めがたま。

ぬこぬっくぬこ

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第37話

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 ドワーフの隠れ里の長であるブロさんに許可をもらい、一緒に聖なる炎へ近づく。
 シルフィード様は本当に暑いのが苦手みたいで、俺たちより一歩離れたところで見守ってくれることになった。
 この炎の前でサラマンダー様に願いを飛ばすと姿を現してくれるらしいけど……俺が呼んでも来てくれるだろうか?

「若いの、男は度胸だ。サラマンダー様は心身共に強い者が大好きなお方だ。思い切って呼べば答えてくれるに決まってらぁ」
「親父はまた無茶を言う……」

 側にいたマグさんがため息をつく。マグさんは親父と呼んでいるけど、ブロさんが父親なのかな?
 俺の疑問が顔に出てしまったのか、ブロさんが豪快に笑い飛ばした。

「ブハハ! ああ、コイツはせがれだ。美人な人間の母ちゃんとの間にできた子でな。鍛冶の腕もいいから、側においてんだ」
「……どうも」

 マグさんは軽く頭を下げてから、またすぐに作業へ戻ってしまった。
 身体が大きいから緊張しちゃうけど、礼儀正しい人みたいだ。

「ったく、コイツは愛想がねぇんだ。許してやってくれ。さ、遠慮なくやってくれ」
「遠慮なくって……酒じゃないんだから……」

 ウルガーが反射的にツッコミを入れたところで、俺は聖なる炎の前に立ち祈りを捧げる。
 俺に用事があると言ってくれていたし、きっと来てくれるとは思うんだけど……緊張する。

「僕もわざわざ出てきたんだから、さっさと話をしてもらわないとね」
「そうですね」

 俺は聖なる炎の前でひざまずき、両手を組んで祈りを捧げる。
 炎はより大きく燃え上がり、ぶわりと弾けた瞬間に炎と共に炎のような赤を身にまとった人物が現れた。

「なんだ、結局お前も来たのかシルフィード」
「だって、意味深なことを言うから気になって。僕の可愛いレイヴンに妙なことを言わせないつもりでね」

 炎のように赤い短髪と切れ長の瞳と、赤の軽鎧に身を包んだ戦士風の服装。
 以前に見たサラマンダー様の人間の姿だ。

「サラマンダー様、レイヴンです。俺にお話があると伺いました」
「レイヴン、久方ぶりだな。このような形で呼び出してしまいすまないが、お前が気になっていることを話しておこうと思ってな」
「もったいぶらずにちゃんと教えてあげなよ? わざわざ寄り道してまでサラマンダーの話を聞きに来たんだからね」
「……分かっている」

 サラマンダー様は強い者を好むお方だからこそ、魔族との戦いでもテオへ力を貸してくれる形で指輪から召喚に応じて下さったお方だ。
 ブロさんも言っていた通り、俺も胸を張っていなければ召喚に答えてもらえなかっただろう。
 俺はずっと塞ぎこんでいたから、サラマンダー様も姿を現さなかったのかもしれないな。

「お前が気にしているテオドールのことだ。あの戦いの後、私も暫くは眠りについていたのだが……一度だけ、指輪から存在を感じることができた」
「と言うと、やっぱりテオドール様は生きてるってことですよね? 良かったな、レイヴン。やっぱりあの人はしぶとい人だって」

 ウルガーも背中を叩いて鼓舞してくれる。
 信じてはいたけど、改めて聞くと安心する。しかも、サラマンダー様が指輪を通じてテオを感じたということは間違いなくテオが生きているという証拠になる。

「それだけなの? もっと具体的な場所とか分からない?」
「無茶を言うな。あいつはただの人間だ。祝福を授けている訳でもないのだから、たまたま感じることができたというだけのこと」
「その情報が聞けただけでも、俺たちが出向く意味があります。サラマンダー様、わざわざ知らせてくださってありがとうございます」

 あの人はどこかで生きている――
 だけど、すぐに戻れない事情でもあるのか? 生きてるっていうなら手紙の一つくらい書いたっていいのに……。
 最悪の事態として、サラマンダー様が一度存在を感じた後にやはり何かあって……ということもあるけど。
 その最悪の事態は今まで散々考えてきたことだ。今更どうということはない。

「サラマンダー、テオドールの存在を感じたのはいつ頃?」
「シルフィードに知らせた時だ。すぐに気配は感じなくなったがな」
「つまり……レイヴンが元気になった後だね。じゃあ、きっと大丈夫」

 シルフィード様が優しく微笑みかけてくれる。
 それだけで、これからの旅に意味があると力が湧いてきた。
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