お布団から始まる異世界転生 ~寝ればたちまちスキルアップ、しかも回復機能付き!?~

雨杜屋敷

文字の大きさ
上 下
12 / 80
1章 異世界起床編

第12話 夜の勉強会

しおりを挟む
「それにしても、カワイコちゃん先生LIME送り過ぎ。」


 スマホから未読の通知を開く。


『こんばんは。今何してる?』
『今日は英語の授業当てられても出来てたね♡』
『返事くれないと泣いちゃうよ?』
『おーい』
『LIMEは5分以内に返信するのがマナーだよ?』
『もしかして寝ちゃった?』


 そんなマナー聞いた事ねぇよ!

 最初のメッセージは30分前。その後、5分に一通のペースで送られてきていた。

 むしろ返事がないのに追加で送って来る方がマナー違反だと思う。


『先生は送り過ぎです。普通に返事を待ってからメッセージを送って下さい。』


 これで良し……
『もう! 遅いよ! すぐに返事くれないと女の子は拗ねるんだからね?』


 早ぇよ!

 一瞬で返事するなっ! 怖いわっ!!


「もうこれは電話した方が良くないか……? いちいちメッセージを返すのも面倒だ。」


 俺はLIMEの通話ボタンをタップした。


「もしもし?」

『もしもーし。こんばんは。電話くれるなんて嬉しいなぁ。』


 電話の向こうからカワイコちゃん先生の明るい声が聞こえてくる。


「先生、送り過ぎです。」

『そんな事はないと思うんだけど……。』


 そんな事あるんだよ。


「ちゃんと俺が送ってから返事を下さいよ。」

『えぇ?』

「言う事聞かないとフロリダしますよ?」

『それはやめて! 脅しなんて酷いじゃない。』


 おい。どの口が言ってやがる。


「先生に言われたくないんですけど?」

『何で?』


 自分の言動を振り返ってみて欲しい。まさか、脅迫したという自覚がないのだろうか?


「先生も脅してきたじゃないですか。」

『そんな事してないけど。』

「英語の成績下げるって言ってたじゃん。」

『それは仕方ないよ。ああでもしなきゃ、恋梨君は治療を受け入れないでしょ?』


 俺が病気みたいに言うなよ。


『ねぇねぇ。今みたいにタメ口で話して欲しいな。学校の時間じゃないんだからそっちの方が良いよ。』


 やべっ。つい心の中のツッコミがそのまま出てしまった。


「すみません。」

『良いって。むしろそうして貰わないと、先生と生徒って感じで気疲れしちゃう。』


 そっか。

 先生にしてみれば、プライベートの時間まで仕事してるように思ってしまうのかもしれないな。

 だが、教師による恋愛指導というお題目は果たしてどこへ行ってしまったのか。


『ついでにミイコって呼び捨てして欲しいなぁ。』


 それはハードル高過ぎだろ。


「先生、それは……」
『ミ・イ・コ!』

「……ミイコさん。」


 年上を呼び捨てにするのはどうにも気が咎める。このくらいで勘弁して欲しい。


『ま、今はそれで良いよ。』

「えっと、はい。」

『ところで、急に電話なんてどうしたの? 私の声が聞きたくなっちゃったとか?』

「ミイコさんがLIMEを連続で送って来るからです。返信するより電話した方が早いと思いまして。」

『もう! また敬語!』


 敬語使えなくて怒られるならともかく、敬語使って怒られるってのもなかなか無い気がする。

 まぁ、言いたい事は分かるんだけどさ。


「すみま……ごめん。年上の人にタメ口って慣れなくて。」

『恋人だと思って接して貰わないと困るよ?』


 いつの間に恋人に昇格したんだ。この人本当に教師として大丈夫か?


