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ある男の告白
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物音が聞こえてなんだと様子を見に行くと、何やら傷を負って逃げようとしているそこそこのデカさの魔獣の姿。逃げようとしている先が村だったため、もちろんその場で即行狩り取った。
それにしても魔獣の様子がおかしかったなと、森の奥に視線を向けた。しっかりと見えているわけでも聞こえているわけでもないが、なんだかいつもと様子が違う。こういう時は自分の直感を信じるに限る、そう思い弓矢を構えて奥へと進んだ。
するとまぁ、見覚えのない人間――一人だけ見覚えのある髪の色だったけど――と、入れ喰い状態の魔獣。よくわからんが恐らく最初の魔獣を追いかけて森に入って、気付かないうちに他の魔獣も誘い込んでしまったんだろう。
騎士たちの獲物は四人中二人、森にはそぐわない大きさだった。大剣も槍もあちこち木が生えている森には向かない。振り回すこともできないし、絶対に柄やら剣先がどこかに引っかかる。
ふと視線を向けると一人の若い奴が突き出した槍がそのまま木に突き刺さって身動きが取れないでいた。なんでそんな攻撃しちまったよ、と思いつつもこのままだと確実にアイツは魔獣にやられる。即座に弓を構え魔獣の目を射抜く。雄叫びを上げ怯んだ隙に短剣を突き立てた。ただ皮が分厚かったのと急所じゃなかったため、即座にかかと落としを決めて今度こそ急所に狙いをつけた。
ザッと見たところ数は五体。俺が一体殺ったとしてもあと四体を一人で相手にするのは骨が折れる。ということで緊急用の爆ぜ玉を投げ飛ばし父さんに知らせ、あとはまぁ合流して入れ喰いとなったわけだが。
あの時隊長である男があとで説明をすると言っていたように、我が家に騎士の二人がやってきた。一方は隊長、実は何度か顔合わせをしたことがある。もう一方はもしかしたら村への案内役として連れてきたのか、ついこの間騎士になったと聞いたばかりのセオだった。
我が家は三人ぐらし。来客もほとんどと言っていいほどないため椅子も最低限しか置いてない。俺と父さんが座り、対面には隊長と思われる男が座っている。セオはその男の後ろに控えていた。
「先日はご迷惑をおかけして申し訳ない。私の指導不足だった」
「いいや、おたくも大変だったな。まぁあのくらいの年頃だと突っ走りたくなるんだろう。新人の教育も大変なもんだ」
「労りの言葉、痛み入ります」
隊長の説明だと、どうやら俺が先に見た魔獣を追いかけて森まで入ったようだ。まぁ一体ぐらいなら狩り取れると思っても何にも不思議じゃない。問題はどうしてその魔獣が一体で逃げるように必死に走っていたかをちゃんと考えていなかったかだ。
狩人である俺たちは慣れもあってすぐに状況判断ができる。ただ日頃魔獣相手じゃなく人間相手にしている騎士は見極めが難しかったんだろう。配属されたばかりの新人だと尚更だ。結果最初の魔獣を追いかけて大型の魔獣を森に引き入れてしまったというわけだ。
森に入れば騎士たちの武器は扱いにくい。隊長はそれがわかって恐らくすぐに俺たちに知らせて自分たちは引こうと考えていたんだろうが、なぜかそのやらかし新人が梃子でも動かなかったせいでああいう状況に陥ってしまったというわけだった。
まぁ俺も父さんもでかい魔獣五体は驚いたものの、正直入れ喰い状態だと内心喜んでいた。あれだけの量、かなりの毛皮が剥ぎ取れるし肉なんてしばらくはこの村の保存食に問題がなくなるぐらいだった。
隊長はもう一度「申し訳なかった」と頭を下げ、控えていたセオも同時に頭を下げた。父さんはというと今回大漁だったこともあって「気にするな」と軽く肩を竦めるだけで終わった。
