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第二章

レベル38

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「今度はうまくいったんだね。おめでとう」

 ビックフットを連れて帰ったオレ達を見て、エクサリーがそう言ってくる。
 うまくいった……? んだろうか? ちょっと違う気もする。

 あれから、このダチョウもどきが嘴でつついて来て演奏をせがむんで、アンコールを披露した。
 そしたらすっかり懐いてしまったようだ。

「うぉっ、レア種かよ! ついてるなクイーズ。しかし……店の護衛増やさねえとダメかもな」

 おやっさんがそう呟く。
 確かに、盗まれる心配とかがありそうだな。でもコイツ、危機察知のスキル持ってるから、なんとかなるんじゃない?
 しかしこのダチョウもどき、ちゃんと荷物引いてくれるのかな?

 ちょっと心配だったのだが、ちゃんと荷物を運ぶ役を担ってくれた。
 ギターで音楽を鳴らしてやれば上機嫌で言う事を聞いてくれる。
 偶にクエー、クエッって、ギターに合わせて歌っている様な時もある。モンスターでも音楽で心を通わす事が出来るのだろうか?

 あと、カシュアと結構仲が良さそうで、

「君も危機察知スキル持ちだってね! ボクも昔は持ってたんだよ、それがあれば悪い奴といい奴がすぐに分かって良いよね!」
「クエー!」
「イダッ、イダダダっ、ちょっ、やめっ、ボクは悪い人間じゃないよ!?」

 ちゃんと言葉が通じているかどうかは不明だが。

「お坊ちゃま、ドラムってこんなんでいいのですかね?」

 それと、ラピスがやけに音楽に凝り始めた。こっちの世界じゃ娯楽が少ない、しかしラピスはモンスターカードの効果でオレの前世界の娯楽を知っている。
 その一旦を感じた事により、どうせならフルセットを再現しようと挑戦しているようだ。
 あちこちからモンスターの素材を取り寄せては、あれでもない、これでもないって、試行錯誤してドラムやらベースギターやら、楽器作りに精を出している。

「おっ、結構いい音がするな。でも、アンプとスピーカーが無ければ、音の大きさがバラバラになるんじゃないのか?」
「それにはそのギターのスキルの熟練度を上げてください」
「ええっ?」

 ラピスの言う事には、スキル自体に熟練度みたいなものがあり、使えば使うほど上達するそうな。
 サヤラに言ったアレ、実はほんとの事だったようだ。
 そしてこのギターのスキル『オート演奏』オートの部分と演奏の部分で分けて考える事が出来る。

 エレキギターは元々、それ単体ではほとんど音が鳴らない。
 にも係わらず、きちんと音は響いている。願えば音量の調整が出来る程だ。
 しかもだ、その音量の中にオレの歌声も混ざっていたらしい。

「それが演奏と判断されたなら、このギター以外の音も一緒に拾えるってことか……?」
「だと思われます。なので、こちらのドラムやベースの音も一緒に拾って、演奏部分のスキルで調整して頂きたいのです」

 出来るのかな? やってみるか。

「よし! ラピス、ドラムを頼むぞ!」
「アイアイサー!」

 最初はうまくいかなかったが、練習して行くうちに徐々にまとまった音となっていく。
 なるほどこれが熟練度か。
 という事は、もっと練習すればさらにいい音楽が奏でられると。
 これは、さらに練習量を増やさないとな!

 そうして夜な夜な裏庭でギターの練習をしている時だった。
 ふと、オレの演奏に合わせて歌声が聞こえる。
 いい声だ……遠くから聞こえているはずなのに、なぜかすぐ近くで聞こえるような気がする。
 高く、低く、緩やかに……心に染み込んでくる。

 フラフラとその人物を求めて彷徨い歩く。

 そして見つけた。
 洗濯物を取り込みながらメロディーを口ずさむ、エクサリーに。

「あっ、クイーズ……恥ずかしぃ……」

 オレを見かけたエクサリーは恥ずかしそうにシーツで顔を隠す。

「エクサリー、今の歌は?」
「クイーズの練習をジッと見てたら覚えちゃった……下手でしょ?」

 そんな事はない! 確かに技術はまだまだかもしれない。
 だが、ボーカルとして必要な、聞かせる『声』を持っている! それだけは、生まれ持っての才能でしか手に入れられないものだ!
 オレはもしかしたら、至高のボーカルを手に入れたかもしれない。

「エクサリー、オレの……パートナーになってくれないか?」
「えっ……えっ! そっ、それはもちろん……約束だから……いいけどぉ……」
「ありがとう! さっそくこっちへ来てくれ!」
「えっ、ええっ?」

 オレはすぐに木のブロックを使って簡易なステージを作る。

「さあここで、思いっきり歌って欲しい!」
「えっ……もしかしてパートナーって……」

 あれ? なんだかエクサリーの顔から表情が消えて……

「さっき誰か殺ってきた?」
「殺ってない」

 とにかく! エクサリーの歌声は天使の歌声なんだよ!
 あんな澄んだ歌声は聞いたこと無い!
 オレにとってエクサリーは天使なんだよ!

 などと、オレの褒めごろしに気を良くしたのか歌ってくれる事になった。

 オレが演奏を開始する。
 エクサリーがそれに合わせて歌いだす。
 そしてそれは、ギターのスキルに乗って様々な人達に届けられる。

「懐かしい声がするな……」

 それはオレを拾ってくれて、エクサリーやラピスに巡り合わせてくれたおやっさんだったり、

「うん? これはクイーズ君じゃないね、でもクイーズ君以上かもしれない!」

 それはドジでウザくてバカで能天気なプリンセスだったり、

「いい声……」
「心が洗われるッス……」
「………………」

 それは様々な苦労を共にした三人の少女だったり、

「よいしょっと、お坊ちゃま、ドラム、入りますよ」

 それは演奏を聴きつけた耳をピコピコさせているバニーガールだったり、

「あら、スラミィちゃん踊ってるの? かわいいぃいい!」
「ほうほう、コレ売ったらかなりの金になるんじゃね? あっ、やめっ、売らない! 売らないッス! びでぶっ!」

 それは近くに居る冒険者達だったり、

「これ誰が歌っているんだ?」
「金が取れるレベルだなこりゃ」
「ちょっと見に行ってみようぜ」

 それは近所の鍛冶屋さんや細工士さん達だったり、

 気が付けば、裏庭の広場には大勢の人々が詰め掛けて来ていた。
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