80 / 279
第五章
レベル80 堕ちたグリフォン
しおりを挟む
「さて、今後の予定でありますが」
そう言いながら骸骨が3本の指を立てる。
「ひとつ、貴族共が逃げ込んだ国を完膚無きまでに叩き潰す」
そうする事により他の同盟国への牽制となり、次に同じ事をすればこうなるぞ、っていう見せしめにもなる。
これが一番手っ取り早くて、後腐れがないんだと。
これで後腐れがないとか他は一体どうなんだよ?
「ふたつ、全方位に向けて一斉侵攻を開始する」
主に今回ヘルクヘンセンを打ち倒した方法を用いる。
行き着く先は大陸の覇者しかありえない。なんて恐ろしい事を言う。
随分自信があるようだが、現実的に可能なのか? えっ、容易い? だったらおめえ、なんで骸骨になる前にそれをしなかったんだよ。
「我輩の目的は人類の領地拡大でありましたからな。それに、理想とする技術も随分と足りなかった。しかし我輩とラピス殿の力を合わせれば、今なら容易な事かと思われる」
しかも今の我輩は不老不死であると言える。
どんなスキルを持って我輩を屠ろうとも、何度でも蘇り、障害はいずれ全て取り除かれるであろう。
と言いながら、酒杯を高々と持ち上げる。まるで魔王のセリフだな。
「もっと穏便な方法はないのか?」
「ふうむ、みっつめでありますが、長い目で見れば一番犠牲が多くなりますぞ」
その方法は、専守防衛。
戦わずして守りに徹する。
侵攻する技術が有るのだから、当然守る技術だって有る。
しかしながらそれは、この先ずっと戦時状態が持続されるという意味でも有る。
「小さな小競り合いでも、数が増えれば大戦並みの犠牲となる」
憎しみもまた、積み重なるがごとし。
「さっさと勝負を付けたほうが、翻って犠牲は少なくなると言う訳か……」
と、突然ラピスが机の上にバサァっと地図を広げる。
「ならば、このラピスが4つ目の提案を差し上げます」
そうして地図の一点を指差す。それは、この大陸でも一番広大な土地を持つ、聖皇国と呼ばれる場所。
「どうせ裏で手を引いているのはこの国でしょう。そうであるのならば、この国を先に落としましょう」
その国は、今回同盟を組んで攻め込んできた国々の宗主的立場にあるらしい。
ここを先に抑えてしまえば、小さな国々は言う事を聞かざるは負えない。
自分だけ手を汚さずに漁夫の利を得ようなど、このラピスが許しません。なんて言っている。
「出来るかダンディ」
「さすがにそんな離れた所を急には……ラピス殿、何か考えがありもうすか?」
今度は一冊の本を棚から取りだしパラパラとめくるラピス。
そして、とあるページを開き机の上にバンと置く。
「この国では、神獣と言われる存在がおります。尊き獣として崇められて居るそうですよ」
それをどうしようと? あっ、なんか嫌な予感がしてきた。
「もらっちゃいましょうよ、その神獣。お坊ちゃまのモンスターカードで」
ソレを聞いて骸骨がニヤリと笑う。
「なるほど、なるほど。その神獣を我らのモノとすれば、その国は我らの言いなりになる」
「いい案でしょう」
「神獣は不老不死となる代わりに、主が死ねば喪失してしまう」
骸骨の笑顔がどんどん邪悪になって行く。
コイツがこんな顔をしだした時は禄でもない事になる気がする。
いやしかし、その神獣を捕らえるとかどうやって……?
「実はこの神獣、随分年をとっているのですよね。今じゃ寝たきりでまともに起きられない状態」
最初からヒットポイントは減っていると?
「数千年の時を生きた伝説のエンシェントドラゴン。全盛期は、人々を支配下に置き、巨大な帝国を作り上げたという」
「そんな奴ゲットして大丈夫なのか? 骸骨より手に負えないんじゃないか」
「我輩は会った事があるぞ。人間を支配どころか、すっかり利用されるだけの愛玩動物に成り下がっておったわ」
どうやったら会えるんだその神獣。えっ、任しておけって? 任して大丈夫なのだろうか……
「クイーズ! 待たせたな、ヘルクヘンセンのダンディからお前を連れて来いとの伝言だ!」
それから暫くしたある日の事、店の前に巨大なグリフォンが舞い降りる。
ああ姫様、乗れるようになったんですね。
しかしそのグリフォン、なにやら、やつれているような気がする。
どうしたグリフォン! お前の力はその程度じゃないだろ! もっと頑張れよ!
えっ、次はお前の番だ。だって? いやいや……マジで!?
おい、まだまだやれるだろ! えっ、ムリ? そんな事言わずに! ねえ!
グリフォンが首を左右にブルブルと振る。
「さあクイーズ、後ろに乗ると良い!」
「えっ!?」
姫様の影がオレを捕らえる。
グリフォンの奴がなんか哀れみの瞳で見てきている。
おい! 二人乗りなんてムリだろ!? ちゃんと拒否しろよ!
