上 下
30 / 279
第二章

レベル30

しおりを挟む
「いやあ、風呂上りの牛乳は実に最高だね!」

 カシュアが腰に手をあてて、ゴクゴクと牛乳を飲み干している。腰にタオルを巻いただけのほぼ全裸で。

「だからお前、そんなカッコで出歩くなよ。オレがエクサリーに刺し殺されそうな視線で見られるだろ」
「刺したりしない」

 ついついガン見しちゃうんだよ! 元男だと分かっていても、とてもいい物を持っておいでだからな。
 あれ、でもエクサリー、こういう時はいつも目のマッサージを始めるんだが、今日はなんだか俯いて……

「あれ? なにを言っているのかな? ボク達は男同士ではないか、何を恥ずかしがることがあるのだね!」

 ニヤッと笑ったカシュアは、そう言って胸をやけに強調して見せ付けてくる。
 ウザッ、いいからさっさと服を着ろ!
 隣でラピスが対抗するようにフン! と胸を張る。

 その時、ボタンがプツンとはじけ飛びその隙間から谷間が除く。

 おお……胸プッチンを会得していたとは……やるな、ラピス!
 ソレを見たエクサリー、さらに俯いて…………自分の胸を見つめている。

「クイーズは大きいほうがいいの?」

 いや自分、大きいのも小さいのも、それぞれの魅力があっていいと思っています。

「大きくない……だけど小さくもない……」

 いやだからね、大きさは問題じゃないんだ! どんなおっぱいだってそこには夢がたくさんつまっているんだ!
 それにエクサリーのは大きさ関係なしに綺麗な形をしているじゃないか!
 えっ、なんで知ってるかだって? ……自分、想像で話しました! いやっ、ちがっ、やめっ、ひでぶっ!

 ……なんでオレはこんなとこでおっぱい議論をしているのだろうか?

「なに? おっぱいが恋しいだと! いいでしょう、私の胸でたっぷり堪能して!」

 そう言ってオレの頭を胸に抱きかかえる女性が約1名。
 えっ、誰? ちょっと前が見えないんですが?
 あっ、この握力は……やばい、これ以上はやばい、イキガッ、息ができな……

「ちょっ、ちょっとお坊ちゃまに何するんですか!」

 慌ててラピスが止めに入る。
 ハァ、ハァ……死ぬかと思った。
 あれ、オレよりエクサリーの方が息が荒いな?

「必死で引っ張ったんですがね、ビクともしなかったようです」

 お疲れ様です……

「神よ! コレを見てください! 私のかわいいスラミィたんが、なんと!」

 ペッペケペーとメタルスライムを取り出すその女性。

「そのスライムがどうかしたの?」
「突然現れたと思ったらいったいなんなんですか?」

 その突然現れた女格闘家さんはスライムを机の上に置く。

「さあ、スラミィちゃん、例のアレを見せてあげましょう」

 机に置かれたスライムの体が、ボコッ、ボコッと変化し始める。
 そして徐々に姿を変えていく。
 徐々に徐々に……まるで人間のような姿に。

 最後には妖艶な美女風になり、クネクネと魅惑のポーズを取り始めた。

 ただまあ、サイズは20センチぐらいの人形なんだが。

「おおっ、なんだこれ、超かわえぇええ!」
「でしょう、でしょう! ついさっき草原でレベル上げしてたら急に光って、そしたらこんな風に!」

 おっ、もしかしてレベルが上がったのか?

『モンスターカード!』

 オレはスライムのモンスターカードを取り出す。
 おおっ、上がってるな! 10レベルになっている。
 おおおっ、空白だったスキル欄に一つ追加されている。

 その名も――――擬態。

 なるほど、姿を色々なものに変える事が出来るようになったのか。

「えっ、擬態? 擬態ってこんなに変わらなかったはず……精々、周りの風景に溶け込むような色になったり、ちょっとした変装ぐらいだったかと」

 お姉さんがソレを見て首を傾げている。
 まあ、スライムだからかもな。
 骨も無ければ肉も無い、自由に姿を変えれても不思議ではない。

「こまけえこたぁどうでもいいんだよ! かわいいは正義だろ?」
「それもそうですね! かわいいは正義ですものね!」

「お坊ちゃま、今ちょっと気になるものが見えたのですが……もう一度カードを出して並べてもらえませんか?」

 ん? ラピスがそんな事を言ってくる。

『モンスターカード!』

 オレはラピスに言われた通りカードを出して机の上に並べる。

「お坊ちゃま……コレ……」

 ラピスが一枚のカードを指差す。
 そこには――――白い無地のカードが一枚有るのだった。

「カードが……増えて、いる!?」

 どういう事だ? スライムの備考欄にはモンスターカード+は表示されていないぞ?
 ラピスが並べられたカードを見ながらひいふうみぃと何かを数えている。

「たぶん、コレじゃないでしょうか? このカードの……合計レベル」

 合計レベル?

