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第六章
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「うわぁああああ! 離してよ! ほんと離してください!」
「良いではないか、良いではないか」
竜王ニースさんのお話では、なんでもカシュアは、骸骨が人間だった頃の伴侶の魂が多少なり混ざっているそうな。
そしてそんな話を聞いた骸骨、そりゃもう、仕事をほっぽりだして毎日カシュアにスリスリしている。
「おい骸骨、パセアラから仕事が溜まっていると苦情が来ているぞ」
「良いではないか、良いではないか」
「もうそれ持って帰っていいから、仕事はちゃんとしろ」
見捨てないでよぉーーーって、オレの足に縋り付いてくるカシュア。
分かった、分かったから! ええい、オレのズボンに鼻水を擦り付けるでない。
いいから骸骨、早く仕事して来い。余計にカシュアに嫌われるぞ。
「仕方在るまい。今日のところは帰るとするか」
もう来んなバーローってアッカンベーをしているカシュア。
「さっさと終わらせて帰ってくるから待っててね。ダーリン(はあと)」
と投げキッスをしてくる骸骨。
なんか背筋に冷たいものが……オレとカシュアは思わず抱き合って震えている。
恐ろしい……深遠を垣間見てしまった感じだ。
オレはさっそくパセアラに緊急電話。少しでも多く骸骨に仕事回してくれと頼みこむ。
「あなたから掛けてくるなんて……珍しいわね」
そう言えば始めてかもしれない。
「……パセアラはまだ怒っているのか?」
「バカにしているの? 貴方の事なんて最初から何とも思って無いわ」
「相変わらずだなあ……」
オレは苦笑して話を続ける。
なんだか電話だと素直に話せるから不思議だ。
「クイーズ、食事が出来たわよ」
「クイーズ君は今、昔の女と会話中だよ!」
おまっ、なんて事言うの! 違わないけどっ! 違うだろ!
「だって長いよ、長過ぎるよ! ボクの事ほっぽりだしてさ!」
なにがほっぽりだしてだ! お前十分ポテチを堪能してただろ?
というか、そんなに長かったか?
ふと見ると、もう夕暮れが近い。
普段パセアラとは、面と向かって話すと一言、二言で終わるのに。
「そろそろ切るよ」
「あっ……うん。そうね、長居してしまったわね」
なんだか名残惜しそうな声が聞こえる。オレの錯覚かな?
「ま、またっ、掛けて来なさいよね! ダンディの事もっ、ちゃんと話さないといけないし……」
「おっとそうだった。ダンディに仕事回すように言うの忘れてた」
「ええっ、その為に電話したんじゃないの! 困るよ、キミィ!」
ええーい、だから擦り寄ってくるな! 顔が近いぞっ!
オレはカシュアにアイアンクローをかましながら食堂へ向かう。
「…………最近カシュアと近い」
「そうだよね、エクサリーさんとも目で分かり在っている気もするし」
「ううっ、うちらはどうせ置いてけぼり組ッスよ」
アポロ達三人娘がそんな事を言ってくる。
仕方ないだろ、今回は外交という理由があったんだし。
ちなみに戦争の方は聖皇国が裏で手を回してくれたらしく、ほとんどの国が国交の回復を望んできている。
しかしながら、ヘルクヘンセンの悪徳貴族達が逃げ込んだ国だけは、引くも進むもままならないらしく、国境で睨み合いが続いている。
「…………私も聖皇国行って見たい」
アポロがポツリと呟く。
なんでも、出来る事ならユーオリ様に直接会ってお礼を言いたいらしい。
「そうだな、今度また行く約束しているから、その時は一緒に行くか」
「えっ、……うんっ!」
アポロが満面の笑みを向けてくる。
と、その間にドンと食事を置く人物が。
「…………般若が来た」
「っ、今日はお化粧してません!」
「えっ、化粧していないから般若じゃないんスか」
ギッギッギッて、それこそ般若の顔をしたエクサリーがティニーの方へ首を回す。
ヒィ! 口が滑ったッス、般若どころか仁王様ッス! と弁解するティニー。
それ、悪くなってるぞ? お前は謝っているのか挑発しているのかどっちなんだ?
「ん、そういやロゥリはどうしたんだ? いつも食事時には戻ってくるのに」
「そういえば見かけませんね?」
「ああ、ロゥリならレベルが上がってスピードも上がったので、ちょっと遠出するとか言ってましたよ」
そうラピスが言ってくる。
遠出ねえ……他所様に迷惑を掛けていなければいいが。
竜王を倒した経験値が結構入った様で、いっきに3つも上がっていた。
そこへ、トタトタトタと足音が聞こえる。
どうやら噂のロゥリが帰ってきた模様。
「どうしたのロゥリちゃん! そんなに傷らだけで!」
そのロゥリ、ボロボロになって候。
「リュウオウノジッチャント、ケイコシテタ」
という事は、聖皇国まで行って来たのか? この短時間で?
すげーなお前。今度は乗せてって行ってくれよ。
――ガブリ!
「イダダダ! 何で噛み付くんだよ!」
「ジッチャンガイッテタ、スキガアレバイツデモカカッテコイト!」
それ言ったのじっちゃんだろ! オレじゃねえだろ!
ええい離れろ、このクソドラゴン!
