お布団から始まる異世界転生 ~寝ればたちまちスキルアップ、しかも回復機能付き!?~

雨杜屋敷

文字の大きさ
上 下
39 / 80
3章 異世界技能編

第39話 マッサージ

しおりを挟む
 家に着いてからというもの、お布団に寝転がり寝ようとするが、体の痛みでうまく眠りに入る事が出来ないでいた。

 眠ってさえしまえば、体力も回復すると思うのだが、チート布団の思わぬ弱点を発見してしまったようだ。

 太ももを自分でグリグリと押したり、足を曲げてストレッチをしていると、ルリアがこちらを覗き込んでくる。

「だーいじょーぶぅ?」

「体痛いのが気になってなかなか眠れない感じ。だからストレッチして体ほぐしてる」

「ふぅん…」

 相変わらず自分で聞いておいて興味の無さそうな返事をするなと感じていると、ルリアが俺の体をうつ伏せにさせようとしてくる。

「ボクが、眠れるようにマッサージしてあげよっかぁ?」

「え………、あぁ、すまん。頼むわ」

 少し返事に悩むも、お願いすることにする。
 悩んだのは、悪いという気持ち半分、何か変なことをしてくるんじゃないかという勘ぐり半分であった。

 体を回転させ、うつ伏せになると、早速ふくらはぎを横からグニグニと両の手で揉みほぐしてくれる。

 少しばかり物足りなさを感じ、もっと強くてもいいぞと伝えると、グッと先程までより力が入り、丁度よい力加減となった。
 思わず、おぉ…と声が漏れると、ルリアはにひひと嬉しそうに笑った。

 右から左へとまんべんなく、ふくらはぎから太腿へと、入念にマッサージしてくれる。
 人にやってもらうのと、自分でやるのとでは、気持ちよさが段違いである。
 しばらく心地よい感覚に浸っていると、太ももから手が離れる。

「じゃあ次は足裏ふみふみするねー」

 ルリアは立ち上がると、履いていた靴下を脱いで裸足になり、足のかかとでつちふまずを踏み始める。

 ちょうど良い重さで踏んでくれるので、とても痛気持ちい。
 どんどんと足先に貯まった疲れが取れていく。

「どーですかーお客さん、気持ちいいですかぁ?」

「あぁ…、ちょうどいいよ」

 こんな感じで、下半身の筋肉を全体的にほぐしてもらった後は、上から跨がられた状態から、腰や背中周り、さらには腕のマッサージまでしてくれた。

 おかげで次第に心地のよい眠気が襲ってきて、正直後半はうる覚えである。
 そして、いつのまにか眠ってしまっていたようだ。





 目が覚めると、仰向けになっており、辺りを見渡すと部屋も窓の外も暗くなっている。
 身動きを取ろうと腕を動かそうとすると、何かに固定されているような感覚を受ける。
 というより、何かに抱きつかれているような気がする。

 なんとなく予想はつきつつも、かけ布団をめくると、すやすやと心地よさそうな寝息を立てながら、俺の半身に抱きついて眠っているルリアがいた。

 コイツの事だ、マッサージをしている間に眠ってしまった、という訳ではないような気がする。
 とはいえ、何とも気持ちよさそうに眠っており、さらにはマッサージをしてもらった借りもある為、いつもなら叩き起こすのだが、少し躊躇われた。

 しばし悩んだ末、今日に関しては目をつぶる事に決める。
 となると動くに動けないので、仕方なくそのまま再び眠りにつく事にしたのだった。



 ちゅんちゅんという可愛らしい鳥の鳴き声と、何かが頬に触れる感触で目が覚める。
 目を開けると、カーテンの合間から差し込む陽の光によって、部屋はいくらか明るくなっており、朝を迎えたという事が分かる。