「……実は、貴殿には一つご相談がありまして」
話が終わったところで一拍置いてそう切り出された。隊長の視線が俺とセオに向かう。なるほど、二人だけでこっそりと喋りたいというわけかと俺は席を立った。まぁ面倒事は父さんに任せておけばいい。
「手入れしてくる」
「ああ、任せた」
昨日入れ喰い状態で、そして解体にも時間を要したためそれぞれ普段使っている武器の手入れが昨日できなかった。ということで話が終わるまでさっさと済ませてしまおうと家から出る。ついでについてくるようにセオも出てきた。まぁ他に待機場所がないんだからそうなるか。
とはいえここはセオの故郷でもあるのだから、もしかしたら時間潰しで村をうろつくのかもしれない。特に気を遣うわけでもなく早速小屋に足を運ぶと、なぜか後ろからついてくる足音。チラッと視線を向けてみると当然のようになぜか俺についてきてる。
「時間かかるんじゃねぇの?」
「けどいつ終わるかわかりませんし、近くで待機しておこうと」
「ああ、なるほど」
村うろついて隊長に呼びに来させるのも気が引けるか。セオの言い分に納得し、だからといって別に積極的に会話をすることなく小屋に置いている武器を取り出し手入れをする。
「見ていていいですか?」
「つまんねぇだろ」
「いいえ、俺も剣の手入れをするので。狩人の方はどうやってするのか気になります」
そういうもんなのか。まぁ他にやることねぇし見てることしかできないか。そうか、と適当に相槌を打って気にすることなく武器の手入れを始める。
手を動かしている最中、特に会話は発生しない。セオも大人しく見ているだけだ。そういやこいつ、最初目が合った時は逃げ出していたくせに今はもうそんなことはないのか。それともただの耐久レースでもしてるのか。でもまぁこの間村に帰ってきた時の宴の時は普通に隣に座ってきたなと思い出す。
流石にこの年齢になると狩人に対する物の考えが変わってきたのか。子どもの時はただ獣臭いだけの奴らだと思っていたものが、今ではそうなってもしょうがないことだと理解したのかもしれない。ある意味成長したのかもしれない。
ただ無心に手を動かし俺と父さんの武器を磨き上げていく。魔獣相手にしているとすぐに脂がついて切れ味が悪くなる。だから小まめな手入れは欠かせない。しっかりと磨かれたのを確認し、波紋もしっかりとチェックする。
「……あの、リクトさん」
一段落つくのを待っていたのか、武器を置いて道具の整理をしている時にセオが言葉を発した。
「貴方に、言いたいことがあって」
「なんだ」
「その……」
話を切り出したのはセオのほうだというのに、言葉が続かずゴニョゴニョと何やら口ごもっている。訝しげにもう一度なんだと心の中で吐きつつ視線を向けた。
「……俺が、騎士を目指したのは、リクトさんに憧れていたからなんです」
「……は?」
思いも寄らない言葉にマヌケな声が口から出た。そんな話初めて聞いたというか、ずっと同世代から遠巻きにされてきた俺のことをそんな風に思う奴なんて普通いないと思っていた。
っていうか憧れていたんなら狩人を選びそうなもんなのに。そこで騎士選んだのか、と思ったものの。カサドル家だけが狩人をやっていたため、そんな中で「狩人をやりたい」とは少し言い出しにくいかもしれない。
さっきまでモジモジゴニョゴニョしていたくせに、何やら今度は真っ直ぐにこっちを見てくる。最初あんなに素早く目を逸らした奴がだ。
「リクトさんのこと、ずっと格好良いと思っていたんです。身体も逞しくて、周囲の声に左右されなくて。そんな貴方のようになりたい、貴方の隣に立って恥ずかしくない人間になりたい、そう思って騎士を目指したんです」
「そうなのか」
