めがたま。

ぬこぬっくぬこ

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第41話

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 もしかしたら、なんとかなるかなあと思ったんですよ。でも無理でした。
 劣化ウラン弾でダメージ出ないとなると、もうどうすることも出来ないと思うんですよ。

「ちょっと待て小僧」

 なんでしょうか?
 なんか興味深そうな目つきをして、こっちを見ていらっしゃる。
 ああ、いらんでいいこと、するんじゃなかったなぁ……

「貴様の持つその神器……小僧、貴様、女神の遣いだな」

 ああ、バレちゃった。悪魔なお人にバレるとやっぱりまずいのでしょうか?

「ふうむ、それにしてはしょぼい……」

 あんたもか!

「いや、未完であるということか? ふむ、未完の勇者とは、これまた珍しい」

 最初は誰だって未完なんだよ!

「我と顔を合わせるぐらいの者は、みな完成しておるからな」

 あんたはラスボスかい!?
 そういや魔界の王とか言ってたような気も?

「セイジ、君は、女神の遣い……本物の勇者だったのか!?」

 なんか若旦那とハルシアお嬢様が唖然とした顔でオレを見つめてくる。

「固有神器……を持っているから、何かあるかとは思っていましたが……まさか勇者だとは」
「ん、なんか勇者ってえのだとすげえのか?」

 フォルテだけは何も分かってない模様。
 あっ、そういや姫様居ないな、いつの間にか1人で逃げ出したようだ。ひでえ。

「まったく、この我から逃げようなどと不愉快な奴だ」

 そう言うと巨人は腕を伸ばす仕草をする。すると、だ。手の中に姫様が居るじゃぁありませんか。
 巨人に捉まれて必死で抜け出そうとあがいている。
 まさか、握りつぶす気か?
 オレは思わず銃を構える。と、もう片方の腕をオレの方に伸ばしてくる。

 あっ、と思ったときには既に巨人に掴まれていた。

「セイジッ!」

 若旦那が魔法を放とうとする。それを慌ててハルシアお嬢様が押さえつけている。

「さて、この小娘には身の程、というものを知ってもらわねばならぬな」

 あの~、オレは離してくれませんかね?

「お前はついでだ」

 マジですか? オレと姫様は巨人と一緒に魔方陣の中に消えていくのだった。

◇◆◇◆◇◆◇◆

 ―――グゥゥー

 姫様のお腹の音が鳴る。あ、バナナ食べますか? え、いらない? 我慢は体に良くないッスよ。
 オレ達は今、牢屋? のようなものに囚われている。
 牢屋といっても、洞窟の壁を大きめにくり抜いて部屋の様なものを作っているだけで、格子もなければ鍵も掛かっていない。
 ベットらしき台座がひとつあって、トイレ用らしき穴が奥にあるだけだ。

 それならすぐ逃げれるだろと思うだろ? ところがどっこい、見張りが目の前にいます。
 姫様の杖もオレの銃も取り上げられていないので、攻撃しようと思えば攻撃し放題なのだが、

『ナパームフレア!』

 姫様が撃った魔法で、洞窟の中が地獄の釜と化した状態でも平気な顔してだべっておいでだ。

「こりゃあったかいな、暖房器具として持ってきたのかね」
「まったくうちの王様も、こんな役にも立たない動物とってきて……」
「ああん、慰め物にでも使うんじゃねえか?」
「おいおい、あんなもの、一回でボロボロだぜ」

 一回あれば十分じゃねえか、と笑いあう見張りさん達。
 それを聞いた姫様は青いを通り越して紫の顔で震えておいでだ。
 あと、魔族さんのお言葉、なぜか分からないがオレ達に理解できる。
 なんか魔法的ななにかで直接頭の中に響いて来るような感じ。

「セイジっ! ちょっとこちらへ来なさい!」

 なにでしょうか。
 さっきまで真っ青な顔で奥の方で震えていたのに、今はなぜか真っ赤な顔で蹲っている。

「……少しの間ここにいなさい。決してこちらを見てはなりません!」

 ああ、トイレを我慢してたかあ。了解ッス、見えないようにガードしてたらいいんスね。
 後ろの方で聞いてはならない音が聞こえる。耳も塞いだほうがいいッスか?

 ―――グゥゥー

 それから暫くして、またもや姫様のお腹の音が鳴る。
 仕方ない、

「食事、求む」

 オレは見張りさんにそう伝える。
 見張りさんはギロッとこちらを睨む。怖えっす。

「アホかお前は、なんで俺らがお前らの飯の準備をせにゃならんのだ?」
「調子に乗ってると、ぶっ殺すぞてめえ」

 うすっ、申し訳ありませんでした!
 オレは土下座をして許しを請う。

「まあ、人間は常に食べ続けないと死ぬんだったか?」

 オレ達はねずみですか。

「死んだらまずいか? まあ、俺達は見張れって言われただけだしな。勝手に死ぬ分には構わないか」

 全然良くないっスよ。
 ほら姫様、食事は出ないので我慢してバナナ食ってください。

「そんな得体の知れない物を食べるくらいなら、このまま餓死したほうがましです!」

 バナナは栄養満点なんスよ。味も保障しますから。
 オレは姫様の前でバナナを食べてみせる。

 ―――グゥゥー

 それでも我慢を続ける姫様。
 まあ、どうしても追い詰められたら食べるだろう。
 オレは幾つかバナナを出してベットの上に置いておく。
 しかし、どうしたものか、今が昼か夜かも分からない。少々眠くなったのでたぶん夜なんだろう。
 ベットがひとつしかないんですが……あっ、下ですか、うすっ、了解です。
 オレは地面に横になり、魔界での一日目を終えるのだった。
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