お布団から始まる異世界転生 ~寝ればたちまちスキルアップ、しかも回復機能付き!?~

雨杜屋敷

文字の大きさ
上 下
30 / 80
3章 異世界技能編

第30話 貴重な人材

しおりを挟む
「おかえりぃ、今日はちょっと遅かったねぇ」

 扉をノックすると、エプロン姿のルリアが鍵を開けて出迎えてくれるが、何故か片手に"おたま"を持っている。

 料理中だったのだろうか、はたまた″可愛い″のための小道具なのかとも思ったが、奥からいい匂いがしてきたので、前者だったのだろう。

「ただいま。仕事終わりにちょっと話しこんじゃってな」

「ふーん」

 尋ねてきた割に何とも興味が薄そうである。
 それなら聞かなくても良かったのではと思うが、会話の流れでなんとなく聞いたのだろうと勝手に納得する事にした。

「あ、ご飯にする?それとも水浴び?それともー」

 何やらもじもじとしだすので、余計な事を言い始める前に、ご飯で、と返答する。

「む…まぁオッケー。それじゃあ準備するねぇ」

 一瞬頬を膨らませたが、すぐに機嫌を治してリビングへと戻っていくので、そのままついていく。
 俺は荷物を布団の脇に置き、その間にルリアは手際よく、既に作ってあったであろう料理をテーブルに綺麗に並べていく。

 テーブルの上に目をやると、どうやら今日の晩御飯は、野菜サラダと、ハンバーグ…のようなものが添えられたライスの組み合わせだ。

 料理名を聞いてみると、ハンバーグも覚えてないのかと目を見開かれてまで驚かれた。どうやら俺の中で起きている『自動翻訳』で、ほとんどのものが日本と同じ名称になっているようだった。
 サラダはサラダだし、ミニトマトのような赤く丸い野菜はミニトマトだった。

 何とも変な感じがしたが、明日以降固有名詞を言う事に戸惑わなくて良くなったので、良しとする。

 というか『焼き飯』が『焼き飯』であった時点で気づくべきだったという考えに至るのは、数日後の事だった。

 改めてルリアが作ってくれた料理を眺めると、ミニトマトや茹でた卵の周りに敷かれているレタスは、みずみずしくてとても美味しそうだ。

 ハンバーグも、肉汁が浮いていてとても美味しそうだ。おっさんの体だったなら少々キツいだろうが、今は若い体なのできっと大丈夫だろう。

「今日も美味そうだな」

「にへへ、でしょー? いっぱい食べてねぇ」

「それじゃあ、冷めちゃう前に…いただきます」

「どーぞぉ、召し上がれー」

 早速ハンバーグを切り分けて、ライスの上に数回ドロップして口に頬張ると、予想通りの旨味が肉汁と共に押し寄せてくる。
 すかさず先程肉汁をほどよく付着させたライスも同時に頬張ると、口の中がカーニバル状態である。

 俺が食べている様子を、ニマニマとしながらしばらく見てくるルリアに、
「あんまりジロジロ見るなよ、てか食わないのか?」
 と聞くと、食べる食べるといって、ルリアもハンバーグを食べ始めた。


 食事をしながら、日中『ノヴェライト図書館』へ行った話をすると、お勉強出来て偉いねぇと子供を褒めるような言い方をされながらテーブル越しに頭を撫でてこようとするので、伸びてきた腕に中指で軽くピシッとデコピンならぬウデピンを食らわせる。
 いてっと腕を引っ込め、大げさに腕をさすりながら、レイちゃんのいけずーと罵ってくる。

「んで、結局ぅ知りたい事は知れたの?」

「まぁ大体は。後は、俺自身のスキルを確認してって感じかな」

「んふふふふふ…」

「…何だ、気味の悪い」

「気味が悪いはひどくない!?」

「だったら何の笑いだよ」

「よくぞ聞いてくれましたぁ! 何を隠そう、このルリアちゃん様は、スキルチェックが可能な『分析スキル』持ちなのでしたー!」

 わざわざ椅子から立ち上がり、椅子に片足を乗せ胸に手を当てて、声高々にそう宣言する。
 というか分析スキルってそこそこ貴重なんじゃと思いつつも、なら何故教えてくれなかったのかと疑問に思い、尋ねてみると

「だってぇ、いきなり教えちゃってたらぁ、ボクのぉ、あ・り・が・た・み・が、分からなかったでしょぉ?」

 なんとも俗物的というか、ルリアらしい理由出会ったため、そーですかと適当に相槌を打つと満足げに続けて、
「そうそう! だからぁ、レイちゃんがどーしてもぉって言うなら、と・く・べ・つ・に、友達価格ってやつで調べてあげてもいいよぉ?」

「金はしっかり取るのな…」

「そりゃそーだよぉ。普通にスキルチェックを依頼したら銀貨十枚は取られるのが相場なんだよぉ? 本当に貴重なスキルなんだからー。ちゃんと理解ってるぅ?」

 そう言われると、確かに気軽にタダで請け負うようなものではないのだろうと感じる。
 日本でも、何か専門的な知識や技術を持っていると、友達なんだからタダでやってくれるよね、的な事案はよく聞く話だ。
 俺は、素直に良くない考え方だったとルリアに謝る。
 ルリアは、分かればよろしいと満足げに頷いた。

「ってことで、レイちゃんはー、特別に銀貨五枚でいいからねぇ」

「銀貨五枚かぁ…」

 現在、手持ちの金銭を確認してみるが、だいたい銀貨一枚程度である。スキルの確認は、もう少し働いて稼いでからになりそうだ。

「今はまだ依頼出来なさそうだ。しばらく働いて、銀貨五枚分揃ったときにお願いするよ」

「オッケー。仕事前じゃなかったらいつでもいいからねー。ちなみに、覚えたかったら、ちゃんと相場分の支払いはしてもらうけれどー、伝授もしてあげれるからねー」

 聞き覚えの無いスキル名が出てきて、思わず聞き返してしまう。すると、人差し指を立ててルリアが説明を始めた。

「まず、ボクのスキルは分析・伝授・添付、あとは装飾に家庭料理なんだけれど…、伝授っていうスキルは他人に自分のスキルを教える事が出来るんだぁ」

「それってものすごい事なんじゃないのか?」

「そだよー。ただねぇ、気安く伝授をしまくってたら、身が持たないんだよぉ…。伝授ってすごい体力使うんだよねぇ…。だから、ある程度しっかりとした金額は請求させてもらうし、一ヶ月に一回までって縛りもギルド規約で定められてるだよぉ」

 つまり、ただでさえ貴重な"分析+添付スキル"持ちというだけでなく、『伝授』という"チートスキル"まで持ち合わせているという事は、こいつルリアは人材としてはかなり貴重なのではないだろうかと感じた。

 それと同時に、でもギルドに雇われている理由が理解わかってしまった。
 ギルドからすれば、まともに仕事をするしない問わず、確保しておきた人材なのだろう。

「だから、レイちゃんとはいえ、決まりは守ってもらわないとね」

 俺はもちろんだと頷く。

「あーあとねぇ、スキルは、誰にでも何でも伝授出来るわけじゃないからねー。スキルについて調べたなら分かると思うけど、才能が無ければ、いくら伝授スキルを駆使しても覚えられないものは覚えられないから」

「まぁでも一応試してみる価値はありそうだよな。特に分析スキルなんかは、あるとかなり便利そうだし…。お金が溜まったらの話だが、その時はお願いするよ」

「おけおけー、いいよいいよー。レイちゃんだったら大歓迎ー」

 ルリアはどこか楽しげに、親指を立てながらそう言った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

せっかく異世界に転生できたんだから、急いで生きる必要なんてないよね?ー明日も俺はスローなライフを謳歌したいー

ジミー凌我
ファンタジー
 日夜仕事に追われ続ける日常を毎日毎日繰り返していた。  仕事仕事の毎日、明日も明後日も仕事を積みたくないと生き急いでいた。  そんな俺はいつしか過労で倒れてしまった。  そのまま死んだ俺は、異世界に転生していた。  忙しすぎてうわさでしか聞いたことがないが、これが異世界転生というものなのだろう。  生き急いで死んでしまったんだ。俺はこの世界ではゆっくりと生きていきたいと思った。  ただ、この世界にはモンスターも魔王もいるみたい。 この世界で最初に出会ったクレハという女の子は、細かいことは気にしない自由奔放な可愛らしい子で、俺を助けてくれた。 冒険者としてゆったり生計を立てていこうと思ったら、以外と儲かる仕事だったからこれは楽な人生が始まると思った矢先。 なぜか2日目にして魔王軍の侵略に遭遇し…。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

異世界に召喚されたおっさん、実は最強の癒しキャラでした

鈴木竜一
ファンタジー
 健康マニアのサラリーマン宮原優志は行きつけの健康ランドにあるサウナで汗を流している最中、勇者召喚の儀に巻き込まれて異世界へと飛ばされてしまう。飛ばされた先の世界で勇者になるのかと思いきや、スキルなしの上に最底辺のステータスだったという理由で、優志は自身を召喚したポンコツ女性神官リウィルと共に城を追い出されてしまった。  しかし、実はこっそり持っていた《癒しの極意》というスキルが真の力を発揮する時、世界は大きな変革の炎に包まれる……はず。  魔王? ドラゴン? そんなことよりサウナ入ってフルーツ牛乳飲んで健康になろうぜ! 【「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」1巻発売中です! こちらもよろしく!】  ※作者の他作品ですが、「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」がこのたび書籍化いたします。発売は3月下旬予定。そちらもよろしくお願いします。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

処理中です...