騎士と狩人

みけねこ

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卒業しました、でも

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 あれだけ豪語しておいても、俺が初めてであることには変わりはない。知識があっても実際にやってみるのとではわけが違う。結局リクトさんに教わりながらやるという状態になっていた。
 弄ると気持ちよくなると書いてあった胸だけれど、リクトさん曰く「開発もしてねぇのに気持ちよくなるわけねぇだろ」とのこと。実際リクトさんの眉間に皺が寄っただけで気持ちよさそうではなかった。
 痕を付けたくてキスしてみたけれどそれだけじゃ残らないらしく、「もっと強く吸ってみろ」と言われた通りにやってみるとしっかりと付いた赤にちょっとだけ誇らしくなった。多分そんな反応が童貞臭いんだろうけど。
 そうして膨らみのある胸はしっかりと割れているお腹に痕を付け、そしてついにゴクリと喉を鳴らす。前に全裸を見たことがあったけれど、肉体と同じようにそこも立派だった。それがこの布の向こうにある、と考えただけでも逆上せそうになる。
「脱いでやろうか?」
「あ、ぅ、は、はい」
 脱がしてみたい、けど今の俺には刺激が強すぎるかもしれない。でもやっぱり、と悩んでいる間にリクトさんは自分でパンツを下ろし始めた。ただ、スッと脱ぐのかな、と思っていたんだけど。
 まるで焦らすかのようにゆっくりと下ろされるそれに、視線が釘付けになる。俺がそうなってるのをリクトさんはしっかり確認しているのに、本当なら恥ずべきことなのにそれでも目が離せずただ生唾を飲み込むだけだった。
 そしてあらわになったそこに、ジッと視線を向けてしまった。すでに興奮して勃ってしまっている俺に対してリクトさんはまったくと言っていいほど勃たせてはいなかったけれど。それでもやっぱり肉体と同じように立派で、魅入ってしまう。
「舐め回すように見るな」
「ぁ……す、みません、つい」
「残念ながら今日使うのはこっちなんだよなぁ」
 若干不服そうな声色だったけれど、そう言いながらリクトさんの指はそれではなくその更に下を示していた。
 俺が上になりたいと言ってそれを押し切ってしまって、実際リクトさんは嫌なんじゃないか。そう心配していたくせにそれを見ただけでその感情がどこかに飛んでいってしまった。
「潤滑剤、たっぷり使えよ」
「あ、はい。これ……ですね」
 ポン、と手元に飛んできた物を手に取る。これを準備したのは俺じゃなくてリクトさんだ。何を使うのが一番いいのかわからなかった俺に「俺が準備する」とリクトさんが言ってくれた。何から何まで申し訳ない。
 俺も経験あったほうがよかったのかな、と思ったけれど。でもやっぱりリクトさん以外の人なんて想像できない。他の人で練習なんてものもできない。だから知識だけで終わってしまった。
 一方でリクトさんは経験がある。そうだよな、格好良いから放っておく人なんていなかった。そこまで考えてまたモヤモヤする。単純に嫉妬だ。俺の知らないリクトさんを誰かが知っているのが嫌だっていう、独占欲。
 俺ってこんなに心狭かったんだ、と新しい自分を知りつつ言われた通り手にたっぷりと潤滑剤を広げて指に絡ませる。多分、だけど、ここにも垂らしていたほうがいいのかもしれないとあたためたそれを解すように広げていく。
「そっちは俺も経験がねぇから、急に入れるなよ」
「わかりました」
 俺だってリクトさんを傷付けたくない。なるべく丁寧に、とまず指を一本だけゆっくり入れる。まったく解かされていないそこはとても狭くて、一本だけだけどリクトさんの喉が小さく呻いたのが聞こえた。ごめんなさい、リクトさん、と小さく謝って潤滑剤を足しながらゆっくりと中を解していく。
