お布団から始まる異世界転生 ~寝ればたちまちスキルアップ、しかも回復機能付き!?~

雨杜屋敷

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3章 異世界技能編

第41話 おやつタイム

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「訓練って、ふぉんな事するんでふか…?」

 キリーカが、自身のお手製のクッキーを頬張りながら、先日の訓練の話題を振った俺に対して質問を投げかける。

 今はお昼時のピークタイムを終えて、お店は準備中の看板を表に出している。
 エリスさんはまだ厨房で作業を続けているが、しばらくすれば休憩をしにやってくるだろう。
 その為、キリーカと共に食事を先に済ませて、今はお菓子をつまんでいる。

 相変わらずキリーカの作るお菓子はおいしい。
 レパートリーも豊富で、ちょっとした毎日の楽しみでもあった。
 一昨日はマフィン、その前はスポンジケーキだった。
 今日は香ばしさがたまらない、バタークッキーだ。

「初日だったから、色んな武器を振り回したり、座学とか、あとは基本的な構えについてとかだったな。それだけでもかなり疲れたけど」

「でも、今日もいつも通りに見えました。体力、あるんですね」

 その言葉に、そうでもないよと笑って誤魔化す。

 睡眠スキルとお布団については話してはいないので、なんとも説明がしづらいのである。

 確かに、肉体労働スキルのおかげで、ここでの仕事に対しては疲れにくくなっているものの、基礎体力があるわけではないので、体力があるというのは語弊がある。

「同居人に、入念にマッサージしてもらったから、そのおかげかもな」

さんでしたっけ…。お優しい人なんですね」

 キリーカには、ルリアの事は同性の同居人ルリアンとして説明をしている。

 この子に、俺は女装男と同居してるんだぜハハハとでも説明して、苦笑いでもしながら引かれようものなら、俺はこの食堂から身を引くことになるだろう。

 まぁなんというか、嘘をついている訳ではないのでいいだろう、という事にする。
 ただ、聞かれていないから答えていないだけなのである。

「まぁ、優しい…のかな?」

「優しいと思い、ますよ?」

「…そういうことにしておこうか」

「…仲、悪いんですか?」

「そういうわけでもないんだけどな…」

 キリーカがクッキーの端を、その小さな口で咥えながら、心配そうに首をかしげる。

 何だその仕草は、リスかハムスターか何かの小動物のようで父性が沸き立つじゃないか。

 俺は誤魔化すように、キリーカの頭をぽふぽふと撫でながら、仲は良い方だから大丈夫だよ、と言った。

 キリーカは俺に撫でられながら安心したようにクッキーをちょびりと齧った。

「えっと、それで…何を練習するかは、決めたんです、か…?」

「あぁ。投擲と、弩と、魔法に適正があったっぽいから、そのあたりかな。具体的にどうしていくかは、監督してくれてる人に聞きながらって感じかな。」

「魔法、使えるんですね、すごいです」

「いやまぁ、まだ使えないんだけどな」

「適正、あったのに、ですか?」

「なんというか、そのあたりは俺も良く分からなくてな」

「そうですか…、難しいお話なんでしょうね」

 実際は、魔法を何も会得していないのに魔法操作のスキルだけ付いてしまったからなのだが、そんなデタラメな事を言うわけにもいかず、歯切れの悪い回答になってしまった。

 すまないキリーカ。訳わからないよな。
 でも俺だってわからないんだ。

「でも、弩が使える…なら、その…良かったら…なんですけど」

 なんだかキリーカまで歯切れが悪くなっている。
 どうかしたのだろうか。

「どうした?何でもいいからいってごらん」

「えっと…、今度…」

「ふーっ、やーっと片付け終わったよ。お、美味しそうなクッキーじゃないか。あたしにも分けとくれよ」

 仕事を終えたエリスさんが、額の汗を首に巻いたタオルで拭き取りながら、やってきた。

「ちゃんと取ってありますよ。ほら」
 そういって、クッキーを取り分けている小皿をエリスさんの方へとスライドさせる。

「さすが、気が利くねぇ」

「あ、それでキリーカ。何の話だったかな」

 エリスさんが来たことで中断されていた会話を聞くために、キリーカに向き直ると、何やら下を向いてしまっていた。

 声をかけると、面を上げて瞳を左右に揺らしながらポツリと言った。

「あ、その…………、クッキー、美味しい、ですか?」

「ん?あぁ、今日のお菓子もすごく美味しいよ」

「そうですか、良かったです」

 キリーカは、俺の返事を聞いて笑顔に戻るが、その前の様子が、少し気がかりになっていた。

 しかし、なんとなくだが、気にしてほしくはなさそうな様子をみて、敢えて聞き直すのは止めにする事にした。

 その後は三人で世間話をして、休憩が終わればまた仕事に戻った。
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