様がおいそれと他国を訪問出来ますかね?」
「か、カユサルはしているだろう!」
姫様と隣の虹色の髪をしたメイドさんが揉めていらっしゃる。
カユサル様は向こうからの招待ですしね。ならば、私も招待されてやる! 誰にだよ? なんてやり取りをしている。
まあ直通竜路は欲しいかな。今だと、一度ヘルクヘンセンに行って、そこから聖皇国に向かわないと行けない。
ヘルクヘンセンまでは約2時間。そこから聖皇国までは3時間。ほぼ半日がかりになってしまう。
直通だと2時間ちょいぐらいで行けそうだ。
「すぐに帰って竜路を王へ進言してくる!」
そう言うと颯爽と外へ出て行く。
隣の虹色の髪をしたメイドさんがヤレヤレと肩をすくめている。
「カイザー、何をしている! 早く来ぬか!」
「はいはい」
「はいは一度だ!」
「ういっす」
グリフォンさんとも随分打ち解けているご様子。
そして進言された竜路は一瞬にして採用された。
元々、サンムーン再建で必要だったとの事。
だが姫様、そんな事はおくびにも出さす、
「私の成果でこことの距離が近くなった! なにかご褒美が欲しい!」
などと強請ってきます。
「何かと申されましても……」
えっ、赤ちゃんが欲しい? このままだとカユサルに先を越されてしまう?
いや、どうなんでしょう? グランドピアノさんに子供が出来るのでしょうか?
「そんな事、認められない」
エクサリーが姫様の前に立つ。
なんか今日のエクサリーさんは何時にも増して迫力がございます。
思わずウッと後ずさりする姫様。
姫様でも後ずさりするか……どんだけ迫力があるのよ?
「フンッ、なんだ貴様か、お前の言葉など聞くに値しない」
「これでも、それが言えますか」
エクサリーが一つの紋章を机の上に置く。
それは――――聖皇国の公爵家である証。
「貰えるものは貰っておく」
姫様の口が開いたまま塞がらない。
「私はもう、どんな事をしてでもクイーズを手放さない!」
エクサリーがそうはっきりと言うのは初めてじゃないだろうか?
なんだかオレ、感動してきちゃった。
「ま、まだだ! クイーズはピクサスレーンの貴族! そう易々と他国に渡る事は適わん」
「その点は感謝しています。直通竜路が出来たおかげで頻繁に戻って来られますから」
ガビーンって顔で隣の虹色の髪をしたメイドを見やるお姫様。
そのメイド、哀れげな視線でそれを返す。
おい、何か策は無いのか! いや、もう無理っしょ。ってやり取りをしている。
「ま、まだだ! 私は決して諦めない! 退かぬ! こうなれば……」
ガシッとオレの肩を掴む姫様。
ちょっと、何をしようとしているので?
「このまま城に連れ帰って檻に閉じ込め・・ハウッ!」
その姫様をチョップで黙らせる虹色の髪をしたメイド。
「少々姫様が暴走されたご様子、本日はここの所で引き上げるとします」
そう言ってズルズルと姫様を引き摺って行く。いいのかソレ?
「ちょっとアポロ、どんどん突き離されていない?」
「そうッスよ、やばいッスよ」
サヤラとティニーが心配そうにアポロの顔を除きこむ。
「…………まだ平民枠が在る。クイーズと一緒なら妾でも構わない」
「アポロ……」
「ウゥッ、切ないッス」
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