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第五章

レベル86 『モンスターカード!』で、ゲットしてみたら決してボケてはいません。

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「負けるのか……この私が……」
「どんな強靭な生き物も、時の流れには、勝てはしない」
「そうか…………お前は一体何者だ? どこか懐かしい香りがする」

 骸骨が、ぐったりと横たわる竜王へと向かって行く。
 そしてその鼻面を叩く。

「数百年前、我輩が付けた傷、未だに残っていようとはな」
「なに……!? だがお前、人間はそんなに長くは生きられん! それにその姿!?」
「いや、この姿は我輩も意外だったのだがな」

 骸骨がカッカッカと笑う。

「そうか、あの時のクソ生意気な小娘か……変われば変わるものだな、ククッ」
「笑うでない。結構気にしているのだぞ?」

 その二人は、まるで往年の親友のような雰囲気で語り始める。
 骸骨の昔話はサンムーンの経緯を聞いて以来だな。
 そうこうしている内に徐々に生気を失っていく竜王。

「お前には一つ貸しが在ったよな? 今ここで返してはもらえぬだろうか?」
「聖剣の事か?」
「そうだ、この剣は我が愛しき人の物。私にはもう差し出せる物は何一つとして無い。交渉する余地も無い。だからもうお前だけが頼りなのだ」

 竜王が剣が刺さっている台座を見て一筋の涙を流す。

「人の人生は儚い。たったの30年、そうたったの30年だぞ? 共に過ごせた日々は……まさしく黄金の日々であった」

 竜王が目を瞑る。その瞑った瞳からは留め止めも無く流れ出る水分。

「目を瞑れば、今尚目の前に居るかのようだ……私は間違っていたのか? こんな剣など守ろうとはせず、彼女の後を追って……」

 そうすれば共に転生もありえたろうに。と呟く。
 この竜王は骸骨が生まれるずっと前から聖剣を守ってきた。
 この国を討ち立てた、カシュアと同じ、聖剣の担い手のスキルを持っていた人をずっと想いながら。

「若き竜よ、お前はどうする? 目の前の主無き世界を、生きていけるのか?」
「ロゥリハ、コイツシヌ、イッショダ」
「いい覚悟だ……お前が羨ましい」

 いや、ロゥリが言ったのは、モンスターカードのシステム上、仕方ない事なんですよぉ。
 オレが死ねば自動的にロゥリも死んじゃうらしいですから。

「太陽の街、サンムーンの王よ、答えを聞かせて欲しい」
「それは皮肉かな? まあ良い・」
「お待ちください」

 骸骨のセリフを遮るラピス。

「そろそろ時間もなさそうなので展開を進めさせて頂きます」
「なんの時間が無いんだよ?」
「そこの骸骨には聖剣を守っている暇なんてありませんし、このまま貴方が居なくなれば、この国は自由にその剣を扱うでしょう」

 そうしてラピスは続ける。

「聖剣は引き続きあなた自身が守ってください。そして、その手伝いを出来る手段を私達は持ち合わせています」

 なんか詐欺師みたいになってきているなあ。
 ちょっとオレ、罪悪感が……えっ、いいから早くしろって?
 何をそんなに焦っているんだ。

『モンスターカード!』

◇◆◇◆◇◆◇◆

「ちょっとラピス君、ひどいよ! ずっと救難信号送っていたのに!」
「なんかいい感じでしたから言い出し辛かったのですよ?」

 すっかり忘れていた。悪霊の事。
 竜の間に居た悪霊についてはドラゴンの威圧で吹き飛んだのだが、まだ謁見の間に残っていた残滓がある。
 で、その残滓、ダンジョンコアに取りついて凶暴化したらしい。

「お前、聖剣持っているんだろ? とっとと片付けろよ」
「無茶言わないでよ! 出来るなら最初からやってるよ!」

 ダンジョンコアからは無数の触手が伸び出している。
 カシュアは、それらから必死に皆を守っている。

「なっとらんな。聖剣の使い方をこれっぽちも理解しておらん」

 白髪の老人が抜き見の剣を構える。
 腰を低く構え、剣は後ろに向ける。
 そこから一気に、裂ぱくの気合と共に剣を振り上げる!

 その瞬間ダンジョンコアから悪霊が剥がれる。
 するとその老人、ダンジョンコアを飛び越えその悪霊に斬りかかる。
 地面に着地と同時、悪霊が断末魔の悲鳴と共に掻き消えるのであった。

 そう、なにを隠そうこの老人こそが、オレがゲットした11番目のモンスター、竜王・ニースであった。

 その手に有る物は竜の間にあった聖剣。
 あの台座に刺さっていた剣である。
 そうこのお方、聖剣を扱える。聖剣の担い手のスキルを持っていた。

 なんと! さすがは竜王、レアリティは☆10! ドラスレと同じ最高レベルのレアである。
 スキルも3つもある!
 まずは先ほど言った聖剣の担い手。
 そして、

「あ、あの、あなたは……」
「おっと失礼、この姿では分かりかねますな」

 ユーオリ様の手を取っている老紳士。一言呟くと巨大な竜へと姿を変える。
 二つ目のスキル、竜化だ。
 こいつは他の奴と違って擬態で人間になるのではなく、元々が人間タイプで、竜に変身する事が出来る。という仕様らしい。仕様じゃ仕方ないよね?

「し、神獣様……!?」

 また人間の姿に戻りユーオリ様の手を取る。
 そして最後のスキルだが、

「永らく、本当に永らく待たせてしまいましたな。ヘルクォース様」
「えっ、ヘルクォース様? それは始祖様の名ですよね? 私はユーオリですが」

 輪廻転生。えっ、何ガって? 最後のスキルだよ。
 この竜王の最後のスキル、輪廻転生だって。

『竜王・ニース』
 ☆10・レベル1
 スキル:聖剣の担い手、竜化、輪廻転生
 備考:全属性特効(小)

 モンスターカードで居るうちは死にはしない。なのに輪廻転生。超無駄スキル。
 だと思っていたのだが……

「私には視える! そなたこそが始祖ヘルクォース様の生まれ変わりであると! 結婚してください!」

 ……どうやら他人の生まれ変わりが分かる模様。
 そしてそんな事を言われたユーオリ様、ドン引きでござる。

「ユーオリ! 無事か!」
「あなた!?」

 そこへ駆けつけるイケメン一人。

「おかあちゃま!」

 幼女も一人。
 あっ、竜王の顔がガビーンってなっているぞ。ちょっと面白くなってきた。
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