めがたま。

ぬこぬっくぬこ

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第20話 ダンジョン攻略開始!?

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「おお、エンスートじゃねぇか。またぞろ貴族の道楽を再会したのか?」

 そう言って嘲け笑ってくる冒険者。

「悪い事は言わねえ、ここはお遊びじゃねえんだ。この間の事でまだ懲りてねえのか?」

 そう言って辞めとけと忠告してくるギルドのお兄さん。

「エンスート……そう立ち直ったのね? ふふっ、お隣の子のおかげかしら」

 そう言って若旦那とアルーシャを交互に見比べる食堂のお姉さん。

「若旦那って結構有名だったのかい?」
「そりゃもうねえ、ここの領主の息子さんでしょ? 気にかけない訳にはいかないしね~」
「魔法の腕だって上位に入るぐらいでしょ? 狙ってる子も結構いたんだんけどな~。私も含めて」

 二人の仲睦まじい姿にガッカリしている娘もいるようだ。
 ここのダンジョンでは、攻略を目指す冒険者達により、ちょっとした町の様子をしている。
 門をくぐると冒険者達が若旦那を見咎めて色々言ってきた。
 主には逃げ出したことを嘲るようなこと。

 その後、冒険者ギルドにダンジョン攻略の申請をしに行ったときも、カウンターのお兄さん達に忠告を受けていた。
 そしてオレ達にも忠告してくる。
 なんでも前回は、無理な進行を推し進めて仲間を失ったらしい。

 そして最後に、ご飯を食べに食堂に来ているところだ。

「僕は以前、功を焦るが故に大切な仲間を失ってしまった」
「それは若旦那だけじゃないですよ。皆、それぞれ事情があったじゃないですか」
「だけど、死なせてしまったのは僕の責任だ」

 アルーシャさんは若旦那の右手を両手で包むように握り締める。
 そして二人見つめあって、

 ―――ゴツン!

「こんなとこでいい雰囲気作ってんじゃねえよ! 昔は昔、今は今だろが!」

 アイラ姉さん、地がでてるっスよ?
 イラッと来たオレ達を代表したアイラ姉さんが若旦那に拳骨を落とす。

「そ、そうだったね」

 涙目で頭をおさえながら謝ってくる若旦那。

「なんだ若旦那、今度は、ちょっとマシなの連れてるじゃねえか」
「ハッハッハ、そうやってお姉ちゃんにリードしてもらえよ」

 周りの冒険者が笑いながらからかってくる。
 若旦那はそんな彼らに愛想笑いで返す。もっとシャキッと返したほうがよろしいのでは?
 アイラ姉さんが代わりにキッと睨みつける。
 冒険者達はヤレヤレといった感じで引き下がっていく。

「前回もこんな感じでしたの?」
「ん、どうだったかな? 前のときはあまり周りが見えてなかったからなあ」
「同じです」

 姉さんはハァってため息をつくと席に座りなおす。

「この様子じゃ、ほかの冒険者達と助け合い、のようなものはなかったんじゃないかねえ」
「じゃろうなぁ。ただでさえ貴族のぼっちゃん、他の連中も関わりあいたくはないじゃろう」
「こいつは厳しい探索になりそうだな」

 どういうことでしょうか?
 よく話を聞くと、ダンジョン内での冒険者同士の助け合い? のようなものは結構あるんだとか。
 食料が尽きたり、仲間が傷ついたり、そういった場合は互いに助け合ってカバーするんだとか。

「確かに、僕のパーティはみな他の冒険者のことなど相手にしていなかった……」

 若旦那は、他の冒険者達が困った場面に出くわしても、向こうが何も言ってこなかったので無視して通り過ぎていたとか。
 逆に若旦那のパーティがピンチの時も、誰も手伝ってくれなかったらしい。

「僕は……自分の事しか考えていなかったってことか……」

 またしょげかえる若旦那。
 アルーシャさんはどうしようか迷っているご様子。先ほど怒られたばかりだしな。

「若旦那、気づいた、これからは、大丈夫」

 オレはそう言って励ます。
 若旦那はすがるような目つきでオレを見てくる。

「それでいい、オレ、頼る、仲間、頼る。絆、きっと出来る」
「ハッハッハ、若旦那、こんなガキ頼ってどうすんだよ?」
「おいおい、子供頼ってちゃおしまいだせぇ」

 誰が子供だよ! オレはもう立派な大人だ! 年齢だけなら……

「ハッ、言わしときゃいいさ。あいつらもセイジの戦い見れば考えも変わる」

 バルドックあにきぃ~。

◇◆◇◆◇◆◇◆

 しかしてオレ達は、翌日から絆つくりに精を出すことにした。
 まずは周りの冒険者達との、わだかまり解消からだ。

 ダンジョン攻略自体はとりあえず後回しにして、徹底的に冒険者さん達のサポートにまわる。

「くっ、囲まれた! くそっ!」
「ぐはぁっ、このままじゃやられちまう」

『装填・劣化ウラン弾!』

 絶体絶命の冒険者さん達を囲んでいるモンスターに貫通弾の雨あられ。

「助けはいるか!?」
「おう! 頼む!」

 バルドック兄貴がモンスターをなぎ払う。
 そしてボス格の奴に若旦那の魔法が炸裂。ゆっくりと倒れていく3メーターはあろうかというリザードマン。

「ありがてえ、助か――えっ、若旦那!?」

 またある日は、

「くそっ、モンスターに荷物がやられた!」
「水が、水がもうないよ」

「お困りですかな?」

 そう言ってポーション水を分けてあげる。

「こ、こんなに構わないのか?」

 大丈夫大丈夫。だって、いくらでも出せるから。

「おい、傷が治っていくぞ? まさかポーション……?」

 ちょっと混じっております。
 そしてまたある日、

「すまねえ、少し食事を分けてくれねえか? もちろん対価は払う」
「こんなものでよければどうぞ」
「なんだこりゃ! ほっぺがぁああおちるぅうう!」

 マグロ鳥のおいしさに歓喜されている冒険者さん。
 そのうち、

「おう若旦那じゃねえか。こないだは助かったぜ」
「子供だなんて言って悪かったな、人は見かけによらないもんだぜ」
「なあ、こないだの鶏肉? また売ってくれねえか?」
「あっ、私、お水下さい。なんかお肌がピカピカになるのよぉ」

 すっかり冒険者さん達の輪の中に溶け込んでいくのだった。
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