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第三章

レベル53

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「ハヒー、ハヒー、」
「そっち5体行きましたよ」
「多すぎだよ! せめて3体づつにしてよ!」

 オレが2体受け持つから、ほら頑張れ。

「まったく、子孫にこんな大変な事を押し付けるなんて、ボクは始祖をぶん殴ってやりたいよ!」

 そう言いながら一体のゾンビを片付けた瞬間、突如カシュアの体が光に包まれる。
 どうやら20レベルに到達した模様。かなり早かったな。
 今回は、ダンジョンコアが活動を再開しているのか、凄い勢いでアンデッドが襲ってきた。
 その分経験値の上がりも良かったらしい。

 オレの目の前にも、カシュアのカードが浮かび上がり光が集っていく。
 そしてその光が弾け飛んだ後、そこには、随分立派になったカシュアが佇んでいた。

 大きく胸の開いたドレスに、きわどいスリット。それをプラチナの様な鎧が包む。
 なにより変わったのが装備品。
 丸い盾と片手剣の、ちょっと貧弱な戦乙女風の装備だったのが、巨大な盾を背中にしょって、さらにその盾に大剣が刺さっている。

 あれかな? ボーナスポイントを防御重視に振っていたから盾が進化したのかもしれない。

「えっ、この剣、どうやって抜くの?」
「盾の横に溝があります。スライドさせて取りだすようですね」
「なるほど、うわっ、ながっ、って、なんかキラキラしてるんだけど」

 盾から切り離した大剣は、剣自身が星の煌きのように光が瞬いている。
 振ると光の軌跡の様なものが残る。

「長期間、ジッと見ていると目が痛くなりそうですねぇ」
「しかし、豪勢だなあ。おっ、それ聖剣らしいぞ」

 カードの裏面を見ると、スキル欄に聖剣の担い手っていうのが追加されている。
 未来予見もちょっと変わっていて、未来予見+となっている。

「スキルもなんか強化されてるっぽいぞ」
「ふむ? あっ、今までより早く、長い時間を見ることが出来るようになっているね!」

 そしてもちろん、備考欄にはモンスターカード+1の文字が!
 よしっ! これで『2枚』の無地カードをゲットだぜ!
 そうなのだ、途中1枚カードが増えていたのだ。
 どうやら合計レベルが60でもカードが増えた模様。

「なんか強そうなアンデッドでも持って帰るか?」
「そうですね、ビックフットに1枚使うとしても、もう1枚はここで使ってしまうのも手ですね」

 そんな事を考えていたのが悪かったのか、そこへとんでもないモノが現れる。

「……カシュア、先ほどぶん殴ってやりたいとか言ってましたよね? ほら、チャンスですよ?」
「えっ……? マジで? イヤイヤイヤ、ムリムリムリ!」
「お前が変なフラグなんて立てるから」
「ボクの所為なの!?」

 中央のお城から桟橋が降りたかと思ったら、そこから骨骨ロックな大名行列がゾロゾロと出て来ている。
 その中央には、頭に王冠を載せた、いつぞやの骸骨が御輿に揺られていた。

「ちょっとばかり派手にやりすぎましたかね?」
「あらかた街の住民は片付けちまったからなあ、むしろ遅すぎるぐらいじゃないか?」

 三人娘は未だよく理解していないようで、武器を構えて静観している。

「今のオレ達で勝てると思うか?」
「どうでしょうかね……少なくとも今の私では太刀打ち出来ません。カシュアの20レベルっていうのがどれくらいかに係ります」
「そんな博打は打てないな」

 撤退しようと後ろを見るがゾンビの塊が道を塞いでしまっている。
 ここぞとばかりに退路を絶ってきているようだ。
 ダンジョンコアも元通りになっていて、以前のように地形を壊して進めない。

「アポロ達は後方のゾンビをお願いします! カシュア、私と共に足止め行ますよ!」
「う、うむ! 任せてくれたまえ!」

 三人娘もさすがにヤバイって気づいたらしく、大急ぎで後方のゾンビに攻撃を加える。
 ラピスは一足先に、迫り来る骸骨戦士の頭を足場に王様骸骨へと飛び掛る。
 しかしそれは振り上げた剣によって受け止められた。

 だがラピス、さらに骸骨戦士の頭を足場に次々と攻撃を仕掛ける。
 なるほど、空中戦に持ち込んだのか。
 あれなら王様骸骨の得意とする足を封じられる。

 そしてカシュアが骸骨戦士の元に辿り突き、聖剣を振るった時にそれは起こった。

 思いっきり振るったカシュアの剣が当たった骸骨達を粉砕する。
 に、留まらず、剣の届いて居ない場所まで波の様に粉々になって光の粒となって行く骸骨戦士。

「えっ……、何が起こったの?」

 たった一振りで数十という骸骨戦士が昇天した。
 その性能にカシュアは唖然とした声を出す。
 聖剣か……アンデッドを大量に昇天させた事によるボーナスアイテムかもしれない。
 こりゃいい物をゲットしたぜ!

「いいぞカシュア、もっとやれ!」
「は、ハハハハ、とんでもない武器を手に入れたかもしれない。なんだかちょっと怖いくらいだ!」

 さすがのカシュアもちょっと引き攣っている。
 アンデッド特効付きの聖剣……アレ、オレも使えないかな? いやでも、聖剣の担い手のスキルがないと無理かもしれない。後で貸してもらおう。
 それを見た王様骸骨、すぐに撤退の指示を出したようだ。

 ワラワラと王城に逃げ帰っていく骸骨達。

「待ちたまえ! ボクのこの聖剣を持って、君達を空に還してしんぜよう!」

 カシュアが骸骨達を追いかけて行こうとする。
 おいラピス。ちょっとそこのバカ、止めてくれないか?

「別に止める必要はないのでは?」
「どんなに秀でた戦艦でも一機だけでは集中砲火で一瞬だ。まずはこっちを片付けてからどうするか考える」

 敵のホームグラウンドに無策で突っ込むほどバカな事はない。

「そうですね……カシュア、貴方が還すべき相手はそっちよりこちらが先でしょう。彼らは自業自得、ですが、民衆は唯巻き込まれただけなのですから」

 そう言って後方の町並みからワラワラと沸いてくるアンデッドを指差すラピス。

「うむ、それもそうだったね! 願わくば、来世に良き日々が訪れんことを!」

 そう言って、集まってきたゾンビ達を次々と光の粒子へと変えていく。
 不思議な事に、街のあちこちから沸いてくるゾンビ達は、攻撃するそぶりも見せず、ただカシュアの前に集ってくる。
 それはまるで、自ら成仏を願って集って来ているかのようだ。
 カシュアはそんなゾンビ達に向かってただひたすら、宮廷の風送り師がごとき、ブンブンと剣を振り回すのだった。
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