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第五章

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 なんだかんだと言って、意外と快適だった空の旅。
 飛行機と違って壁が無い。即ち景色が見放題だ! 高所恐怖症の人だと死ぬなコレ……
 なにか魔法でも掛かっているのだろうか、風圧もなく、温度も一定に保たれている。

 あと姫様、やあらかいし……おっと、エクサリーには内緒な!

「空を飛ぶ気持ちよさを覚えたら病み付きになるな!」
「そうですね!」

 オレもグリフォン欲しいなあ。でもこの人の前では絶対に言えない。

「ところでこのグリフォン、名前はなんと名付けたのです?」
「ああ、カイザーと名付けた! どうだ、かっこいいだろう!」
「へえ……」

 なあお前、オスだっけ? オレ確か、飼育係さんからメスって聞いたんだが?
 えっ、もう諦めてる? もっと頑張ろうぜ。
 なんだったらオレが言ってやろうか? えっ、なんだかんだで気にいっている? なんだ似たもの同士だな。

 うぉおお! 揺らすなよ! 落ちるだろがっ!

 しかしスピードはさほどではなく、ヘルクヘンセンに着いた時には夕方となっていた。
 さすがにスピードなら飛竜が数倍上だな。
 グリフォンさんもバテバテのご様子。

「姫様、長距離はグリフォンには辛いので無いですか?」
「ふむ、そうならそうと最初に言えば良いのにな!」

 自分、しゃべれませんがな。みたいな目で姫様を見やるグリフォン。

「君! 遅いよ! 遅すぎるよ! ちょっと離れてよっ!」

 カシュアの奴が骸骨にハグされて涙目になっている。
 あれ? なんでエクサリーがここに?
 いやっ、自分、浮気なんてしてないッス! 信じて欲しいッス!
 えっ、信じてる? ほんとに? だって目付きが暗殺者みたいッスよ?

「暗殺なんかしない」

 それよりなんでエクサリーが居るの? カユサルまで居るし。

「カユサル殿には外交官として聖皇国へ向かってもらう」

 骸骨の話では、今回の趣旨は聖皇国へ戦争の仲裁を頼みに行くという体を取るらしい。
 ピクサスレーンの代表はカユサルが、ヘルクヘンセンの代表がオレになるとの事。

「仲裁なんてしてくれるのか?」
「お土産次第でございましょうな」

 おみやげねえ……それとエクサリーは?

「聖皇国の皇帝は珍しいものが好きでな、主のバンド? と言うものを披露して気を引くつもりである」
「ええっ!?」
「師匠の音楽を聞けば必ず食いついてきます!」

 いやいやそんな、危ないだろ?
 万が一奴らが、ええ~い出合え、出合え。みたいな展開になったらどうするのよ?
 なんたって裏で手を引いているボスかもしれないんだろ。

「と、申されておりますが、どうされますかな?」
「クイーズ……私もあなたの役に立ちたい」
「うっ……」

 卑怯だぞ骸骨!
 骸骨は、そ知らぬ顔で、然り、然り。と笑う。

「しかし骸骨、その皇帝がうちのエクサリーを見初めたらどうしてくれる」

 なにせエクサリーの歌声は天使の歌声。
 あの歌声を聞いて惚れない奴は居ない!

「いやさすがにあの顔じゃなあ……」

 おい、どういう意味だカユサル!
 エクサリーだって化粧したら化けるんだぞ!
 その気になったら般若にだってなるんだぞ? えっ、悪くなってる?
 いやだって、あのエクサリーさんをその他大勢に見せる訳にはいかないし。
 いやでも、多くの人に見てもらいたくも有るし……

「お坊ちゃま、万が一の時はロゥリがエクサリーを連れて逃げる。というのはどうでしょうか?」
「ガウガウ、マカセロ!」

 ふうむ、ロゥリなら大丈夫か?
 変身後の面積が無視出来るようになり、そこそこ大き目のドラゴンにも変身できる。

「そうだな……ラピス、カシュアの二人が居れば急襲も予測出来るか……骸骨の腕もそこそこあるしな」
「いや、我輩はここを動くことが出来ん。小競り合いは続いておるでな」
「ん? 今回、聖皇国に行くメンバーはどうなっているんだ」

 オレとエクサリー。
 ラピスにカシュア。そしてロゥリ。
 あとカユサルと……後ろに居るゴシックなご婦人。

「この姿では、始めましてでよろしいでしょうか? 主様」
「グランドピアノさん……だよな?」
「はい、カユサル様よりセレナーデという名を頂きました」

 いい名だな。
 どっかの誰かとは大違いだぜ。誰とは言わない。
 あと、あのピアノの面積なら随分な巨人にならないか聞いた所、ピアノの一部分のみを人化させているんだと。
 残りは別便でコッチに来ているらしい。

「姫様はどうするんだ? 態々ここまで送ってくれただけ?」
「いや、私はこれから前線に向かう! ピクサスレーンの部隊を投入し、一気に方を付けるつもりだ!」

 いや付けちゃダメでしょ? なんの為にオレ達が聖皇国に向かうの?

「とりあえず出張ってきている部隊だけでも押し返しておこうと思いましてな」

 骸骨、大丈夫か? その姫様、人の言う事聞かないぞ?
 あと、グリフォンが慌てだしている。
 えっ、戦闘なんてした事ないからムリ? 確かにお前、ペット枠で育てられているからなぁ。

「姫様、このグリフォン、戦闘には向いていないようですが?」
「大丈夫だ! この私が居る限り、指一本触れさせはせん!」

 大丈夫らしいよ? そんな訳無いだろって? いや、オレに言われてもな。
 そうだお前、オレのカードで無敵にしてやろうか?
 コレコレ、これよ。えっ、うさんくさい? そんな事言うなよぉ。

「なんかお坊ちゃま、普通にグリフォンと会話しているようですが、気のせいでしょうか?」
「別に主が何と話をしていようが不思議ではない。天啓とはそういうものだ」
「お坊ちゃまのスキル、天啓じゃないんですけど?」
「ハハッ、名前が天啓と違うだけだろう、あれはもう立派な天啓と同じ性質である。この世界を変え、この世界を弄る。そうそれこそが天啓の本質なのだ」
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