「いつもほんと賑やかだねえ。おいちゃんも混ぜてくれよ」
「良いではないか、良いではないか」
竜王ニースさんのお話では、なんでもカシュアは、骸骨が人間だった頃の伴侶の魂が多少なり混ざっているそうな。
そしてそんな話を聞いた骸骨、そりゃもう、仕事をほっぽりだして毎日カシュアにスリスリしている。
「おい骸骨、パセアラから仕事が溜まっていると苦情が来ているぞ」
「良いではないか、良いではないか」
「もうそれ持って帰っていいから、仕事はちゃんとしろ」
見捨てないでよぉーーーって、オレの足に縋り付いてくるカシュア。
分かった、分かったから! ええい、オレのズボンに鼻水を擦り付けるでない。
いいから骸骨、早く仕事して来い。余計にカシュアに嫌われるぞ。
「仕方在るまい。今日のところは帰るとするか」
もう来んなバーローってアッカンベーをしているカシュア。
「さっさと終わらせて帰ってくるから待っててね。ダーリン(はあと)」
と投げキッスをしてくる骸骨。
なんか背筋に冷たいものが……オレとカシュアは思わず抱き合って震えている。
恐ろしい……深遠を垣間見てしまった感じだ。
オレはさっそくパセアラに緊急電話。少しでも多く骸骨に仕事回してくれと頼みこむ。
「あなたから掛けてくるなんて……珍しいわね」
そう言えば始めてかもしれない。
「……パセアラはまだ怒っているのか?」
「バカにしているの? 貴方の事なんて最初から何とも思って無いわ」
「相変わらずだなあ……」
オレは苦笑して話を続ける。
なんだか電話だと素直に話せるから不思議だ。
「クイーズ、食事が出来たわよ」
「クイーズ君は今、昔の女と会話中だよ!」
おまっ、なんて事言うの! 違わないけどっ! 違うだろ!
「だって長いよ、長過ぎるよ! ボクの事ほっぽりだしてさ!」
なにがほっぽりだしてだ! お前十分ポテチを堪能してただろ?
というか、そんなに長かったか?
ふと見ると、もう夕暮れが近い。
普段パセアラとは、面と向かって話すと一言、二言で終わるのに。
「そろそろ切るよ」
「あっ……うん。そうね、長居してしまったわね」
なんだか名残惜しそうな声が聞こえる。オレの錯覚かな?
「ま、またっ、掛けて来なさいよね! ダンディの事もっ、ちゃんと話さないといけないし……」
「おっとそうだった。ダンディに仕事回すように言うの忘れてた」
「ええっ、その為に電話したんじゃないの! 困るよ、キミィ!」
ええーい、だから擦り寄ってくるな! 顔が近いぞっ!
オレはカシュアにアイアンクローをかましながら食堂へ向かう。
「…………最近カシュアと近い」
「そうだよね、エクサリーさんとも目で分かり在っている気もするし」
「ううっ、うちらはどうせ置いてけぼり組ッスよ」
アポロ達三人娘がそんな事を言ってくる。
仕方ないだろ、今回は外交という理由があったんだし。
ちなみに戦争の方は聖皇国が裏で手を回してくれたらしく、ほとんどの国が国交の回復を望んできている。
しかしながら、ヘルクヘンセンの悪徳貴族達が逃げ込んだ国だけは、引くも進むもままならないらしく、国境で睨み合いが続いている。
「…………私も聖皇国行って見たい」
アポロがポツリと呟く。
なんでも、出来る事ならユーオリ様に直接会ってお礼を言いたいらしい。
「そうだな、今度また行く約束しているから、その時は一緒に行くか」
「えっ、……うんっ!」
アポロが満面の笑みを向けてくる。
と、その間にドンと食事を置く人物が。
「…………般若が来た」
「っ、今日はお化粧してません!」
「えっ、化粧していないから般若じゃないんスか」
ギッギッギッて、それこそ般若の顔をしたエクサリーがティニーの方へ首を回す。
ヒィ! 口が滑ったッス、般若どころか仁王様ッス! と弁解するティニー。
それ、悪くなってるぞ? お前は謝っているのか挑発しているのかどっちなんだ?
「ん、そういやロゥリはどうしたんだ? いつも食事時には戻ってくるのに」
「そういえば見かけませんね?」
「ああ、ロゥリならレベルが上がってスピードも上がったので、ちょっと遠出するとか言ってましたよ」
そうラピスが言ってくる。
遠出ねえ……他所様に迷惑を掛けていなければいいが。
竜王を倒した経験値が結構入った様で、いっきに3つも上がっていた。
そこへ、トタトタトタと足音が聞こえる。
どうやら噂のロゥリが帰ってきた模様。
「どうしたのロゥリちゃん! そんなに傷らだけで!」
そのロゥリ、ボロボロになって候。
「リュウオウノジッチャント、ケイコシテタ」
という事は、聖皇国まで行って来たのか? この短時間で?
すげーなお前。今度は乗せてって行ってくれよ。
――ガブリ!
「イダダダ! 何で噛み付くんだよ!」
「ジッチャンガイッテタ、スキガアレバイツデモカカッテコイト!」
それ言ったのじっちゃんだろ! オレじゃねえだろ!
ええい離れろ、このクソドラゴン!
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