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第三章
レベル47 生命の雫
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「早く帰って風呂入りたいぜ」
だというのに、なんでも凱旋パレードをするとか。
アレから、姫様のスキルでドラゴンを引き上げ洞窟から持ち出した。
頭にはでっかい穴が開いているが、その他の部分はほぼ無傷な状態。
素材としても、見た目としても、一級品で有る事は間違いない。
リーヴィ含む落ちて行った兵士達もほぼ無事で、リーヴィの指揮の元、反撃の機会を伺っていたらしい。
「勿体無かったですね。カードがあればサクッとゲット出来たのに」
「おいバカやめろ。誰に聞かれるか分からねえだろ。またゾロ独り占めしてみろ、今度こそ袋叩きになるぞ」
そんなオレ達の内緒話が聞こえたのが姫様が呟く。
「サクッと……? 私が意地を張らなければ、犠牲も出なかったと言う訳か」
ほらみろ、なんか誤解しているだろ?
通りの人達は、ドラゴンスレイヤー、ドラゴンスレイヤーと合唱している。
今回はドラスレ頑張ったからな。
「姫様、見事ドラゴンスレイヤーとなられ、おめでとうございます!」
城から駆けつけて来た兵士達がそう言ってくる。
ん? 姫様もドラスレになるの?
えっ、違う? 称号…………さ、最初から知ってたもんね!
「いや、私がドラゴンスレイヤーなどおこがましい。ほとんどこの者が倒したようなもの、私は唯、止めをさしただけにしかすぎん」
「なら、おあいこですね。2年前は姫様が弱らした奴をオレが倒した。今回はオレが弱らした奴を姫様が倒した。いいじゃないですかそれで」
「…………そうか、そうだな」
よし! 言質をとったぞ! これで2年前の横取りはチャラだ!
そう思った瞬間だった。
ふと目の前が薄暗くなる。まるで地面が回転していくかのように景色が回る。
「おい! どうした!」
「お坊ちゃま!」
「クイーズ!」
えっ、なんで?
全身がまったく動かない。
視界が黒く塗り潰されていく。
「しまった! 竜の血か! 竜の血は少量ならば薬となる。だが、大量に浴びれば毒となる!」
「カシュア! すぐにこっちへ来てください!」
「どうしたのかね? えっ、クイーズ君が!? 任せてくれたまえ、すぐに回復する!」
「えっ、カシュア……お前、生きていたのか……?」
姫様のそのセリフを聞きながら意識が遠くなるオレであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「えっ、生命の雫?」
「はい、とても貴重な物だと言っていました」
どうやらオレは数日間寝込んでいたらしい。
起きたら体がガリガリだった。
あまりに目覚めないので、姫様が貴重な回復薬を使ってくれたようだ。
「良かったッス……グスン」
ティニーが目に涙を浮かべている。
アポロなんて、しがみついて離れようともしない。
ラピスがホッとした表情でぐったりしている。ずっと寝ずに介抱していてくれたようだ。
「一時はどうなる事かと思いました。……やはり早急にレベルを上げる必要がありますね」
なんかブツブツ呟いている。
もっとカシュアの奴のレベルが上がっていれば……とか言っている。
なんだか嫌な予感がする。カシュアの未来に暗雲が漂っているかもしれない。
「それじゃあうちは、早急にサヤラやお店の方に知らせに行くッス!」
「ん、サヤラはどこか行っているのか?」
どうやら、サヤラは一足先に店に戻っているのだと。
エクサリー達にオレの現状を伝える役をかって出たらしい。じゃんけんで負けて。
大層悔しがっていたそうな。
「一度出ると戻って来られませんからね。なにせココ、王城ですし」
すっかり姫様にはお世話になってしまったな。
後で礼を言っとかないと。
「その必要はありませんよ。そもそも、あの姫様が凱旋パレードをやろうなんて言い出さなければ何も問題はなかったんですから」
ラピスが怒ったようにそう言う。
まあ確かに、さっさと帰って風呂でも入ってりゃ血も落とせただろうに。
ところでアポロさん、重いんでそろそろどいてくれませんかね?
「…………やだぁ」
なんだか子供みたいになっている。
「そういやカシュアはどうした?」
「……実は、バレてしまいましてね」
なにが?
えっ、バレたの!?
マジえ!
「おい、そりゃヤバいんじゃねえか! 今のうちにとっとと逃げ出す用意をしねえと!」
「まあ、今のとこは姫様だけですが……なんとか穏便に収まりませんかね?」
なんとかってどうやってだよ?
えっ、オレに姫様を落とせと? 無茶言うなよ!
「あともうちょっと押せばなんとかなりそうな雰囲気なんですがねえ」
「どっちにしろオレは姫様にその気なんてないから無理だ」
いいじゃないですか? 姫様落としたら貴族に返り咲きですよ? エクサリーとはその後でも。なんてとんでもない提案をしてくる。
お前……だんだん腹黒になって来ているな?
いかん、やはり知能に全振りは支障があったらしい。
ああ、そういや前世のゲームでも、一部の能力にガン振りは、最初は良くても途中で困った事になる場合が多々あったような気もする。
今からでも修正できないものだろうか?