 確か今は、ラピスが21、カシュアが8、ドラスレが1の合計30に、今回、メタルスライムが10となって……合計、40レベルか!

「合計レベルが40でカードが増えたと?」
「その可能性が大きいですね」

 なんだ、結構増えるじゃないかモンスターカード。
 今までのはいったいなんだったんだ。

「モンスターが増えれば増えるほど、カードも増えやすくなるってシステムですね」

 なるほど……夢が広がるな!
 もったいぶらずにさっさと全部使ってしまったほうが良かったって事か。

「よしっ、そうとなれば……次はどうするか?」
「そうですねえ……」

 考え込むオレ達にふとエクサリーが問いかけてくる。

「ねえクイーズ、今度はその、移動の足になるようなのにしない?」
「えっ?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」  何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?  後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!  負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。  やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*) 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/06/22……完結 2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位 2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位 2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位

殿下から婚約破棄されたけど痛くも痒くもなかった令嬢の話

ルジェ*
ファンタジー
 婚約者である第二王子レオナルドの卒業記念パーティーで突然婚約破棄を突きつけられたレティシア・デ・シルエラ。同様に婚約破棄を告げられるレオナルドの側近達の婚約者達。皆唖然とする中、レオナルドは彼の隣に立つ平民ながらも稀有な魔法属性を持つセシリア・ビオレータにその場でプロポーズしてしまうが─── 「は?ふざけんなよ。」  これは不運な彼女達が、レオナルド達に逆転勝利するお話。 ********  「冒険がしたいので殿下とは結婚しません!」の元になった物です。メモの中で眠っていたのを見つけたのでこれも投稿します。R15は保険です。プロトタイプなので深掘りとか全くなくゆるゆる設定で雑に進んで行きます。ほぼ書きたいところだけ書いたような状態です。細かいことは気にしない方は宜しければ覗いてみてやってください! *2023/11/22 ファンタジー1位…⁉︎皆様ありがとうございます!!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

お姉さまは酷いずるいと言い続け、王子様に引き取られた自称・妹なんて知らない

あとさん♪
ファンタジー
わたくしが卒業する年に妹(自称)が学園に編入して来ました。 久しぶりの再会、と思いきや、行き成りわたくしに暴言をぶつけ、泣きながら走り去るという暴挙。 いつの間にかわたくしの名誉は地に落ちていたわ。 ずるいずるい、謝罪を要求する、姉妹格差がどーたらこーたら。 わたくし一人が我慢すればいいかと、思っていたら、今度は自称・婚約者が現れて婚約破棄宣言? もううんざり! 早く本当の立ち位置を理解させないと、あの子に騙される被害者は増える一方! そんな時、王子殿下が彼女を引き取りたいと言いだして──── ※この話は小説家になろうにも同時掲載しています。 ※設定は相変わらずゆるんゆるん。 ※シャティエル王国シリーズ4作目! ※過去の拙作 『相互理解は難しい(略)』の29年後、 『王宮勤めにも色々ありまして』の27年後、 『王女殿下のモラトリアム』の17年後の話になります。 上記と主人公が違います。未読でも話は分かるとは思いますが、知っているとなお面白いかと。 ※『俺の心を掴んだ姫は笑わない~見ていいのは俺だけだから!~』シリーズ5作目、オリヴァーくんが主役です! こちらもよろしくお願いします<(_ _)> ※ちょくちょく修正します。誤字撲滅! ※全9話

【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~

イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」   どごおおおぉっ!! 5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略) ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。 …だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。 それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。 泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ… 旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは? 更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!? ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか? 困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語! ※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください… ※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください… ※小説家になろう様でも掲載しております ※イラストは湶リク様に描いていただきました

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

処理中です...