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第六章
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フワフワと妖精サイズの人を形どった水の塊が浮いている。
かわいい! とてもきゃわいぃいいい!
オレの周りを嬉しそうにグルグル回る。オレの目もグルグル回る。
いかん! これは決して格闘家のお姉さんには見せられない! 絶対に持っていかれる!
「…………これ、欲しい」
「クイーズさん! 水はまだまだあります! さあ、さあ!」
「ちょっと、二人とも目がマジっすよ?」
そんな事言われても、もうカードがないッスよ?
別に格闘家のお姉さんじゃなくとも、女の子達には好評なご様子。
「あともうちょっとでカードは増えるんでしょ!」
いやまあそうなんだけど。
ちょっと怖いよ君達。
ラピスがなんか妖精さんとお話している。
「会話が出来るのか?」
「なんとなくですけどね」
ラピスが木を指差す。
ウィンディーネがウーンウーンと唸る仕草をした後、水の槍がそれにつき刺さった。
「どうやら簡単な水系統の魔法が使えるようですね」
さすが水の妖精さん。
「……クイーズ、お願い」
アポロがウルウルとした瞳を向けてくる。
手を組んでズズイッと顔を近づけてくる。
「……コレくれたらなんでもしてあげる」
えっ、なんでも!? ほっ、ほんとッスか! イヤイヤ、自分、エクサリーさん一筋ッスから! いやでも、少しぐらいなら……
「いいんじゃないですか。アポロに魔法を教えてもらえば一石二鳥ですし」
「クイーズ……」
とうとう折れるオレ。
アポロとサヤラが嬉しそうに妖精さんと戯れている。
うん、中々いい絵だ。カメラがあれば収めたいほど。
「ティニーは混ざらないのか?」
「いや、うちはちょっと……」
その二人を見て引きぎみなティニー。
かわいいもの好きじゃないティニーにとっては、人型を取る水の塊なんて、得体の知れない物体にしか見えないようだ。
「とりあえずはメタル(物理)を20レベル目指しましょうか」
「そうだな」
「そちらのレベル上げは任せますよ」
「…………任された」
ラピスが、ロゥリが置いて言ったドラスレを持ち出してくる。
「ちょっと面積が足りませんが、片刃ぐらいは隠せるでしょう」
そう言って鉱石Mを鞘の形に変える。
なるほど、そういう使い方もある訳か。
ラピスのスピードに、ドラスレの攻撃力が合わされば百人力でござる。
「それでは、ボーナスステージと行きましょうか」
まさしくボーナスステージである。
33レベルとなったラピスのスピードは、ここに居るどのモンスターでも捕らえ切れない。
そして物理一辺倒の、24レベルドラゴンスレイヤーに斬れないモンスターは存在しない。
スパスパとモンスターを輪切りにしていくラピス。
オレもアポロも手付けをするだけで精一杯だ。
ここに居るモンスター、結構高位のはずなんだがなあ。
まあ、おかげで鉱石Mもウィンディーネもさくさくレベルが上がる。
「ウィンディーネのパラメータはどう振る?」
「…………知能重視?」
「そうですね、防御や攻撃に振っても水ならあまり意味無いでしょうし……知能重視、時々素早さ。がいいのかな?」
アポロとサヤラが頭を付き合わせてウンウン唸っている。
まあポイントは後でも振れる。急ぐ事も無い。
そうしてあらかたモンスターを片付け終わった頃には、ウィンディーネが10レベルになっていた。
鉱石Mはさすがに14レベル止まりだが。
「スキルに水系統強化が追加されているぞ」
「ヤッタ! アクアちゃんもこれで攻撃力アップだね!」
サヤラがそう言って妖精さんの手をとって飛び跳ねる。
どうやらウィンディーネの名前はアクアに決定した模様。
アポロはそんなアクアに、私の事は師匠と呼ぶがいい。魔道の道は遠く険しい。などと言って聞かせている。
だが残念な事に、アクアは声が出せない模様。懸命に体で感情を表現している。
「そろそろ私達の仕事は終わりそうですし、店に戻る支度でもしましょうか?」
「そうだな、レベルの方はどうだ?」
「あれだけやっても1レベルしか上がっていません。アクアが羨ましい限りですね」
そういやなんかのゲームでは、とあるレベルに達すると、1レベル上げるのに今まで稼いできた全部の経験値と同じ量が必要とかいうのもあったよなあ……自分、そこで挫けました。
そうして店に帰りついたら突然アポロが、
「クイーズとの子供が出来た。こちらアクア」
「ブッ」
なんて感じでエクサリーにウィンディーネを紹介する。
ちょーーーとっ! なんて紹介してるのーーー!
思わず食べてたものをおやっさんの顔に吹き付けるエクサリー。
「どういうこと、クイーズ?」
仁王様じゃあ、仁王様がおられるぅう。へへーっ!
「私達の愛の結晶。私とクイーズが二人で生んだ生命」
いやっ、間違ってないんですがね? ちょっとアポロさん、言い方ってものがあるでしょ?
アクアちゃんは手を前にそろえ礼儀正しくお辞儀をしている。
「クィイイーズゥウウウ!」
「ヒィイイイ!」
かわいい! とてもきゃわいぃいいい!
