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4章 異世界葛藤編

第56話 結果発表

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 分析スキルのスキルチェックを唱えると、ぼんやりとした光が手のひらから漏れ出し、自分の眼前に液晶パネルのようなものが映し出される。

 そこには、俺が取得しているであろうスキルの名前とレベルが羅列していた。
 つまり、スキルの伝授が成功したという訳である。

「ルリア! 使えたぞ、分析スキル!」

「そっかー、よかったねぇ…」

 ルリアはまだ本調子ではないのか、うつ伏せでベッドに寝転がったまま、片手をフリフリするだけのリアクションにとどまっている。
 よほど疲れるのだろう、後で少し労ってやる事にしよう。

 俺は改めて目の前にある画面を見つめる。
 スキルレベルが低いからなのか、スキルの詳細は記されていないが、レベルだけなら分かるようだ。

 まず、カンストしているスキルが『睡眠』・『翻訳』・『肉体労働』・『清掃』の四種類。
 続いて、レベルが高い順に、レベル六が『投擲』、レベル三が『弩』と『魔法操作』、レベル二が『家庭料理』、そしてレベル一が『分析』となっていた。

「あれ、魔法操作が上がってる…」

 魔法がそもそも使えた試しが無いのにも関わらず、何故か魔法操作のレベルが上昇していた。
 分析スキルを使用したのは、今が初めてなので、それは関係がないはずだ。
 となると、どこで経験値が入ったのだろうか。

 最近あったことを思い出していると、ふととある現象を思い出す。
 街でチンピラに絡まれた時の事である。

 外れた筈の投石が、なぜか後頭部に当たっていた。
 あの時、もしかすると投石に対して、魔法的操作が加わった可能性があるのだ。

「これは…デグに相談して、実践してみるしかないな」

 こればかりはどんな威力になるかも分からない為、そのへんで試し投げをするのははばかられたので、今度訓練の際に試してみる事にした。

 しかし、もしこれが本当に出来るのであれば、かなり実戦的である。
 冒険者になるという夢も、近づいてきたのかもしれない。
 思わずワクワクしてきてしまい、口元が勝手に緩んでくるのを抑える。

 基礎体力も、訓練開始当初と比べればだいぶついてきたと思う。
 最近は、訓練後に寝込む事もなくなったし、訓練の時間自体も伸びてきている。

 居ても立っても居られずに、スキルチェックを終えて、ルリアをマッサージで労った後、家で出来る範囲の基礎トレを始めたのだった。

 ちなみに、マッサージ中、やたらと艶めかしい声を出すルリアのせいで、ご近所さんからひっそりとを受けていた事に、気づくよしはなかった。




「それなら、冒険者認定試験を受けないとだね」

 しばらくして回復し起き上がってきたルリアに、スキルの事と、冒険者になる日も近いのではと話したところ、初めて聞くワードが出てくる。

「試験…? もしかして、冒険者て自由になれるものじゃないのか…?」

「そりゃぁ、未熟な人が冒険者になんかなったら、すぐに死んじゃうからねぇ」

「それも、そうか…」
「でも今のレイちゃんなら、多分受かるんじゃないかなぁ」
「本当か?」

「多分だけどねー。試験監してる訳じゃないから、そういうのは事前にデッくんに聞いてみるのがいいとおもうよぉ?」

「分かった。今日は休日だし、今から行って早速聞いてみるよ」

「それにしてもぉ、そっかぁ…。魔法、使えるようになったんだねぇ…」

「まぁまだ使えると確定したわけじゃないけどな」

「…も…ないと…」
 ルリアが小さい声で何かを呟くがうまく聞き取れなかったので聞き返す。

「ん? 何か言ったか?」

「ううん、なんでもなーい」

 誤魔化されてしまったが、なんとなく『もう聞くな』オーラを感じ取った俺は、それ以上の言及は避ける事にした。

 そんなやり取りを済ませた俺は、デグのいるギルドの訓練所へと向かった。


「よぅレイジ。今日も精が出るな」
 訓練所の受付で、デグが迎えてくれるので、こちらも挨拶を返す。

「お疲れ様です、デグさん」

「で、今日はどの訓練にするんだ? 投擲か? それとも弩か?」

「実はですね、聞きたい事がありまして…」

 俺は、分析スキルを会得したということと、魔法操作のレベルが上昇したこと、さらに投擲物に対して魔法操作をかけれるのかどうか、それぞれデグに尋ねた。

「スキルの会得やレベル上昇はひとまずおめでとう。んで、最後の質問だが…正直実例がねーな。ちょっと試してみるか? 今ちょうど訓練室も一室空いているしな」

「はい、お願いしたいです」

 俺はデグの案内で、空室の訓練室へと誘導される。
 そしてデグが、的が付いた棒を何本が地面に突き刺して、投擲訓練の準備をしてくれた。

「んじゃ、まずは普通に投擲をして、二回目は魔力を込めるつもりで投げてみろ。違いを見ててやる」

 デグは、的から少し離れたところに陣取って、腕を組み的を見つめる。

 俺は言われた通り、まずは普通に訓練用の丸い球を思いっきり的に向かって投げつけた。
 訓練用の球はとても柔らかい為、的を貫通するようなことはないが、ほぼ中央に命中し、的を揺らしたので、中々の精度と威力ではあっただろう。

 続いて、魔力を流し込むイメージを保ったまま、勢いよく球を的に向かって投げつけると、意識しすぎたのか、的を外してしまう。

 あぁ…と溜息を漏らしたその刹那、クンッと球が急カーブを描き、的の後ろに勢いよく命中したかと思えば、的が弾けとんでしまった。

 これには、俺だけでなく、デグも口をあんぐりとさせている。

 訓練室を静けさが包む中、パタッと的の破片が床に落下したのだった。










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