ほら、よく課金アイテムで、ボーナスポイントリセットとか。
「そんなものある訳ないでしょ」
「ですよね~」
だというのに、なんでも凱旋パレードをするとか。
アレから、姫様のスキルでドラゴンを引き上げ洞窟から持ち出した。
頭にはでっかい穴が開いているが、その他の部分はほぼ無傷な状態。
素材としても、見た目としても、一級品で有る事は間違いない。
リーヴィ含む落ちて行った兵士達もほぼ無事で、リーヴィの指揮の元、反撃の機会を伺っていたらしい。
「勿体無かったですね。カードがあればサクッとゲット出来たのに」
「おいバカやめろ。誰に聞かれるか分からねえだろ。またゾロ独り占めしてみろ、今度こそ袋叩きになるぞ」
そんなオレ達の内緒話が聞こえたのが姫様が呟く。
「サクッと……? 私が意地を張らなければ、犠牲も出なかったと言う訳か」
ほらみろ、なんか誤解しているだろ?
通りの人達は、ドラゴンスレイヤー、ドラゴンスレイヤーと合唱している。
今回はドラスレ頑張ったからな。
「姫様、見事ドラゴンスレイヤーとなられ、おめでとうございます!」
城から駆けつけて来た兵士達がそう言ってくる。
ん? 姫様もドラスレになるの?
えっ、違う? 称号…………さ、最初から知ってたもんね!
「いや、私がドラゴンスレイヤーなどおこがましい。ほとんどこの者が倒したようなもの、私は唯、止めをさしただけにしかすぎん」
「なら、おあいこですね。2年前は姫様が弱らした奴をオレが倒した。今回はオレが弱らした奴を姫様が倒した。いいじゃないですかそれで」
「…………そうか、そうだな」
よし! 言質をとったぞ! これで2年前の横取りはチャラだ!
そう思った瞬間だった。
ふと目の前が薄暗くなる。まるで地面が回転していくかのように景色が回る。
「おい! どうした!」
「お坊ちゃま!」
「クイーズ!」
えっ、なんで?
全身がまったく動かない。
視界が黒く塗り潰されていく。
「しまった! 竜の血か! 竜の血は少量ならば薬となる。だが、大量に浴びれば毒となる!」
「カシュア! すぐにこっちへ来てください!」
「どうしたのかね? えっ、クイーズ君が!? 任せてくれたまえ、すぐに回復する!」
「えっ、カシュア……お前、生きていたのか……?」
姫様のそのセリフを聞きながら意識が遠くなるオレであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「えっ、生命の雫?」
「はい、とても貴重な物だと言っていました」
どうやらオレは数日間寝込んでいたらしい。
起きたら体がガリガリだった。
あまりに目覚めないので、姫様が貴重な回復薬を使ってくれたようだ。
「良かったッス……グスン」
ティニーが目に涙を浮かべている。
アポロなんて、しがみついて離れようともしない。
ラピスがホッとした表情でぐったりしている。ずっと寝ずに介抱していてくれたようだ。
「一時はどうなる事かと思いました。……やはり早急にレベルを上げる必要がありますね」
なんかブツブツ呟いている。
もっとカシュアの奴のレベルが上がっていれば……とか言っている。
なんだか嫌な予感がする。カシュアの未来に暗雲が漂っているかもしれない。
「それじゃあうちは、早急にサヤラやお店の方に知らせに行くッス!」
「ん、サヤラはどこか行っているのか?」
どうやら、サヤラは一足先に店に戻っているのだと。
エクサリー達にオレの現状を伝える役をかって出たらしい。じゃんけんで負けて。
大層悔しがっていたそうな。
「一度出ると戻って来られませんからね。なにせココ、王城ですし」
すっかり姫様にはお世話になってしまったな。
後で礼を言っとかないと。
「その必要はありませんよ。そもそも、あの姫様が凱旋パレードをやろうなんて言い出さなければ何も問題はなかったんですから」
ラピスが怒ったようにそう言う。
まあ確かに、さっさと帰って風呂でも入ってりゃ血も落とせただろうに。
ところでアポロさん、重いんでそろそろどいてくれませんかね?
「…………やだぁ」
なんだか子供みたいになっている。
「そういやカシュアはどうした?」
「……実は、バレてしまいましてね」
なにが?
えっ、バレたの!?
マジえ!
「おい、そりゃヤバいんじゃねえか! 今のうちにとっとと逃げ出す用意をしねえと!」
「まあ、今のとこは姫様だけですが……なんとか穏便に収まりませんかね?」
なんとかってどうやってだよ?
えっ、オレに姫様を落とせと? 無茶言うなよ!
「あともうちょっと押せばなんとかなりそうな雰囲気なんですがねえ」
「どっちにしろオレは姫様にその気なんてないから無理だ」
いいじゃないですか? 姫様落としたら貴族に返り咲きですよ? エクサリーとはその後でも。なんてとんでもない提案をしてくる。
お前……だんだん腹黒になって来ているな?
いかん、やはり知能に全振りは支障があったらしい。
ああ、そういや前世のゲームでも、一部の能力にガン振りは、最初は良くても途中で困った事になる場合が多々あったような気もする。
今からでも修正できないものだろうか?
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