18 / 80
2章 異世界就活編
第18話 三日目の朝
しおりを挟む
「ふぁぁ…ねむぅ…」
大あくびをしながら、タオルを巻いたルリアが風呂場へと入ってくる。
反射的に、体を拭いていたタオルを股の間にあてがう。いや、別に同性同士なのだから、焦る必要はないのだが…。
人の印象というモノは、ほとんどがその見た目から来るとよく言われているが、正にその通りだと感じた。
というか、何でコイツは胸元からバスタオルを巻いてるんだ。
いくら可愛い格好というか、女装が好きでも、そこまで徹底するか普通と呆れの感情があがってくる。
「お、おい。今入ってるぞ」
ルリアをジトりと睨みながら言うと、
「んぁ…レイちゃん、ぉはよ…」
と、気の抜けた声で返事をしてくる。
「おはよ、じゃなくてだな…」
「あー、ちょうどいいやー。髪すすぐの手伝ってよー、一人でやると面倒なんだよねぇ…」
何がちょうどいいのかど思っていると、椅子に腰掛けている俺の前に、ルリアがちょこんと内股で座り込んだ。
勝手に話を進めるんじゃないと怒ろうとしていたが、ふと綺麗で白く細いが適度に柔らかそうな太ももが、タオルから露出し俺の視界に映り込む…いや待て、俺は何を見ているんだと思い、ルリアの後頭部に目を移す。
「おい、まだやるとはいってないぞ」
「いいじゃんかぁ。じゃーあ、初日の借りとかゆーの、今かえしてー」
後ろからでも分かるくらいに頬を膨らませて、そんな事をのたまう。
それを言われると言い返す事ができない。
深めのため息をついてから、俺は一度立ち上がり、片手であてがっていたタオルをしっかりと腰に巻き直してから、改めてルリアの後ろに座る。
「わかったよ。すすぎゃいいんだろ。どの程度やればいいんだ?」
「んー、適当に手ぐししながら流しててよ。良かったら言うからさー」
「…あいよ」
適当と言われても正直困るのだが、何となくで、やってみることにする。
ルリアの長い髪先を指で絡め取り、根本の方から毛先に向かってゆっくりと水をかけ、流していく。
体に水が極力かからないよう、髪を持ち上げて行うが故に、ふとルリアのうなじが目に入るが、すぐに目をそらす。
男同士、風呂に入っているだけだというのに、何か、とてもやりづらい。
それもこれも、全部コイツが悪いのだ。
そう思い、俺は、冷たい水をわざと背中にかけて仕返しをすると、ちゅべたっと、ルリアの背中がピクリと跳ねる。
「ちょっとー、冷たいんですけどぉ」
「悪い、手が滑ったんだ」
「ほんとかなぁ…。タオルを濡らして、透けて見えるボクの肌を見たくてやったんじゃ…」
「アホか」
ルリアの後頭部めがけて手刀をぺしっと落とすと、いて、と小さく声を漏らした。
「んー、そろそろいい感じかなぁ。ありがとねー」
互いに軽口を吐いていると、いつのまにやら満足いく状態にまでなっていたようだ。
毎日これを一人でやっていると考えるとなかなか大変そうである。
そんな事を考えながら、なら俺は先に出るぞと、退室の意を示し、立ち上がって外に出ようとすると、待って待ってと、ルリアに呼び止められる。
振り返ると、先程まで座っていた椅子にルリアが腰掛け、ちょんちょんと、先程までルリアがいた場所を指さしている。
まだ何かさせるつもりだろうか。
「背中、洗ってあげるよぉ。一人だと洗いづらいでしょ?」
ルリアが、ニマニマとした笑みを浮かべながら、先程まで座っていた椅子を指さしている。
「…いい」
俺は踵を返し、そのまま風呂場を後にする。
えー、なんでー、ケチ―と、風呂場から罵声が飛んでくるが、無視して体を拭いて、服を着た。
頭から服を被った時に、ツーンとする臭いがした。
先日汗水流して働いた結果、そろそろ洗濯をしなければならないのだが、あいにく俺の手持ちはこの一着しかない。
服も買おうと思っていたが、買い忘れていた。
