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第五章

レベル80 堕ちたグリフォン

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「さて、今後の予定でありますが」

 そう言いながら骸骨が3本の指を立てる。

「ひとつ、貴族共が逃げ込んだ国を完膚無きまでに叩き潰す」

 そうする事により他の同盟国への牽制となり、次に同じ事をすればこうなるぞ、っていう見せしめにもなる。
 これが一番手っ取り早くて、後腐れがないんだと。
 これで後腐れがないとか他は一体どうなんだよ?

「ふたつ、全方位に向けて一斉侵攻を開始する」

 主に今回ヘルクヘンセンを打ち倒した方法を用いる。
 行き着く先は大陸の覇者しかありえない。なんて恐ろしい事を言う。
 随分自信があるようだが、現実的に可能なのか? えっ、容易い? だったらおめえ、なんで骸骨になる前にそれをしなかったんだよ。

「我輩の目的は人類の領地拡大でありましたからな。それに、理想とする技術も随分と足りなかった。しかし我輩とラピス殿の力を合わせれば、今なら容易な事かと思われる」

 しかも今の我輩は不老不死であると言える。
 どんなスキルを持って我輩を屠ろうとも、何度でも蘇り、障害はいずれ全て取り除かれるであろう。
 と言いながら、酒杯を高々と持ち上げる。まるで魔王のセリフだな。

「もっと穏便な方法はないのか?」
「ふうむ、みっつめでありますが、長い目で見れば一番犠牲が多くなりますぞ」

 その方法は、専守防衛。
 戦わずして守りに徹する。
 侵攻する技術が有るのだから、当然守る技術だって有る。
 しかしながらそれは、この先ずっと戦時状態が持続されるという意味でも有る。

「小さな小競り合いでも、数が増えれば大戦並みの犠牲となる」

 憎しみもまた、積み重なるがごとし。

「さっさと勝負を付けたほうが、翻って犠牲は少なくなると言う訳か……」

 と、突然ラピスが机の上にバサァっと地図を広げる。

「ならば、このラピスが4つ目の提案を差し上げます」

 そうして地図の一点を指差す。それは、この大陸でも一番広大な土地を持つ、聖皇国と呼ばれる場所。

「どうせ裏で手を引いているのはこの国でしょう。そうであるのならば、この国を先に落としましょう」

 その国は、今回同盟を組んで攻め込んできた国々の宗主的立場にあるらしい。
 ここを先に抑えてしまえば、小さな国々は言う事を聞かざるは負えない。
 自分だけ手を汚さずに漁夫の利を得ようなど、このラピスが許しません。なんて言っている。

「出来るかダンディ」
「さすがにそんな離れた所を急には……ラピス殿、何か考えがありもうすか?」

 今度は一冊の本を棚から取りだしパラパラとめくるラピス。
 そして、とあるページを開き机の上にバンと置く。

「この国では、神獣と言われる存在がおります。尊き獣として崇められて居るそうですよ」

 それをどうしようと? あっ、なんか嫌な予感がしてきた。

「もらっちゃいましょうよ、その神獣。お坊ちゃまのモンスターカードで」

 ソレを聞いて骸骨がニヤリと笑う。

「なるほど、なるほど。その神獣を我らのモノとすれば、その国は我らの言いなりになる」
「いい案でしょう」
「神獣は不老不死となる代わりに、主が死ねば喪失してしまう」

 骸骨の笑顔がどんどん邪悪になって行く。
 コイツがこんな顔をしだした時は禄でもない事になる気がする。
 いやしかし、その神獣を捕らえるとかどうやって……?

「実はこの神獣、随分年をとっているのですよね。今じゃ寝たきりでまともに起きられない状態」

 最初からヒットポイントは減っていると?

「数千年の時を生きた伝説のエンシェントドラゴン。全盛期は、人々を支配下に置き、巨大な帝国を作り上げたという」
「そんな奴ゲットして大丈夫なのか? 骸骨より手に負えないんじゃないか」
「我輩は会った事があるぞ。人間を支配どころか、すっかり利用されるだけの愛玩動物に成り下がっておったわ」

 どうやったら会えるんだその神獣。えっ、任しておけって? 任して大丈夫なのだろうか……

「クイーズ! 待たせたな、ヘルクヘンセンのダンディからお前を連れて来いとの伝言だ!」

 それから暫くしたある日の事、店の前に巨大なグリフォンが舞い降りる。
 ああ姫様、乗れるようになったんですね。
 しかしそのグリフォン、なにやら、やつれているような気がする。

 どうしたグリフォン! お前の力はその程度じゃないだろ! もっと頑張れよ!
 えっ、次はお前の番だ。だって? いやいや……マジで!?
 おい、まだまだやれるだろ! えっ、ムリ? そんな事言わずに! ねえ!

 グリフォンが首を左右にブルブルと振る。

「さあクイーズ、後ろに乗ると良い!」
「えっ!?」

 姫様の影がオレを捕らえる。
 グリフォンの奴がなんか哀れみの瞳で見てきている。
 おい! 二人乗りなんてムリだろ!? ちゃんと拒否しろよ!

 えっ、何言っても無駄だからあきらめろ? って。マジですか……
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