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第三章

レベル42 ☆

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「つーことでドラゴン退治に行く事が決定しました」

 パチパチパチ。
 って、全然めでたくねえよ!
 なんだよそれ? なんの罰ゲームなの?

「なあカシュア、オレ最近、お前と同じ未来予見のスキルを身に付けたかもしれない。なんていうか、こりゃヤベッてのが事前に分かる気がするんだ」
「それは未来予見というより、危機察知のほうが近いんじゃないかな!」

 行きたくねえよ、でも王家からの指示だからな。
 なんでも、王都の近くのダンジョンに岩竜が住み付いたらしい。
 それでよしときゃいいのに、お国の王女様が討伐に名をあげたという。

 で、その護衛としてオレがお呼ばれになる事に至った。

「なんでも2年前、襲ってきたドラゴンを返り討ちにした人物らしいですよ」

 若干18歳という若さで、王都を襲ってきたドラゴンをスキルを駆使して撃退したそうな。
 しかしながら王女という立場、追撃戦には参加できず、あの場には居なかったとのこと。
 その王女様が居ればオレの出番もなかったかもしれない。

「……なあ、もしかして手柄を横取りされて恨まれてやしないだろうな?」
「お坊ちゃまは『止め』を差しただけですよ?」

 護衛と称して呼び出しといて、寄って集ってボコボコにされたり……

「その人物は討伐隊には入れなかったようですから、どちらにしろ『その人物からは』横取りにはなってないでしょ」

 ただし、軍全体から見たらどうかは知りませんがねえ。と不吉な事を言う。

「まあ、行く事は決定したんだ、腹をくくるしかない」

 いざという時はラピスを囮にして……

「お坊ちゃまより私の方が足が速い事をお忘れなく」
「ご主人様を見捨てないでくれよぉおお!」

 囮なら、カシュアが居るじゃありませんかって酷い事を言うラピス。
 いや、カシュアはまずいんだよ。なにせ相手が実の姉だからな。
 万が一バレたら、ボコボコどころか首が飛びかねない。

「はぁ、マジでどうすっかな……」

 オレはカードを並べる。

『ラピス・オブ・アイリスブラッド』
 ☆7・レベル22
 スキル:超繁殖、カード統率
 備考:モンスターカード+1

『ドラゴンスレイヤー』
 ☆10・レベル1
 備考:竜種特効

『メタルスライム・スラミィ』
 ☆2・レベル13
 スキル:擬態

『プリンセスナイト・カシュア』
 ☆7・レベル10
 スキル:未来予見
 備考:天敵・オーク、アンデッド特効

『マンドラゴラ・ギター』
 ☆7・レベル3
 スキル:オート演奏

 今すぐ20レベルになれそうな奴はいない。
 合計レベルもまだまだ未達だ。
 切り札は増えそうにない。

「まあ、私が居ればそうそうお坊ちゃまに怪我はさせませんよ。その王女様もお強いようですし」
「いや、ラピスは今回、アポロ達の護衛に回ってくれ」
「「「えっ!」」」

 三人娘が同時に声を上げる。
 今回は緊急依頼として冒険者はほぼ強制的に参加させられる。
 もちろんその中にはアポロ達も含まれている。

「オレの事なら大丈夫だ。正直な事言って後方に下がらせてもらうさ」

 王家の連中はどうも、オレのカードの事を誤解している気がする。
 ここらではっきりさせといた方が後々問題にならずに済むだろう。

「カシュアとラピスはアポロ達を護衛し、出来る限り浅い所で・」
「ヤダ!」

 珍しくアポロが声を荒げる。
 浅い所どころかオレの近くで戦うと主張してきた。

「いや、それは最前線って事になってな」
「……問題ない、望むところ」

 普段なら止めに入るサヤラとティニーもコクコクと頷いている。

「いやでもな……」
「クイーズ」

 それまでジッと俯いていたエクサリーがオレの名を呼ぶ。

「アポロ達は冒険者としてどのぐらいの実力なの?」

 アポロ達の実力か……
 スキルの有るアポロは、魔術師としては上位に入ると言ってもいい。
 サヤラとティニーは相性がよく、サヤラが敵に応じた弾を練成し、それをティニーが撃つ。
 この二人セットだと……中級……いや、上級に近い実力かもしれない。

「そんな実力の冒険者を浅い位置で戦わせてくれるの?」

 そんなことはギルドが許さない……か……

「ならば少しでもクイーズの近くに居るほうがいい」
「言われて見ればそうかもしれない」

 オレが長考に入ると4人でコソコソと内緒話を始めた。

「ごめんなさい」
「えっ、なんで謝るんスか?」
「私はクイーズに死んで欲しくない。だから貴方達を利用してしまった」

 随分小さい声で何を言っているかまでは分からない。

「それはさっきの?」

 コクンと小さく頷くエクサリー。

「その上でおこがましい頼みかも知れない、……クイーズを、助けて欲しい」
「…………それは当然」
「まかせといて欲しいッス!」
「むしろエクサリーさんが謝る事なんて何もないですから」

 アポロがエクサリーの目をジッと見つめる。

「…………お姉さんの頼み、しっかりと聞いた」
「えっ、姉?」
「そう、姉」

 なんか、アポロとエクサリーの間でバチッと火花が散った気がした。
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