 そして先程から、頬に感じる謎の感触の原因と目で追うと、にへにへとだらしのない笑みを浮かべながら俺の頬を指先でつついて楽しんでいる輩がいた。

「おい、つつくのやめろ」

「えへへ、おはよぉレイちゃん」

「おはよう、じゃなくてだな。そもそも何でこっちで寝てるんだ」

「んー、ちょっとぉ試してみようかなって思ってぇ」

 恐らく、睡眠スキルの同…、添い寝効果について言っているのだろう。

「ったく、俺が先に寝落ちしたのを良いことに…」

「そんなに嫌だったなら、途中起きた時に起こしても良かったんだよぉ?」

 こいつ…、あの時起きてやがったのか。

「…マッサージしてもらった借りもあったし、寝てると思ってたから起こさなかったんだよ」

「本当はボクと一緒に同衾出来て嬉しかったから黙っいっったぁい!」

 眼の前にあった額に向かって、思いっきりデコピンを食らわせてやると、ゴロゴロと布団から転げ落ちるようにして悶え回っている。

「さてと。疲れもしっかり取れたし、スキルの確認でもしてみるか。ほら、分析スキル使ってくれよ」

「うぅ…都合の良い時だけ使って…ボクは都合の良い女じゃないんだからね!」

「そうだな、男だもんな」

「そういう事じゃなぁいー!」

 横になったまま地団駄を踏むが、相手にしても長引くだけなので、無視して布団を畳み、顔を洗ったりと最低限の身支度を整えた。

 そのまましばらく放っていた為ついに諦めたのか、溜息をつきながらゆっくりと起き上がり、少し意地けつつも、スキルチェックをしてくれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

せっかく異世界に転生できたんだから、急いで生きる必要なんてないよね?ー明日も俺はスローなライフを謳歌したいー

ジミー凌我
ファンタジー
 日夜仕事に追われ続ける日常を毎日毎日繰り返していた。  仕事仕事の毎日、明日も明後日も仕事を積みたくないと生き急いでいた。  そんな俺はいつしか過労で倒れてしまった。  そのまま死んだ俺は、異世界に転生していた。  忙しすぎてうわさでしか聞いたことがないが、これが異世界転生というものなのだろう。  生き急いで死んでしまったんだ。俺はこの世界ではゆっくりと生きていきたいと思った。  ただ、この世界にはモンスターも魔王もいるみたい。 この世界で最初に出会ったクレハという女の子は、細かいことは気にしない自由奔放な可愛らしい子で、俺を助けてくれた。 冒険者としてゆったり生計を立てていこうと思ったら、以外と儲かる仕事だったからこれは楽な人生が始まると思った矢先。 なぜか2日目にして魔王軍の侵略に遭遇し…。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

内気な僕は異世界でチートな存在になれるか?@異世界現代群像のパラグラフ

木木 上入
ファンタジー
 日々の日常に悩み、ついつい色々な事を思い詰めしまう高校生、桃井瑞輝(ももいみずき)。  異世界の小さな村で日々を過ごしている少女、エミナ。  瑞輝がふとしたきっかけで異世界の少女に転生したことで、二人は出会うことになる。  そして、運命は動き出した――。 ------------------------------------ よりよい小説を書くために、Webカンパも受け付けています。 こちらのページからhttp://www.yggdore.com/ https://twitter.com/kikifunnelへお送りください

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

異世界に召喚されたおっさん、実は最強の癒しキャラでした

鈴木竜一
ファンタジー
 健康マニアのサラリーマン宮原優志は行きつけの健康ランドにあるサウナで汗を流している最中、勇者召喚の儀に巻き込まれて異世界へと飛ばされてしまう。飛ばされた先の世界で勇者になるのかと思いきや、スキルなしの上に最底辺のステータスだったという理由で、優志は自身を召喚したポンコツ女性神官リウィルと共に城を追い出されてしまった。  しかし、実はこっそり持っていた《癒しの極意》というスキルが真の力を発揮する時、世界は大きな変革の炎に包まれる……はず。  魔王? ドラゴン? そんなことよりサウナ入ってフルーツ牛乳飲んで健康になろうぜ! 【「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」1巻発売中です! こちらもよろしく!】  ※作者の他作品ですが、「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」がこのたび書籍化いたします。発売は3月下旬予定。そちらもよろしくお願いします。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

処理中です...