 痛い思いをさせたくないから、例え時間がかかる根気のいる作業でもしっかりとやろうと急ぐことはしなかった。いつも俺ばかりが気持ちよくさせてもらっているんだから、今日こそは。そんな思いばかりだった。
 けれどふと視線を上げると、煽情的な身体が視界に入る。何度も何度も見惚れてしまう身体だ。ごくりと喉が鳴って自分のモノが痛くなるけれど、その身体の奥にある表情を歪めているリクトさんの顔を見て我に返る。相変わらず苦しそうだし、リクトさんのモノも勃っていない。
 ただ徐々にそこは解れてきて指が二本スムーズに入るようになった。ぬちぬちと少し卑猥な音が部屋の中に響いて、なんとも言えない感情になりながらも指を動かす。
「……だいぶ解れてきたな。セオ、挿入れてみるか」
「え、でも」
 確かに解れてはきたけれど、リクトさんはつらそうだ。まだ痛いんじゃないかな、って心配している俺を他所に身体を軽く起こしたリクトさんは腕を伸ばし、張り詰めているそこに手を触れた。
「うっ……」
「パンパンじゃねぇか」
 リクトさんのために、とずっと言ってはいたけれど。正直に言うと、ずっと張り詰めていて痛いです。そんな状態だったからリクトさんに少し触られただけで達するかと思った。気合いで堪えたけど。でもほんの少しだけ、出ちゃったけど。
 気付けばファスナーを下ろされて俺のそれが取り出されてる。手際が良すぎてびっくりする。元から器用な人だと思っていたけれど、こういうところでも発揮されるのか。
 急いで自分のそれにも潤滑剤を垂らして、解かしたそこに充てがう。本当に、俺がリクトさんを抱いていいのだろうか。いややめろと言われてももう止まる気もしないけれど。
 ゆっくりな、の言葉を素直に聞いてゆっくりと腰を押し進める。解こしたけれどやっぱり少しキツい。なかなかスムーズに中に入れない。状態を知りたくてリクトさんに視線を向けてみると眉間に皺を寄せて苦しそうだ。
「っ……やっぱ、カリのとこキツいな」
 そこさえ済んだらあとはラクなんだがな、の言葉にそうなのかと納得しつつ、リクトさんの呼吸に合わせてゆっくりと動く。本当に、ここさえ挿入れば、と実は今にも吐精しそうなところを奥歯を噛み締めて堪えていた。正直少しだけ挿入れた時点で危なかった。
 一度息を整えて、グッと奥に進むとようやくスムーズに中に進めた。中はあたたかくて、自分のが締め付けられる。あ、マズい。
「セオ」
「ぁ……ふぁい……」
「……まだ挿入れたばっかだぞ、イくな」
「ぁっ……は、ごめん、なさい。その、色々と、刺激が強すぎて」
「取りあえずゆっくり動け」
「は、いっ……」
 イきかけてたのをリクトさんに見破られていた。でも反論もできないだってその通りだったから。リクトさんの中に入ってる、自分の下にリクトさんがいる、そう思っただけでぶわっと熱が上がって汗が溢れてきた。油断したら鼻血まで出てきそうだ。
 でも妄想していたのとはまったく違う、目の前の光景に興奮するなというほうが無理な話だ。村の子たちから遠巻きにされていたとか獣臭いだろうとかリクトさんは色々と言っていたけれど、やっぱり彼は色っぽい。
 ただ、ゆっくりと挿入を繰り返しその刺激だけですぐに達してしまいそうな俺に対して、リクトさんの口からはくぐもった声しか出てこない。
「はっ……リクトさん、どう、ですか……?」
「……内臓を引きずり出されるような感じだな」
「あ、ごめんなさい、俺ばっかり、気持ちよくっ……」
「まぁ、本来出すところだから普段入れるようにはなってねぇし」
 ピタッと動きを止めベッドに手をついている俺の腕を、リクトさんはペシッと軽く叩いてきた。