オレの周りを嬉しそうにグルグル回る。オレの目もグルグル回る。
いかん! これは決して格闘家のお姉さんには見せられない! 絶対に持っていかれる!
「…………これ、欲しい」
「クイーズさん! 水はまだまだあります! さあ、さあ!」
「ちょっと、二人とも目がマジっすよ?」
そんな事言われても、もうカードがないッスよ?
別に格闘家のお姉さんじゃなくとも、女の子達には好評なご様子。
「あともうちょっとでカードは増えるんでしょ!」
いやまあそうなんだけど。
ちょっと怖いよ君達。
ラピスがなんか妖精さんとお話している。
「会話が出来るのか?」
「なんとなくですけどね」
ラピスが木を指差す。
ウィンディーネがウーンウーンと唸る仕草をした後、水の槍がそれにつき刺さった。
「どうやら簡単な水系統の魔法が使えるようですね」
さすが水の妖精さん。
「……クイーズ、お願い」
アポロがウルウルとした瞳を向けてくる。
手を組んでズズイッと顔を近づけてくる。
「……コレくれたらなんでもしてあげる」
えっ、なんでも!? ほっ、ほんとッスか! イヤイヤ、自分、エクサリーさん一筋ッスから! いやでも、少しぐらいなら……
「いいんじゃないですか。アポロに魔法を教えてもらえば一石二鳥ですし」
「クイーズ……」
とうとう折れるオレ。
アポロとサヤラが嬉しそうに妖精さんと戯れている。
うん、中々いい絵だ。カメラがあれば収めたいほど。
「ティニーは混ざらないのか?」
「いや、うちはちょっと……」
その二人を見て引きぎみなティニー。
かわいいもの好きじゃないティニーにとっては、人型を取る水の塊なんて、得体の知れない物体にしか見えないようだ。
「とりあえずはメタル(物理)を20レベル目指しましょうか」
「そうだな」
「そちらのレベル上げは任せますよ」
「…………任された」
ラピスが、ロゥリが置いて言ったドラスレを持ち出してくる。
「ちょっと面積が足りませんが、片刃ぐらいは隠せるでしょう」
そう言って鉱石Mを鞘の形に変える。
なるほど、そういう使い方もある訳か。
ラピスのスピードに、ドラスレの攻撃力が合わされば百人力でござる。
「それでは、ボーナスステージと行きましょうか」
まさしくボーナスステージである。
33レベルとなったラピスのスピードは、ここに居るどのモンスターでも捕らえ切れない。
そして物理一辺倒の、24レベルドラゴンスレイヤーに斬れないモンスターは存在しない。
スパスパとモンスターを輪切りにしていくラピス。
オレもアポロも手付けをするだけで精一杯だ。
ここに居るモンスター、結構高位のはずなんだがなあ。
まあ、おかげで鉱石Mもウィンディーネもさくさくレベルが上がる。
「ウィンディーネのパラメータはどう振る?」
「…………知能重視?」
「そうですね、防御や攻撃に振っても水ならあまり意味無いでしょうし……知能重視、時々素早さ。がいいのかな?」
アポロとサヤラが頭を付き合わせてウンウン唸っている。
まあポイントは後でも振れる。急ぐ事も無い。
そうしてあらかたモンスターを片付け終わった頃には、ウィンディーネが10レベルになっていた。
鉱石Mはさすがに14レベル止まりだが。
「スキルに水系統強化が追加されているぞ」
「ヤッタ! アクアちゃんもこれで攻撃力アップだね!」
サヤラがそう言って妖精さんの手をとって飛び跳ねる。
どうやらウィンディーネの名前はアクアに決定した模様。
アポロはそんなアクアに、私の事は師匠と呼ぶがいい。魔道の道は遠く険しい。などと言って聞かせている。
だが残念な事に、アクアは声が出せない模様。懸命に体で感情を表現している。
「そろそろ私達の仕事は終わりそうですし、店に戻る支度でもしましょうか?」
「そうだな、レベルの方はどうだ?」
「あれだけやっても1レベルしか上がっていません。アクアが羨ましい限りですね」
そういやなんかのゲームでは、とあるレベルに達すると、1レベル上げるのに今まで稼いできた全部の経験値と同じ量が必要とかいうのもあったよなあ……自分、そこで挫けました。
そうして店に帰りついたら突然アポロが、
「クイーズとの子供が出来た。こちらアクア」
「ブッ」
なんて感じでエクサリーにウィンディーネを紹介する。
ちょーーーとっ! なんて紹介してるのーーー!
思わず食べてたものをおやっさんの顔に吹き付けるエクサリー。
「どういうこと、クイーズ?」
仁王様じゃあ、仁王様がおられるぅう。へへーっ!
「私達の愛の結晶。私とクイーズが二人で生んだ生命」
いやっ、間違ってないんですがね? ちょっとアポロさん、言い方ってものがあるでしょ?
アクアちゃんは手を前にそろえ礼儀正しくお辞儀をしている。
「クィイイーズゥウウウ!」
「ヒィイイイ!」
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