「恋人って話じゃなかったと思うんだけど……。」

『恋人だと思って接してもらう事で、よりドキドキ感が出てくると思ったの。だから素直に受け入れて。』


 強引過ぎる。その情熱が一体どこからやってくるのか皆目見当がつかない。


「ミイコさんから好かれているのは取り敢えず分かったけど、どうしてそこまで……」

『それはね。あなたの担任になったからよ。』


 どういう事? 全然意味が分からん。


『担任って事はそれなりに個人情報も知る機会があるわけ。自分を助けてくれた人の情報を知っていくうち、どんどんのめり込んじゃってね。』


 先生、それはストーカーの思考です。


『今はかなり恋梨君の事知ってると思うよ? 身長、体重、血液型に生年月日、家族構成や性格。好きな食べ物に交友関係。勿論SNSも特定してフォローしてるよ?』


 SNSの特定はガチっぽいからやめろ。


「どうやってそんな事調べたの?」

『クラスの生徒にちょっと聞き取り調査をね。』


 やめて。


「……それはいくらなんでも怪しまれない?」

『全然だよ。だってカモフラージュで恋梨君以外の生徒の事も聞いたからね。皆熱心な先生だとしか思ってないんじゃない?』


 カモフラージュって言うな。聞かれた他の生徒が不憫だろ。

 まるでアイドルにハマって何から何まで調べ出たがるアイドルオタクみたいな人だな。


「ミイコさんはハマり易いタイプなんだね。」


 精一杯頑張ってオブラートに包んだ結果、この表現に落ち着いた。


『何で分かるの? 恋梨君って意外と私に興味ある?』


 違げぇよ! ポジティブに考え過ぎだろ!


『あっ……でも、性癖は知らないんだよね。どんなプレイが好き?』


 教師が生徒にプレイ言うな。


「あの、それは流石に……」

『あんなセクハラみたいな発言しといて今更恥ずかしがられてもねぇ。』


 確かに指導室でムラムラするとか言っちゃったけどさ。


「やっぱセクハラは良くないかな……と。」

『大丈夫、私の方から聞いたんだし。それで?』

「特にはない……と思う。そもそも経験がないのでなんとも。」

『そう……なら今度家庭訪問してあげる。どんなエロ本持ってるか見せてね?』

「嫌だ。」

『もしかして本じゃなくて動画派?』


 どうしようこの人。


「そろそろ寝よう。」

『え? まだ五分ちょっとしか話してないよ?』

「ミイコさんがセクハラするので寝たくなってきた。」

『やだやだやだっ! やぁだー!』


 こ、こどもかよ……。


『恋人は電話で3時間くらいお話するのが普通だもぉぉん!』


 長過ぎだろ! 絶対におかしい。

 でも……それが普通のカップルだったりするのか? 待て待て、だとしてもそんなに長電話してられるかよ!


「ダメ。」

『わーかーりぃーまーしーたぁー。2時間で我慢しますぅぅ。』


 物凄く不満そうに無茶な要求をする先生。


「勉強もしなきゃいけないし30分で。」

『勉強? そんなもの社会に出たって何の役にも立たないよ。』


 教師がそれを言ったらオシマイでしょ!?


「一応、受験生だし。」

『今の成績なら志望校合格は間違いなし! なんだったら私が教えるから。』

「それは結構です。」


 この人に個人受業されると脱線ばかりになりそうだ。


『もしかして遠慮してるの? 私は先生なんだし気にしなくて良いのよ?』


 何でそうポジティブなんだ?

 遠慮じゃなくて拒否のつもりで言ったんだけど。


『分かった分かった。ちゃんと成績が下がらないように教えてあげるから。毎週日曜日は家に来てね。』

「はい?」

『毎週日曜日は私の家に来る事。』


 何言ってんだこの人。


「家に行くのはダメでしょ。」

『女教師と男子生徒、二人きりの個人受業を人目につく所でやる方がダメしょ。』


 何でそんなエロい言い方にするんだよ。


「ミイコさんは一体何をするつもり?」

『や、やだなぁ。ちゃんと勉強を教えるよ? ちょっと恋愛の勉強もするだけで……。』


 何故焦る?


『兎に角! これは決定事項。恋梨君の受験が失敗したら私も悲しいし、ちゃんと勉強は見てあげます!』


 何て強引な。

 まぁ、考えようによっては無料の家庭教師がついたと思えなくもない……のか?