そろそろこれだけでは流石に不味いと感じ、今日は昨日稼いだお金で、何着かの服を揃える事にした。
「ちょっとー、聞こえてるのー。レイちゃーん」
「おーい、きこえてまーすかー」
さて、そうと決まれば市場へと向かうとしよう。
安くて良いものがあると良いのだが。
「レイちゃーん。無視はかなしーよぉー」
大あくびをしながら、タオルを巻いたルリアが風呂場へと入ってくる。
反射的に、体を拭いていたタオルを股の間にあてがう。いや、別に同性同士なのだから、焦る必要はないのだが…。
人の印象というモノは、ほとんどがその見た目から来るとよく言われているが、正にその通りだと感じた。
というか、何でコイツは胸元からバスタオルを巻いてるんだ。
いくら可愛い格好というか、女装が好きでも、そこまで徹底するか普通と呆れの感情があがってくる。
「お、おい。今入ってるぞ」
ルリアをジトりと睨みながら言うと、
「んぁ…レイちゃん、ぉはよ…」
と、気の抜けた声で返事をしてくる。
「おはよ、じゃなくてだな…」
「あー、ちょうどいいやー。髪すすぐの手伝ってよー、一人でやると面倒なんだよねぇ…」
何がちょうどいいのかど思っていると、椅子に腰掛けている俺の前に、ルリアがちょこんと内股で座り込んだ。
勝手に話を進めるんじゃないと怒ろうとしていたが、ふと綺麗で白く細いが適度に柔らかそうな太ももが、タオルから露出し俺の視界に映り込む…いや待て、俺は何を見ているんだと思い、ルリアの後頭部に目を移す。
「おい、まだやるとはいってないぞ」
「いいじゃんかぁ。じゃーあ、初日の借りとかゆーの、今かえしてー」
後ろからでも分かるくらいに頬を膨らませて、そんな事をのたまう。
それを言われると言い返す事ができない。
深めのため息をついてから、俺は一度立ち上がり、片手であてがっていたタオルをしっかりと腰に巻き直してから、改めてルリアの後ろに座る。
「わかったよ。すすぎゃいいんだろ。どの程度やればいいんだ?」
「んー、適当に手ぐししながら流しててよ。良かったら言うからさー」
「…あいよ」
適当と言われても正直困るのだが、何となくで、やってみることにする。
ルリアの長い髪先を指で絡め取り、根本の方から毛先に向かってゆっくりと水をかけ、流していく。
体に水が極力かからないよう、髪を持ち上げて行うが故に、ふとルリアのうなじが目に入るが、すぐに目をそらす。
男同士、風呂に入っているだけだというのに、何か、とてもやりづらい。
それもこれも、全部コイツが悪いのだ。
そう思い、俺は、冷たい水をわざと背中にかけて仕返しをすると、ちゅべたっと、ルリアの背中がピクリと跳ねる。
「ちょっとー、冷たいんですけどぉ」
「悪い、手が滑ったんだ」
「ほんとかなぁ…。タオルを濡らして、透けて見えるボクの肌を見たくてやったんじゃ…」
「アホか」
ルリアの後頭部めがけて手刀をぺしっと落とすと、いて、と小さく声を漏らした。
「んー、そろそろいい感じかなぁ。ありがとねー」
互いに軽口を吐いていると、いつのまにやら満足いく状態にまでなっていたようだ。
毎日これを一人でやっていると考えるとなかなか大変そうである。
そんな事を考えながら、なら俺は先に出るぞと、退室の意を示し、立ち上がって外に出ようとすると、待って待ってと、ルリアに呼び止められる。
振り返ると、先程まで座っていた椅子にルリアが腰掛け、ちょんちょんと、先程までルリアがいた場所を指さしている。
まだ何かさせるつもりだろうか。
「背中、洗ってあげるよぉ。一人だと洗いづらいでしょ?」
ルリアが、ニマニマとした笑みを浮かべながら、先程まで座っていた椅子を指さしている。
「…いい」
俺は踵を返し、そのまま風呂場を後にする。
えー、なんでー、ケチ―と、風呂場から罵声が飛んでくるが、無視して体を拭いて、服を着た。
頭から服を被った時に、ツーンとする臭いがした。