えっ、何言っても無駄だからあきらめろ? って。マジですか……
そう言いながら骸骨が3本の指を立てる。
「ひとつ、貴族共が逃げ込んだ国を完膚無きまでに叩き潰す」
そうする事により他の同盟国への牽制となり、次に同じ事をすればこうなるぞ、っていう見せしめにもなる。
これが一番手っ取り早くて、後腐れがないんだと。
これで後腐れがないとか他は一体どうなんだよ?
「ふたつ、全方位に向けて一斉侵攻を開始する」
主に今回ヘルクヘンセンを打ち倒した方法を用いる。
行き着く先は大陸の覇者しかありえない。なんて恐ろしい事を言う。
随分自信があるようだが、現実的に可能なのか? えっ、容易い? だったらおめえ、なんで骸骨になる前にそれをしなかったんだよ。
「我輩の目的は人類の領地拡大でありましたからな。それに、理想とする技術も随分と足りなかった。しかし我輩とラピス殿の力を合わせれば、今なら容易な事かと思われる」
しかも今の我輩は不老不死であると言える。
どんなスキルを持って我輩を屠ろうとも、何度でも蘇り、障害はいずれ全て取り除かれるであろう。
と言いながら、酒杯を高々と持ち上げる。まるで魔王のセリフだな。
「もっと穏便な方法はないのか?」
「ふうむ、みっつめでありますが、長い目で見れば一番犠牲が多くなりますぞ」
その方法は、専守防衛。
戦わずして守りに徹する。
侵攻する技術が有るのだから、当然守る技術だって有る。
しかしながらそれは、この先ずっと戦時状態が持続されるという意味でも有る。
「小さな小競り合いでも、数が増えれば大戦並みの犠牲となる」
憎しみもまた、積み重なるがごとし。
「さっさと勝負を付けたほうが、翻って犠牲は少なくなると言う訳か……」
と、突然ラピスが机の上にバサァっと地図を広げる。
「ならば、このラピスが4つ目の提案を差し上げます」
そうして地図の一点を指差す。それは、この大陸でも一番広大な土地を持つ、聖皇国と呼ばれる場所。
「どうせ裏で手を引いているのはこの国でしょう。そうであるのならば、この国を先に落としましょう」
その国は、今回同盟を組んで攻め込んできた国々の宗主的立場にあるらしい。
ここを先に抑えてしまえば、小さな国々は言う事を聞かざるは負えない。
自分だけ手を汚さずに漁夫の利を得ようなど、このラピスが許しません。なんて言っている。
「出来るかダンディ」
「さすがにそんな離れた所を急には……ラピス殿、何か考えがありもうすか?」
今度は一冊の本を棚から取りだしパラパラとめくるラピス。
そして、とあるページを開き机の上にバンと置く。
「この国では、神獣と言われる存在がおります。尊き獣として崇められて居るそうですよ」
それをどうしようと? あっ、なんか嫌な予感がしてきた。
「もらっちゃいましょうよ、その神獣。お坊ちゃまのモンスターカードで」
ソレを聞いて骸骨がニヤリと笑う。
「なるほど、なるほど。その神獣を我らのモノとすれば、その国は我らの言いなりになる」
「いい案でしょう」
「神獣は不老不死となる代わりに、主が死ねば喪失してしまう」
骸骨の笑顔がどんどん邪悪になって行く。
コイツがこんな顔をしだした時は禄でもない事になる気がする。
いやしかし、その神獣を捕らえるとかどうやって……?
「実はこの神獣、随分年をとっているのですよね。今じゃ寝たきりでまともに起きられない状態」
最初からヒットポイントは減っていると?
「数千年の時を生きた伝説のエンシェントドラゴン。全盛期は、人々を支配下に置き、巨大な帝国を作り上げたという」
「そんな奴ゲットして大丈夫なのか? 骸骨より手に負えないんじゃないか」
「我輩は会った事があるぞ。人間を支配どころか、すっかり利用されるだけの愛玩動物に成り下がっておったわ」
どうやったら会えるんだその神獣。えっ、任しておけって? 任して大丈夫なのだろうか……
「クイーズ! 待たせたな、ヘルクヘンセンのダンディからお前を連れて来いとの伝言だ!」
それから暫くしたある日の事、店の前に巨大なグリフォンが舞い降りる。
ああ姫様、乗れるようになったんですね。
しかしそのグリフォン、なにやら、やつれているような気がする。
どうしたグリフォン! お前の力はその程度じゃないだろ! もっと頑張れよ!
えっ、次はお前の番だ。だって? いやいや……マジで!?
おい、まだまだやれるだろ! えっ、ムリ? そんな事言わずに! ねえ!
グリフォンが首を左右にブルブルと振る。
「さあクイーズ、後ろに乗ると良い!」
「えっ!?」
姫様の影がオレを捕らえる。
グリフォンの奴がなんか哀れみの瞳で見てきている。
おい! 二人乗りなんてムリだろ!? ちゃんと拒否しろよ!
えっ、何言っても無駄だからあきらめろ? って。マジですか……
0
お気に入りに追加
388
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~
イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」
どごおおおぉっ!!
5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略)
ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。
…だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。
それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。
泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ…
旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは?
更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!?
ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか?
困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語!
※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください…
※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください…
※小説家になろう様でも掲載しております
※イラストは湶リク様に描いていただきました
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる