めがたま。

ぬこぬっくぬこ

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第8話 ソレを選択しないなんてありえない!

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 えっ、又間違えたのかって? 何言ってるんですか皆さん、ハナビ、花火ですよ!
 こちとら江戸っ子でぇ! 花火と書かれてソレを選択しないなんてありえない!
 えっ、ライフルが欲しいんじゃなかったのかだって?
 いやだなあ、良く考えてみたら、ライフルが必要なぐらいの距離だったらそもそも逃げるわ。態々寝た子を起こすこともあるめえ。
 ハンドガンですらまともに当たらないのに、単発銃であるライフルなんてもっと当たらない気もするし。

 それに、花火っていえば最終形態は打ち上げ花火!
 普通に敵に向かってぶっ放せば大砲でっせ。
 うまくいけば見世物屋でがっぽがっぽ。うはうは間違いなし!

 さあ、最初は何が来るか、線香花火? ねずみ花火? まあ、最初は仕方ない。じゃんじゃん使ってレベルを上げるとしよう。

「………………」

 だがオレは、まだまだ女神を侮っていたようだ。
 女神さん、これはない、これはないだろう。あんたはぁ間違っている! これはどう見ても間違ってる! コレは決して、花火じゃねぇええええ!

 そこにあったのは……ぐるぐる渦巻きの蚊取り線香であった。

 ハアハァ……ハァァアアア。どうすべ、これレベル上げるのにどんだけ使えばいいんだべ。
 火をつけてみる、一生懸命仰いでみる、うむ、一向に減らない。あれ、これって、レベルアップ絶望的じゃね?
 いやいや、きっと火がついてる時間も熟練度に関わってくるに違いない! ……だといいなあ。

 その時、オレの目の前にポトリと蚊が落ちる。
 む! これはっ!
 蚊取り線香……実は凄く使えるんじゃないか!
 この世界に季節があるかどうかは知らないが、今は常に熱帯夜。
 すなわち、蚊が飛んで寝られません。

 虫除けスプレーなんてあるわけねえ。
 毎日虫刺されの日々です。
 ポーションでも治りません。かき破った後は治るが、かゆいのはおさまらないッス。
 こりゃええ! 安眠のお供でやんす!

 オレはその日、久しぶりにぐっすりと眠れるのであった。

◇◆◇◆◇◆◇◆

 いや~、なかなか良いではないですか蚊取り線香。
 ハナビ、選択して良かったよ。
 しかもだ、念じれば火がつく、そしてそのついた火は別の物に燃え移らせる事が出来る。
 水に続いて火も、どこでも調達が出来るようになったって事だ。

 ……銃のくせに、なんか生活用品じみてきたな。

「セイジ、なんかご機嫌だな。いい事でもあったのか?」

 宿屋の姉さんが問いかけてくる。

「これこれ、虫、来なくなる」

 オレは蚊取り線香をカウンターに置き火をつける。

「ほう?」

 なんか姉さんの目が光ったような……
 そういや姉さん、偶に「このクソ野郎! かゆいんだよゴラァ!」って夜中に吼えてたような事が。
 女性にとって珠のお肌は、なによりもかけがえのないもの。かき破る訳にもいかず我慢するしかない。
 ポトリと落ちた蚊を目にすると、その光はさらに強いものとなる。

 オレはそっと火を消して宿を出て行こうとする。

「どこ行こうとしているんだい?」

 またもや、熊の様な握力でオレの肩を掴む姉さん。

「なあセイジ、あんたと私の仲だよな」

 どんな仲でしょうか?

「貸してくれるよな?」

 オレはただ頷く事しかできなかった。

 とりあえず今晩、貸し出す事になったのだが、困った事が発覚した。
 姉さんの部屋に蚊取り線香をセットして自分の部屋に戻って暫くすると、なんと、その蚊取り線香がオレの手元に戻って来ているではないか。
 意外と熱かったよ蚊取り線香……そりゃもろ火だしな。

 どうやらこの銃、オレから一定距離はなれて暫くしたら手元に戻ってくる仕様らしい。愛い奴である。
 なんだ、盗まれる心配はいらなかったのか。
 とはいえ、これでは姉さんに貸し出すことができない。
 こっそり取り返したなんて思われたら、明日からのオレのご飯に何が入っているか分からない。

 とりあえず姉さんの部屋に行き、その仕様を伝える。
 するとだ、

「じゃあ今日はここで一緒に寝るか」

 そう言ってオレを抱きかかえベットにダイブイン。そのまま姉さんは熟睡してしまった。
 オレももうすぐ16歳、女性なら結婚できるお年頃ですよ?
 まあ、姉さんに手を出す度胸なんぞありませんが。襲おうとしても返り討ちにあう未来しか描けやしねえ。

◇◆◇◆◇◆◇◆

 姉さんは翌日、虫刺されのない一夜に満足したのか、今日からここにお前のベットを用意しようとか言い出す始末。
 オレは自分の年齢を伝え、さすがにやばいッスってことを話した訳だが。

「ああん? 嘘付け、お前どう見てもまだ10歳ちょいだろ。背伸びするのも大概にしろよ」

 などという始末。
 いくらなんでも10歳はないだろう。小学生かよ。
 地味に落ち込むオレ。

「ま、まあそうだな、魔法使いは幼く見えるのかもしれないな。うん、隣の部屋が空いてるからそこに移るか? それぐらいの距離なら大丈夫だろ?」

 そんなオレに対して訳の分からない慰めを言ってくる姉さん。魔法使いは逆に年寄りに見えると思うんだがなあ。オレの先入観ですかねえ?
 とりあえず、オレは姉さんの隣の部屋に移ることになった。

「いや~、セイジが来てからほんと助かってるよ。なんかお前の出してくれた水で顔洗うとお肌がツルツルになるんだよな」

 そりゃ~、ポーションが混じってますから。
 ポーション鉄砲も強化しないとな。いずれエリクサーとか出せるようになったらいいな。無理か?
 さすがに全部ポーションだとオレの精神力? も持たないので、水を多目に入れて薄めている。

「よしっ、今日からセイジのおかずを一品多目に足してやろう」
「ウスッ! オレ、今後も頑張るッス!」
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