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第三章

レベル51 ☆

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 えっ、いやあ、そのですね……姫様が勝手にですね……なんでも戦争が始まるそうでして……

「戦争と婚約と何の関係がある?」
「えーと実はオレ、その敵対している国の貴族だったんですよ」

 オレは、アポロ達にバレないかヒヤヒヤしながら語る。

「なるほどな、侵略後の国を治めるのにお前を利用しようとしている訳か……しっかし、戦う前から勝った気でいるのかその姫様」

 ええ、そりゃもう自信家なお方で。

「まあ、だったらそれほど難しく考えなくてもいいか。第一条件が他国の侵略なら現実味が無い上に、当分先の話になるだろう。その前においちゃんの娘と式を上げてしまえ」
「ウィッス!」
「でも姫様に、うちらの店が睨まれないッスかね?」

 む、それはまずいな。
 いっそのこと別の国で店を開きなおすとか?

「その姫様となんかあったのか?」

 なんかって? えっ、色恋沙汰? いや、ないッス。そんな雰囲気には一度もならなかったッス。

「じゃあ大丈夫だろ。そんなの別にクイーズじゃなくても代理はいくらでもいる」
「そうッスか。しかしこの時期に攻めて来るって言ったらやっぱあそこッスかね。で、クイーズさんは王様の代わりになれるぐらいの高位の貴族と。ん? なんか引っかかるような……」

 おっと、それ以上はまずい。
 ちょっとちょっとティニーさん、お話があるのであっちに行きましょう。

「ええっ、クイーズさんがあのバカな貴族の長男だってぇええ!」
「シッ、バカおめえ、声がでけぇえ!」
「モゴゴモモ・・」

 アポロとサヤラは両親が直接被害を被っているが、ティニーにおいては普通の使用人だったらしく、両親もいない孤児だったらしい。
 なので、まずはティニーにと打ち明けて見たのだが……

「領主様はうちにとって恩人ッスよ! 行く当ての無いうちを拾って雇ってくれた」
「正直すまんかったあ!」
「ちょっ、土下座なんてやめてくださいッス! クイーズさんほんとに貴族だったんスか?」

 またいつもの冗談でしょ? って言ってくる。
 誠に残念ながら本当の事だったりする。

「マジで?」
「マジマジ」
「いやでも貴族が土下座なんてしないっしょ。あいつら、たとえ自分が悪くっても、ふんぞり返っているッスよ」
「ほんとに冗談だったら良かったんだがなあ……」

 まあうちの主人はアポロ一人だし。
 領主様達からは奴隷同然に扱われていて、正直、ザマアと思わなかったこともない。
 なんて事を言っている。

 おまっ、さっきと言ってる事が違うぞ!

「それでもアポロの悲しい顔見るのはつらいッスよ」
「正直すまんかったあ!」
「だから土下座はやめて欲しいッス!」

 どどど、どうしよう。
 やっぱり、アポロとサヤラにも言ったほうがいいかな?

「いや、サヤラはともかくアポロには今は止めといたほうがいいッス」

 というか最後の最後でとんでもない爆弾落としてくれったッスね……と呟くティニー。

「これはさっきの修羅場どころじゃ済まないッスよ……クイーズさんは責任を持ってアポロを幸せにする義務があるッス」

 うっ、ごもっともで。
 と、なると、アポロにも一発逆転の目が残されて……とかブツブツ呟き始める。

「とりあえず今の所はうちだけの胸に秘めておくッス。あ、これリーダーは知って……るんでしょうね。今思えばそんな動きをしてたッス」

 ほら見ろラピス、怪しまれていたじゃないか!

「とにかく! クイーズさんは絶対アポロを幸せにする事! これだけは守ってもらうッスからね!」
「当然だ!」

 絶対ッスよ、と言って念を押しながらティニーは戻って行く。
 そこへ入れ替わりにラピスが入って来た。

「とうとう話しちゃったんですか」

 ああ、ティニーはどうやら勘が良さそうだからな。これ以上隠しておくのは無理だと判断した。
 サヤラはしっかりしているようでどこか抜けているし、アポロはあんな調子で向こう見ずだし、その分、ティニーがしっかりしている訳だ。
 まあ、ティニー以外はお嬢様育ちのようだから仕方ないといえば仕方ないが。

「さて、それでは今回の反省と今後の育成方法です」

 そう言ってカードを机に並べる。
 今のオレの手持ちのカードは……

『ラピス・オブ・アイリスブラッド』
 ☆7・レベル23
 スキル:超繁殖、カード統率
 備考:モンスターカード+1

『ドラゴンスレイヤー』
 ☆10・レベル6
 備考:竜種特効

『メタルスライム・スラミィ』
 ☆2・レベル14
 スキル:擬態

『プリンセスナイト・カシュア』
 ☆7・レベル11
 スキル:未来予見
 備考:天敵・オーク、アンデッド特効

『マンドラゴラ・ギター』
 ☆7・レベル4
 スキル:オート演奏

 となっている。
 尚、カシュアの10レベルのボーナスはラピスと同じく、ボーナスポイントが倍になっているだけだった。
 ギターが多少レベルが上がっているが、別にどっかのゲームのように、こいつを使って殴った訳じゃない。
 演奏していると自然にレベルが上がるようだ。

「やはり、圧倒的に使えるモンスターが少なすぎます」

 実質、戦闘可能なのはラピスとカシュアの二人きりだもんな。
 しかもラピスはともかく、カシュアはやっと物になってきたって所だし。

「5分の3がネタってどいう事でしょうかね?」

 スラミィまでネタ枠に入れてやるなよ。
 最近じゃ、単体でモンスターが狩れるようになったと言っていたぞ。
 というか、オレに言わせればスラミィ以外がネタじゃないかと思うんだが。

「早急に行わなければならないのは、カードの量産とカシュアのレベル上げですね」
「どうしてカシュアなんだ?」

 ラピスが言うには、カシュアは聖属性の魔法に適正が高く、回復魔法や解毒魔法を高いレベルで扱えるんだと。
 もっとレベルを上げればその効果も高くなり、今回の場合のような事態に陥っても対処が可能になるだろうと。

「私達にとってお坊ちゃまこそが生命線。いざという時、治療要員が居ると居ないでは大きく違います」

 となると、なんとかカシュアのレベルを20にしてカードの増産も狙うしかないか。
 だとすると、あそこに行くしかない訳で。
 結局あのダチョウもどき、あんま役にたたないんだよなあ。カードに戻す事が出来ないから、モンスターがウヨウヨ居る所には連れて行けない。

「大丈夫ですよ。きっとエクサリーも分かってくれます」
「お前の大丈夫は当てにならないからなあ……」
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