お布団から始まる異世界転生 ~寝ればたちまちスキルアップ、しかも回復機能付き!?~

雨杜屋敷

文字の大きさ
上 下
34 / 80
3章 異世界技能編

第34話 今後の方針

しおりを挟む
 まず考えたのは、そもそも俺はこの異世界で何を一番に優先したいのか、という事だろう。
それ次第では、今後とる行動が大きく変わってくる。

 色々と考えた結果出した答えが、抽象的ではあるが、自分が楽しいと思える事をとにかく沢山していきたい、というものだった。

 街で平穏に暮らす事。
 それはそれで魅力的だし、今の生活にも不満はない。

 ただ、日本ではなりたくてもなれなかった特別な何かになれる可能性が出てきてしまった以上、それだけでは物足りなく感じてしまうのも事実で…。

 せっかくファンタジーの世界に来たのだから、冒険というものもしてみたいが、この街を離れたくもない。

 魔法なんかも使えるなら使ってみたいし、何か人の役に立つ事がしてみたい。

 あんまり危険な事はしたくないけれど、ワクワクすることがしてみたい等、長い間失っていた少年心が疼くのを感じた。

 今感じている気持ちや考えをルリアに伝えると、思いの外真剣に話を聞いてくれる。そして、いくつかのアドバイスをくれた。

「んー、まずは、ギルドに戦闘訓練所があるから、そこでいろいろと経験してみるといいんじゃない? 冒険がしてみたいなら、護衛をつけるなんてお金のかかる事をしない限りは、自分で自分の身は守らなくちゃなんだし、そこでスキルを身につけてみたら? レイちゃんなら、すぐスキル身につくだろうし」

 確かに、普通の人の約600倍の速度で成長出来るのであれば、すぐに色んな戦闘スキルが身につくかもしれない。
 ただ、そもそも才能の無いスキルは習得が出来ないので、色々試してみる必要がありそうだ。

「ただ…スキルの成長具合が半端ないから、レイちゃんのスキルは極力隠しておいたほうが良いと思うよぉ。信頼のおける人ならいいかもしれないけどさ」

「まぁ、普通じゃないもんな」

「初めて見たし、聞いたこともないよぉ。こんなチートスキル。変に妬まれるかもしれないし、学会の人たちに研究材料にされちゃうかもよー?」

 思わず背筋が凍りつき、表情が固まる俺を見て、ルリアが最後のは冗談だと笑ってくれるが、可能性が無いとも言い切れないのではないかと感じた。

「だから成長具合を確かめたい時は、ボクに声をかけてね。練習場を貸し切ってあげるから、そこで色々テストしたらいいよ」

「なんか、変なことに巻き込んでしまって、ごめんな」

「もー、別にいいって。ボクとレイちゃんの仲でしょ。水臭いぞー」

 ルリアは気にもとめない様子で、にひにひと笑みを浮かべている。

「でも驚いたなぁ。レイちゃん、冒険とかしてみたかったんだ」

「何だよ…」

「レイちゃんは、平穏無事に生きていくタイプだと思ってたからさー」

「まぁ、それはそうなんだけどさ」

 せっかくの二度目の人生。以前のような自分には戻りたくは無かった。

「せっかくの人生なんだから、色々挑戦してみようかなって。ありがたいことに、こんなチートスキルもある事だし」

「…そっか。それじゃあ、ボクも応援したげるよ。レイちゃんの幸せ人生計画」

 よくあるテレビ番組のような事を言われて、なんだよそれと思わず吹き出すと、ルリアもつられてにひひと笑った。

「それから、この街からあまり離れないで冒険をするってのも両立出来ると思うよ。あくまで、拠点をこの街にして、冒険者として近隣の問題解決屋さんみたいになればいいんだよ」

「そうか、その手があるのか。しかし、冒険者かぁ…」

 改めて言われると、冒険者になるという事自体に実感が無い。
 こればっかりは、訓練所で色々試してみながら、結論を出すしか無いと思った。

「冒険者といっても、いっつも冒険したり戦っている訳じゃないからね。依頼が無い時は、のんびり遊んで過ごしたり、酒場に入り浸ってたり、普通の日雇いの仕事をしている人だっているよ。中には、ずっと街の外で暮らしてたり、ずーっと魔物を狩ってるような変わり者もいるにはいるけどねぇ」

 どの世界にも、どの仕事にも一定のジャンキーはいるようだ。

「俺は、街で仕事したり遊んだりしながら、たまに冒険に行くぐらいがちょうど良い気もするなぁ」

「あとは冒険者になるなら、個人でも大丈夫だけど、チームを組む人の方が多いから、チームを組むなら、同じ感覚の人と組む必要があるよ。じゃないと、考え方の違いでチームが崩壊しちゃうから」

 俺のような平和的な考えの冒険者などいるのか少し不安になるが、最悪個人も有りならばそれでもいいような気もしてきた。
 少し寂しいような気もするが…。

「まぁ戦闘訓練所での訓練中に自然とチーム候補が決まる人が多いから、レイちゃんもその間に決まるんじゃないかな?」

「そうだといいんだけどな」

 俺は後ろ手に後頭部を指先で掻いた。

「なんならぁ…」

「ん、なんだ?」

「…んー、なんでもない」

「なんだそれ。」

 それから、しばらく沈黙が続き、ふとルリアが呟くに言う。

「じゃぁ、早速行ってみるぅ? 訓練」

「…そんなちょっと出かけてくる、みたいなノリでも大丈夫なもんなのか?」

「大丈夫大丈夫、特に面倒な手続きはいらないから。ギルド会員ならいつでもオッケー。まぁ夜中とかだと師範役が少ないから難しかったりもするけどねぇ」

 本当に大丈夫なのかと少し勘ぐってしまうが、ルリアも付いてきてくれるとの事なので、一応信用することにする。

 ルリアは俺が馬小屋の掃除をしている間に、ある程度の準備は済ませていたようなので、後は二人して着替えだけ済ませ、外行きの格好になってから家を出た。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。

いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成! この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。 戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。 これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。 彼の行く先は天国か?それとも...? 誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。 小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中! 現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

処理中です...