お布団から始まる異世界転生 ~寝ればたちまちスキルアップ、しかも回復機能付き!?~

雨杜屋敷

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3章 異世界技能編

第34話 今後の方針

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 まず考えたのは、そもそも俺はこの異世界で何を一番に優先したいのか、という事だろう。
それ次第では、今後とる行動が大きく変わってくる。

 色々と考えた結果出した答えが、抽象的ではあるが、自分が楽しいと思える事をとにかく沢山していきたい、というものだった。

 街で平穏に暮らす事。
 それはそれで魅力的だし、今の生活にも不満はない。

 ただ、日本ではなりたくてもなれなかった特別な何かになれる可能性が出てきてしまった以上、それだけでは物足りなく感じてしまうのも事実で…。

 せっかくファンタジーの世界に来たのだから、冒険というものもしてみたいが、この街を離れたくもない。

 魔法なんかも使えるなら使ってみたいし、何か人の役に立つ事がしてみたい。

 あんまり危険な事はしたくないけれど、ワクワクすることがしてみたい等、長い間失っていた少年心が疼くのを感じた。

 今感じている気持ちや考えをルリアに伝えると、思いの外真剣に話を聞いてくれる。そして、いくつかのアドバイスをくれた。

「んー、まずは、ギルドに戦闘訓練所があるから、そこでいろいろと経験してみるといいんじゃない? 冒険がしてみたいなら、護衛をつけるなんてお金のかかる事をしない限りは、自分で自分の身は守らなくちゃなんだし、そこでスキルを身につけてみたら? レイちゃんなら、すぐスキル身につくだろうし」

 確かに、普通の人の約600倍の速度で成長出来るのであれば、すぐに色んな戦闘スキルが身につくかもしれない。
 ただ、そもそも才能の無いスキルは習得が出来ないので、色々試してみる必要がありそうだ。

「ただ…スキルの成長具合が半端ないから、レイちゃんのスキルは極力隠しておいたほうが良いと思うよぉ。信頼のおける人ならいいかもしれないけどさ」

「まぁ、普通じゃないもんな」

「初めて見たし、聞いたこともないよぉ。こんなチートスキル。変に妬まれるかもしれないし、学会の人たちに研究材料にされちゃうかもよー?」

 思わず背筋が凍りつき、表情が固まる俺を見て、ルリアが最後のは冗談だと笑ってくれるが、可能性が無いとも言い切れないのではないかと感じた。

「だから成長具合を確かめたい時は、ボクに声をかけてね。練習場を貸し切ってあげるから、そこで色々テストしたらいいよ」

「なんか、変なことに巻き込んでしまって、ごめんな」

「もー、別にいいって。ボクとレイちゃんの仲でしょ。水臭いぞー」

 ルリアは気にもとめない様子で、にひにひと笑みを浮かべている。

「でも驚いたなぁ。レイちゃん、冒険とかしてみたかったんだ」

「何だよ…」

「レイちゃんは、平穏無事に生きていくタイプだと思ってたからさー」

「まぁ、それはそうなんだけどさ」

 せっかくの二度目の人生。以前のような自分には戻りたくは無かった。

「せっかくの人生なんだから、色々挑戦してみようかなって。ありがたいことに、こんなチートスキルもある事だし」

「…そっか。それじゃあ、ボクも応援したげるよ。レイちゃんの幸せ人生計画」

 よくあるテレビ番組のような事を言われて、なんだよそれと思わず吹き出すと、ルリアもつられてにひひと笑った。

「それから、この街からあまり離れないで冒険をするってのも両立出来ると思うよ。あくまで、拠点をこの街にして、冒険者として近隣の問題解決屋さんみたいになればいいんだよ」

「そうか、その手があるのか。しかし、冒険者かぁ…」

 改めて言われると、冒険者になるという事自体に実感が無い。
 こればっかりは、訓練所で色々試してみながら、結論を出すしか無いと思った。

「冒険者といっても、いっつも冒険したり戦っている訳じゃないからね。依頼が無い時は、のんびり遊んで過ごしたり、酒場に入り浸ってたり、普通の日雇いの仕事をしている人だっているよ。中には、ずっと街の外で暮らしてたり、ずーっと魔物を狩ってるような変わり者もいるにはいるけどねぇ」

 どの世界にも、どの仕事にも一定のジャンキーはいるようだ。

「俺は、街で仕事したり遊んだりしながら、たまに冒険に行くぐらいがちょうど良い気もするなぁ」

「あとは冒険者になるなら、個人でも大丈夫だけど、チームを組む人の方が多いから、チームを組むなら、同じ感覚の人と組む必要があるよ。じゃないと、考え方の違いでチームが崩壊しちゃうから」

 俺のような平和的な考えの冒険者などいるのか少し不安になるが、最悪個人も有りならばそれでもいいような気もしてきた。
 少し寂しいような気もするが…。

「まぁ戦闘訓練所での訓練中に自然とチーム候補が決まる人が多いから、レイちゃんもその間に決まるんじゃないかな?」

「そうだといいんだけどな」

 俺は後ろ手に後頭部を指先で掻いた。

「なんならぁ…」

「ん、なんだ?」

「…んー、なんでもない」

「なんだそれ。」

 それから、しばらく沈黙が続き、ふとルリアが呟くに言う。

「じゃぁ、早速行ってみるぅ? 訓練」

「…そんなちょっと出かけてくる、みたいなノリでも大丈夫なもんなのか?」

「大丈夫大丈夫、特に面倒な手続きはいらないから。ギルド会員ならいつでもオッケー。まぁ夜中とかだと師範役が少ないから難しかったりもするけどねぇ」

 本当に大丈夫なのかと少し勘ぐってしまうが、ルリアも付いてきてくれるとの事なので、一応信用することにする。

 ルリアは俺が馬小屋の掃除をしている間に、ある程度の準備は済ませていたようなので、後は二人して着替えだけ済ませ、外行きの格好になってから家を出た。


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