「そこまで言うなら……お願いします。」

『任せて! こっちは教えるプロ。安心して任せてくれて良いからね。』


 不安だ、とても不安だ。変な事になったらどうしよう……。

 こちとら性欲だけはあるんだ。迫られたら我慢出来なくなる恐れだってある。流石に体だけの関係は申し訳ないから自制したいところだ。

 恋愛出来ないから責任取れないし…………


『どうして黙ってるの?』


 考え事に没頭していたようだ。


「ごめん。ちょっと考え事を。」

『もしかしてドキドキしてくれてるとか?』


 どちらかと言えばハラハラの方だな。


「えーっと……。」

『ちょっとでもそう感じてくれたら嬉しいな。』


 先生の声からは喜びの感情が伝わって来る。

 わざわざ否定してそれを台無しにするのも何か違うという気がするな。


「まぁ、その……ちょっとだけ。」

『ふふっ。恋梨君の治療も順調ね。卒業までには間に合いそうだわ。……ぐふふ。』


 ぐふふ?


「今、変な笑い方した?」

『え? してないけど。テレビじゃない?』


 テレビという割にはハッキリ聞こえたぞ。でも、本当にそんな事してないって感じで言ってるし……俺の聞き違いか?


『ところでさ、恋梨君は女性のどんな服装が好み?』


 随分唐突だな。


「制服かなぁ……。」

『制服って、学校の?』

「そう。」

『なにか理由があるの?』

「身近な女子と言えば学校の女子達ってのがある。だからなんとなくそう思ってさ。」

『あぁ……てっきり変な趣味があるのかと思っちゃったよ。』


 変な趣味ではないだろ。第一、俺自身が高校生なんだから女子の制服が好きでもそれ程変じゃないはず……だよな?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

せっかく異世界に転生できたんだから、急いで生きる必要なんてないよね?ー明日も俺はスローなライフを謳歌したいー

ジミー凌我
ファンタジー
 日夜仕事に追われ続ける日常を毎日毎日繰り返していた。  仕事仕事の毎日、明日も明後日も仕事を積みたくないと生き急いでいた。  そんな俺はいつしか過労で倒れてしまった。  そのまま死んだ俺は、異世界に転生していた。  忙しすぎてうわさでしか聞いたことがないが、これが異世界転生というものなのだろう。  生き急いで死んでしまったんだ。俺はこの世界ではゆっくりと生きていきたいと思った。  ただ、この世界にはモンスターも魔王もいるみたい。 この世界で最初に出会ったクレハという女の子は、細かいことは気にしない自由奔放な可愛らしい子で、俺を助けてくれた。 冒険者としてゆったり生計を立てていこうと思ったら、以外と儲かる仕事だったからこれは楽な人生が始まると思った矢先。 なぜか2日目にして魔王軍の侵略に遭遇し…。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

内気な僕は異世界でチートな存在になれるか?@異世界現代群像のパラグラフ

木木 上入
ファンタジー
 日々の日常に悩み、ついつい色々な事を思い詰めしまう高校生、桃井瑞輝(ももいみずき)。  異世界の小さな村で日々を過ごしている少女、エミナ。  瑞輝がふとしたきっかけで異世界の少女に転生したことで、二人は出会うことになる。  そして、運命は動き出した――。 ------------------------------------ よりよい小説を書くために、Webカンパも受け付けています。 こちらのページからhttp://www.yggdore.com/ https://twitter.com/kikifunnelへお送りください

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

異世界に召喚されたおっさん、実は最強の癒しキャラでした

鈴木竜一
ファンタジー
 健康マニアのサラリーマン宮原優志は行きつけの健康ランドにあるサウナで汗を流している最中、勇者召喚の儀に巻き込まれて異世界へと飛ばされてしまう。飛ばされた先の世界で勇者になるのかと思いきや、スキルなしの上に最底辺のステータスだったという理由で、優志は自身を召喚したポンコツ女性神官リウィルと共に城を追い出されてしまった。  しかし、実はこっそり持っていた《癒しの極意》というスキルが真の力を発揮する時、世界は大きな変革の炎に包まれる……はず。  魔王? ドラゴン? そんなことよりサウナ入ってフルーツ牛乳飲んで健康になろうぜ! 【「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」1巻発売中です! こちらもよろしく!】  ※作者の他作品ですが、「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」がこのたび書籍化いたします。発売は3月下旬予定。そちらもよろしくお願いします。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

処理中です...