先日汗水流して働いた結果、そろそろ洗濯をしなければならないのだが、あいにく俺の手持ちはこの一着しかない。
服も買おうと思っていたが、買い忘れていた。
そろそろこれだけでは流石に不味いと感じ、今日は昨日稼いだお金で、何着かの服を揃える事にした。
「ちょっとー、聞こえてるのー。レイちゃーん」
「おーい、きこえてまーすかー」
さて、そうと決まれば市場へと向かうとしよう。
安くて良いものがあると良いのだが。
「レイちゃーん。無視はかなしーよぉー」
0
お気に入りに追加
816
あなたにおすすめの小説


せっかく異世界に転生できたんだから、急いで生きる必要なんてないよね?ー明日も俺はスローなライフを謳歌したいー
ジミー凌我
ファンタジー
日夜仕事に追われ続ける日常を毎日毎日繰り返していた。
仕事仕事の毎日、明日も明後日も仕事を積みたくないと生き急いでいた。
そんな俺はいつしか過労で倒れてしまった。
そのまま死んだ俺は、異世界に転生していた。
忙しすぎてうわさでしか聞いたことがないが、これが異世界転生というものなのだろう。
生き急いで死んでしまったんだ。俺はこの世界ではゆっくりと生きていきたいと思った。
ただ、この世界にはモンスターも魔王もいるみたい。
この世界で最初に出会ったクレハという女の子は、細かいことは気にしない自由奔放な可愛らしい子で、俺を助けてくれた。
冒険者としてゆったり生計を立てていこうと思ったら、以外と儲かる仕事だったからこれは楽な人生が始まると思った矢先。
なぜか2日目にして魔王軍の侵略に遭遇し…。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
内気な僕は異世界でチートな存在になれるか?@異世界現代群像のパラグラフ
木木 上入
ファンタジー
日々の日常に悩み、ついつい色々な事を思い詰めしまう高校生、桃井瑞輝(ももいみずき)。
異世界の小さな村で日々を過ごしている少女、エミナ。
瑞輝がふとしたきっかけで異世界の少女に転生したことで、二人は出会うことになる。
そして、運命は動き出した――。
------------------------------------
よりよい小説を書くために、Webカンパも受け付けています。
こちらのページからhttp://www.yggdore.com/
https://twitter.com/kikifunnelへお送りください

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

異世界に召喚されたおっさん、実は最強の癒しキャラでした
鈴木竜一
ファンタジー
健康マニアのサラリーマン宮原優志は行きつけの健康ランドにあるサウナで汗を流している最中、勇者召喚の儀に巻き込まれて異世界へと飛ばされてしまう。飛ばされた先の世界で勇者になるのかと思いきや、スキルなしの上に最底辺のステータスだったという理由で、優志は自身を召喚したポンコツ女性神官リウィルと共に城を追い出されてしまった。
しかし、実はこっそり持っていた《癒しの極意》というスキルが真の力を発揮する時、世界は大きな変革の炎に包まれる……はず。
魔王? ドラゴン? そんなことよりサウナ入ってフルーツ牛乳飲んで健康になろうぜ!
【「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」1巻発売中です! こちらもよろしく!】
※作者の他作品ですが、「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」がこのたび書籍化いたします。発売は3月下旬予定。そちらもよろしくお願いします。


野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる