25 / 80
3章 異世界技能編
第25話 夜が明けて
しおりを挟む
飲み会の次の日の朝だというのに、随分とスッキリ目が覚めた。
転生前は大抵二日酔いに襲われていたが、コレも若い体の為せるものなのだろうか。疲れもしっかりと取れており、清々しい朝である。
しばらくしてルリアを起こすが、案の定昨夜の酒が祟っており、頭を抑えながらゆらゆらと立ち上がり、水を飲んでいた。
髪もボサボサのままで、唸り声まであげており、いつもの立ち振るまいはどこへやら、見る影もない。
「うぅ…きょぉ、休もうかな…」
「酒が理由で休めんのか?」
「むりだよねぇ…ったたた…」
乾いた笑いをこぼすが、それが頭に響いたのか両手でこめかみ辺りを抑えている。
「酔いを覚ます魔法でも使えれば、使ってやるんだけどな」
「レイちゃんは、元気そう、だねぇ…」
「そうだな。酔いも疲れも残ってないみたいだ」
「頑丈、みたいなスキルでも持ってるのかな…」
「俺は自重してたからだろ。お前が調子にノリすぎただけだ」
「うぅ…」
本当に辛そうだが、いかんせんどうすることもできない。
出来ることといえば、せいぜい、冷やした濡れタオルを持ってきてあげる事か、水のおかわりを持ってきてあげるくらいだ。
食欲も無いようなので、朝食は一人で取ることになった。
買い置きのパンを貰い、ミルクと一緒に食した。
その間もずっと、テーブルに頭を垂らしていた。
「レイちゃぁ…着替えさせてぇ…」
「そのくらいは自分でしろって…」
「そこに畳んでるやつ、もってきてぇ…」
「聞けっての、…ったく」
仕方なく俺はルリアの部屋の隅に畳んであった服一式をルリアの前まで運んでやる。
すると、んっと両手をだらりと上げ、バンザイの状態を取る。
「脱がせてぇ…」
「子供かよ…」
「早くぅ…遅刻するぅ…」
「だったら自分でやれっての」
そう言うと、うるうるとした眼で上目遣いをしてくる。
バンザイをしたままなので、少し滑稽である。
「レイちゃぁ…」
「わかったわかった。今日だけだからな」
「わーい、へへへ…ったた…」
「笑うと響くぞ」
そう言いながら、ルリアの寝巻きをすぽっと脱がしてやる。
すると、下着が薄水色のキャミソールで少し驚く。
見えない所まで徹底して女装しているとは…、つまり下もか。そんな事を考えながらも、バンザイの姿勢のままのルリアに、上着を被せてやる。
途中からはズルズルと裾を引っ張りながら自分で着てくれたので、すぐに着せる事ができた。
「ん…」
そういって今度は、足をまっすぐと伸ばす。
下を脱がせろという意味だろう。
なんとなく、なんとなくだが、下を脱がせるのは躊躇われた。
というか、これが普通の男同士であっても、少し複雑である。
俺は深くため息をついてから、寝巻きのフリフリズボンの裾を引っ張ってやる。
すると、ルリアがその瞬間少しお尻を浮かせる。
そして、随分と可愛らしいフリフリのものが顔を出しはじめたので、思わず目をそらす。
全くコイツはと、その徹底ぶりに呆れながらも、右足・左足と順番に穴を通して、下も履かせてやる。
こちらも太ももくらいまで履かせてやると、後は自分で履いてくれた。
「ほら、着替え終わったなら、髪とか整えるんだろ?」
「くしもやってぇ…」
「……」
もう反論するのも無駄と思い、なんとなくでだが、髪をといてやる。
髪が引っかかったりしないか心配だったが、思いの外サラサラで、ボサボサしていた髪はあっというまに整えられた。
日頃から何かしら手入れをしているのだろうか。
「んー、ありがとー、あとはやるよぅ」
そう言うと、鏡の前までのそのそ歩いていき、自分で髪を結い始める。
歩ける元気があるのなら、着替えもしてもらいたかったが、後の祭りだ。
「レイちゃんのおかげで、朝起きた時よりはマシになったかもぉ。ありがとねぇ」
「どういたしまして。準備出来たなら出るぞ」
「うぃー」
そうして二人で家を出る。ルリアが家に鍵をかけているうちに、ペリに日課の挨拶をする。
相変わらずフンッと鼻息だけ返してくれる。
「んじゃ、いってくんねぇ」
「無理はすんなよ」
「ん、あんがとねぇ」
まだ若干辛そうではあるが、笑顔を向けて手を振りながら去っていく。
そんな様子を、道往くヒョロ眼鏡の男性に見られ頷かれながら、俺は俺でひとまず食堂へと向かうのだった。
転生前は大抵二日酔いに襲われていたが、コレも若い体の為せるものなのだろうか。疲れもしっかりと取れており、清々しい朝である。
しばらくしてルリアを起こすが、案の定昨夜の酒が祟っており、頭を抑えながらゆらゆらと立ち上がり、水を飲んでいた。
髪もボサボサのままで、唸り声まであげており、いつもの立ち振るまいはどこへやら、見る影もない。
「うぅ…きょぉ、休もうかな…」
「酒が理由で休めんのか?」
「むりだよねぇ…ったたた…」
乾いた笑いをこぼすが、それが頭に響いたのか両手でこめかみ辺りを抑えている。
「酔いを覚ます魔法でも使えれば、使ってやるんだけどな」
「レイちゃんは、元気そう、だねぇ…」
「そうだな。酔いも疲れも残ってないみたいだ」
「頑丈、みたいなスキルでも持ってるのかな…」
「俺は自重してたからだろ。お前が調子にノリすぎただけだ」
「うぅ…」
本当に辛そうだが、いかんせんどうすることもできない。
出来ることといえば、せいぜい、冷やした濡れタオルを持ってきてあげる事か、水のおかわりを持ってきてあげるくらいだ。
食欲も無いようなので、朝食は一人で取ることになった。
買い置きのパンを貰い、ミルクと一緒に食した。
その間もずっと、テーブルに頭を垂らしていた。
「レイちゃぁ…着替えさせてぇ…」
「そのくらいは自分でしろって…」
「そこに畳んでるやつ、もってきてぇ…」
「聞けっての、…ったく」
仕方なく俺はルリアの部屋の隅に畳んであった服一式をルリアの前まで運んでやる。
すると、んっと両手をだらりと上げ、バンザイの状態を取る。
「脱がせてぇ…」
「子供かよ…」
「早くぅ…遅刻するぅ…」
「だったら自分でやれっての」
そう言うと、うるうるとした眼で上目遣いをしてくる。
バンザイをしたままなので、少し滑稽である。
「レイちゃぁ…」
「わかったわかった。今日だけだからな」
「わーい、へへへ…ったた…」
「笑うと響くぞ」
そう言いながら、ルリアの寝巻きをすぽっと脱がしてやる。
すると、下着が薄水色のキャミソールで少し驚く。
見えない所まで徹底して女装しているとは…、つまり下もか。そんな事を考えながらも、バンザイの姿勢のままのルリアに、上着を被せてやる。
途中からはズルズルと裾を引っ張りながら自分で着てくれたので、すぐに着せる事ができた。
「ん…」
そういって今度は、足をまっすぐと伸ばす。
下を脱がせろという意味だろう。
なんとなく、なんとなくだが、下を脱がせるのは躊躇われた。
というか、これが普通の男同士であっても、少し複雑である。
俺は深くため息をついてから、寝巻きのフリフリズボンの裾を引っ張ってやる。
すると、ルリアがその瞬間少しお尻を浮かせる。
そして、随分と可愛らしいフリフリのものが顔を出しはじめたので、思わず目をそらす。
全くコイツはと、その徹底ぶりに呆れながらも、右足・左足と順番に穴を通して、下も履かせてやる。
こちらも太ももくらいまで履かせてやると、後は自分で履いてくれた。
「ほら、着替え終わったなら、髪とか整えるんだろ?」
「くしもやってぇ…」
「……」
もう反論するのも無駄と思い、なんとなくでだが、髪をといてやる。
髪が引っかかったりしないか心配だったが、思いの外サラサラで、ボサボサしていた髪はあっというまに整えられた。
日頃から何かしら手入れをしているのだろうか。
「んー、ありがとー、あとはやるよぅ」
そう言うと、鏡の前までのそのそ歩いていき、自分で髪を結い始める。
歩ける元気があるのなら、着替えもしてもらいたかったが、後の祭りだ。
「レイちゃんのおかげで、朝起きた時よりはマシになったかもぉ。ありがとねぇ」
「どういたしまして。準備出来たなら出るぞ」
「うぃー」
そうして二人で家を出る。ルリアが家に鍵をかけているうちに、ペリに日課の挨拶をする。
相変わらずフンッと鼻息だけ返してくれる。
「んじゃ、いってくんねぇ」
「無理はすんなよ」
「ん、あんがとねぇ」
まだ若干辛そうではあるが、笑顔を向けて手を振りながら去っていく。
そんな様子を、道往くヒョロ眼鏡の男性に見られ頷かれながら、俺は俺でひとまず食堂へと向かうのだった。
0
お気に入りに追加
816
あなたにおすすめの小説

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~
春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。
冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。
しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。
パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。
そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ
さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。


聖剣如きがフォークに勝てると思ったか 〜秘伝の継承に失敗したからと家を追い出されたけど最強なので問題なし〜
農民ヤズ―
ファンタジー
魔創具という、特殊な道具を瞬時に生み出すことができる秘術がある魔法の世界。
公爵家の嫡男であるアルフレッド。日本で生きていた過去を思い出した少年は、自由に生きたいと思いながらも貴族の責務を果たすために真剣に生きていた。
貴族の責務。そのためにアルフレッドは物語の悪役貴族といったような振る舞いをし、他者を虐げていたのだが、それがいけなかった。
魔創具の秘術によって、家門の当主が引き継ぐ武器である『トライデント』を生成しようとするが、儀式を邪魔されてしまい、失敗。結果として、アルフレッドが生み出す魔創具は『フォーク』になってしまった。
そんなものでは当主に相応しくないと家を追い出されることとなり……。
※一応「ざまぁ」を目指して書くけど、ちょっとズレた感じになるかもしれません。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる