上 下
85 / 279
第五章

レベル85

しおりを挟む
 調子に乗って細切れにして行く、エロゥリ。
 正気を取り戻していく騎士達。

「下がっていてください。奴に迂闊に近づくと操られます」
「う、ウム……尊い……」

 騎士様、エロドラゴンの姿に目を奪われているご様子。
 まあ、神殿と言うと禁欲生活が長いのだろう。
 だからって拝むのはどうかと?

「久しぶりだな、目の前であんな事が起きているのに知らん振りかね。竜王ニースよ」
「その名で私の名を呼ぶお前は何者だ? ふんっ、人間達の小競り合いなど、私の関知する事ではない」

 骸骨はニヤリと笑って、誰だか当ててみたまえ。と言って続ける。

「随分力を無くしたな。その様子ではここを守るだけで精一杯という所か」

 お前が何者であろうと興味がない。と言って目を閉じる、庭園の中央に居る巨大なドラゴン。
 その背後には一本の剣が刺さった台座が在る。
 アレがこの国の聖剣なのだろうか。
 そんなドラゴンに悪そうな笑みで答える骸骨。

「聖剣の担い手が現れたぞ。お前の愛しの聖剣が抜かれる時がきたようだな」

 その瞬間だった!
 突如ドラゴンから威圧の様な物が放たれる。
 思わず吹き飛びそうになった所を骸骨に抱きとめられる。
 おまっ、やめろよ! 変なとこ触るなよ!

「ちょっとぐらいいいでしょ?」
「良くねえよ!」

 なお、ボロボロになった悪霊も吹き飛ばされた模様。壁にベチャッと染みを作っている。
 エロドラゴンが威圧の元凶を見て唸っている。

「私の聖剣は誰にも渡さぬ!」

 そう言って首をもたげるドラゴン。

「なんでお前、怒らせるような事言うんだよ?」
「こうでもしないと張り合いがないであろう?」
「いらねえよ! そんな張り合い!」

 骸骨が両手を広げてさらに挑発する。

「力無く、死を待つだけの貴様に何が出来る? お前が死ねば、現物は持ち去られ、残るはレプリカのみ。良くある話であろう」
「我は死なぬ! この剣は誰にも触れさせぬ」
「それはどうかな? 目の前に居る若き竜が目に入らぬ訳では在るまい。今の貴様に彼女を御しきれるかな?」

 ドラゴンがロゥリを睨み付ける。
 そしてロゥリはその殺気を感じ、すっかりその気になってしまっている。
 骸骨の奴、わざと挑発してロゥリとドラゴンを戦わせようとしているな。

 ドラゴンが地面を前足で叩く。その瞬間、そこを中心として地面が凍り始める!
 骸骨はオレを抱え、ラピスは高く跳躍して、それを交わす。
 しかし、ロゥリと騎士達は足を凍りつかせて動けなくなってしまう。

「な、なぜ神獣様が我々を攻撃なさるのか!?」

 すいませんねえ、うちの骸骨が怒らせちゃったようなんですわ。
 そして動けなくなったロゥリに向かって炎の塊が飛んでく。
 だがロゥリ、それを剣で真っ二つ。ほんとに良く切れるな、あのドラスレ。
 そのまま力ずくで凍った地面から足を引き抜き走り出すロゥリ。

 トンとドラゴンの頭上を越える高さに跳ね上がったロゥリはそのままドラスレで斬りかかる。
 それを地面から伸びた巨大な蔦が抱き止める。

「あのドラゴン凄いな、全属性の魔法を使えるのか?」
「竜には基本それぞれ属性、と言うものがありましてな。しかしながらそれを無視出来る存在が僅かでも居ましてね。古代の人はそういった竜をこう呼びました。竜王と」

 その竜王が呼び出した蔦がロゥリに巻きつていく。
 全身を蔦に巻き込まれ姿が埋まっていく。
 竜王がその蔦を地面に叩きつけようと大きく掲げた瞬間! 蔦から光が漏れ出す!

 バンッ! という大きな音と共に弾けとぶ蔦。
 その後に居たのは巨大な一匹の白竜! ロゥリの本来の姿であった。
 竜に変身したロゥリは、そのまま重力に従って竜王を押さえつけ首に噛み付く。
 竜王も負けじとロゥリの肩に食いつく。

 ロゥリはそれを物ともせず首を引きちぎろうとする。
 だが、ロゥリと竜王の間で幾つかの爆発が発生した!
 それに吹き飛ばされるロゥリ。竜王も無事では澄まず、あちこちから血を流している。

「中々やるではないか竜王よ! 自らの犠牲をも顧みずか! しかしそれで良いのかな? 随分とダメージを食らったようだが」
「ハァっ、はぁっ、私は退かぬ! 何が在ろうともこれだけは退く訳にはいかんのだ!」

 ロゥリが元のドラゴンナイトの姿に戻る。そしてドラスレを杖に立ち上がる。

「変わりますか?」

 ラピスがそう問いかけるが、首を振るロゥリ。
 ロゥリが走る、無数に襲い掛かるドラゴンの魔法。
 それを斬り、避け、打ち返し、遂に竜王の懐に辿り着く。

 そしてロゥリは、深々と竜の心臓に向けてドラゴンスレイヤーを突き立てるのであった。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~

白金ひよこ
恋愛
 熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!  しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!  物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

このやってられない世界で

みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。 悪役令嬢・キーラになったらしいけど、 そのフラグは初っ端に折れてしまった。 主人公のヒロインをそっちのけの、 よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、 王子様に捕まってしまったキーラは 楽しく生き残ることができるのか。

処理中です...