「好きに動いてみろよ。ずっと我慢してただろ」
 意識してか無意識か、俺にはどっちかはわからない。ただリクトさんがそう言った瞬間少しだけ締め付けられて思わず「うっ」と声をもらしてしまった。これは煽られていると勘違いされても仕方がないような。
 リクトさんが流している汗が冷や汗だってことには気付いている。多分気持ちよくはなっていないし、未だに苦しいのかもしれない。でもそれでも俺のほうを優先しようとしてくれている気持ちに、気持ちよさを更に上回る嬉しさがぶわっと広がった。
 いつも俺の気持ちに向き合ってくれるこの人のことを、何度も何度も好きになる。これほど素敵な人に出会ったことなんてない。
「あっ……リクトさん、リクトさんっ……!」
 我慢していたものが溢れ出すように、あれだけ丁寧に優しくと思っていたことが飛んでいって気付けばがむしゃらに腰を振っていた。目の前のことに無我夢中になって、うわ言のようにリクトさんの名前だけを呼んでいたような気がする。
 けれどそれでもリクトさんは怒らない。夢中になって涎さえも垂らして惚けてる俺に手を伸ばして身体を起こし、キスをしてくる。唾液でてらてらと濡れている舌がいやらしい。視界の端に入る口元のほくろも色っぽい。俺が動く度に揺れる髪が、汗で肌に張り付いている。
「はぁっ、あっ、リクトさんっ……きもちいい……きもちいです……! はっ、あ!」
 グッと中を締め付けられて急いで自分のを引き抜いた。そのまま勢いよく飛び出た白濁は綺麗に割れている腹にかかる。
「は……大量に出たな」
 それにリクトさんは手を伸ばし、指先でぬとぉっと弄んでいる。あまりの気持ちよさと、視界の暴力にくらりと目眩がする。
 また、もう一度、あの中にはいりたい。再び猛りそうになっているそれを潤滑剤で濡れているそこに充てがおうとして、ハッと気付いた。
「ご、ごめんなさいリクトさん! また俺ばっかり……!」
 俺は射精したけれどリクトさんは射精していないし、そもそも未だに勃ってもいなかった。ただ俺を受け入れるだけで自分で弄ってもいなかったみたいだ。あからさまにサッと俺の顔色が青くなったんだろう、リクトさんは一度軽く笑ってくしゃりと頭を撫でてきた。
「童貞卒業おめでとさん」
「あ……あの、俺の童貞もらってくれてありがとうございます……でも俺ばっかり……」
「お前も俺の初めてをもらっただろ」
 後ろの、って小さく口角を上げたリクトさんが格好良いしキュンと来るし、もう色んな感情がごちゃ混ぜになってきっと変な顔になってた。
 でもそんな状態なのに無意識に手はリクトさんのものに伸びていて、そっと撫でようとする前にペシッと叩き落された。
「明日も早いんだろうが」
「……俺だってリクトさんのこと気持ちよくしたい」
「明日もあるだろ、明日」
 その言葉に拒絶されたと沈んでいた感情が急上昇するのだから、我ながら単純だ。タオルに手を伸ばし腹にかかっている白濁を拭き取りながら、リクトさんはさっさと寝支度に入る。
「汗掻いたならもう一度湯浴みしてこい」
「あ……いいえ、タオルで拭くだけにします」
「風邪引くなよ」
「はい」
 リクトさんの言う通り明日もまた仕事だ、首都に遊びに来たわけじゃない。だからリクトさんが俺のことを思って心配してくれているってことはわかってる。
 わかってるけど、自分だけ気持ちよくなった自分が情けないし、もう少しだけ構ってほしいな、だなんて。前まではリクトさんに気持ちを伝えるだけで満足していたのに、それだけじゃ物足りなくなった自分は随分と強欲になってしまったなと肩を落としながらタオルで身体を拭いた。
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