こいつの目、大丈夫か? というのが正直な感想だ。そりゃ狩人を生業としているから他の村の奴らに比べて身体はでかいだろうさ。でもなんでそこで俺の隣に立っても恥ずかしくない人間になりたい、ということになるのか理解できない。いや別にそんな風になる必要なくないか? そもそも俺の隣に立つことができるのは幼馴染二人ぐらいだろ。あとは遠巻きにしてたんだから。
とか、諸々言いたかったものの。何やら真剣な顔をしているため言葉を挟むことなく取りあえず耳を傾けることにした。
「貴方に背中を押してもらえて嬉しかった。あれがあったからもっと頑張ろうと思えたんです」
「ああ、そう」
「好きです、リクトさん」
「ああ、そう……は?」
なんか聞こえた気がした。聞き間違いか、と一度道具に向けていた視線をセオに戻した。
「好きなんです」
それは人間としてか――とか、野暮なことは考えないしそこまで初心ってわけでもない。真剣な眼差しは一切俺から逸らそうとしない。
寧ろ俺はああと納得してしまった。ああなるほど、こいつ本当に恋愛対象として俺のことが好きなのか。
そりゃ好きな奴の裸見たら勃つわな、と。
あの時は騎士になったばかりで、そんで帰ってきてどこか疲れていたから勃っていたのかと思ったが、蓋を開けてみりゃそういうことだったわけだ。そりゃ一度出してもすぐに元気になるわ。
取りあえず片付けるために一旦視線を外す。横からはもう突き刺さるような視線が向かっているのがわかる。見すぎだろと思わず小さくこぼした。
「突然言われてもな」
「……すみません。でも、伝えられる時に伝えないとって思って。気分を悪くさせてしまったのならごめんなさい。でも、リクトさんのこと想い続けてることは許してください」
いや全然引く気ねぇのかよ。子どもの頃周りから散々可愛がられていた奴が、まさかこんな頑固な一面があるとは。
一度息を吐き出せば小さく揺れる肩が目端に映った。
「……ま、俺にそう言ってくる奴いないし。ありがとな」
「……!」
嫌だったらはっきり断ればいいだけの話だ。だがこうして俺に告白してきた奴なんてセオが初めてだし、お前よく俺のこと好きになったなという驚きのほうが大きい。
だがまぁ、思い返せばこいつに告白されても別に嫌悪感は一切なかったし、そもそも俺はこいつの勃ったアレをわざわざ抜いてやっている。嫌悪感があったらあんなことはしない。
「取りあえず、お前のことよく知らねぇし。知っていくところからだな」
「えっ……い、いいんですか⁈」
「別に付き合うってわけじゃねぇぞ」
「ももももちろんです! あ、あの! これから時間があったらできる限り村に顔を出すので! そ、それで、俺のこと知っていってください!」
さっきまで真剣だったくせに一気に子どもに返ったかのようにどもるしはしゃぐし。騎士になったばかりの成人男性だろと思わず小さく吹き出してしまった。
すると急に胸を押さえて短く呻き声を上げるじゃねぇか。一瞬「早まったか」と思いつつ、武器と道具を元の場所に戻すために小屋に向かうと犬のようについてきた。こいつ今後騎士としてやっていけるんだろうか。
それにしても魔獣の様子がおかしかったなと、森の奥に視線を向けた。しっかりと見えているわけでも聞こえているわけでもないが、なんだかいつもと様子が違う。こういう時は自分の直感を信じるに限る、そう思い弓矢を構えて奥へと進んだ。
するとまぁ、見覚えのない人間――一人だけ見覚えのある髪の色だったけど――と、入れ喰い状態の魔獣。よくわからんが恐らく最初の魔獣を追いかけて森に入って、気付かないうちに他の魔獣も誘い込んでしまったんだろう。
騎士たちの獲物は四人中二人、森にはそぐわない大きさだった。大剣も槍もあちこち木が生えている森には向かない。振り回すこともできないし、絶対に柄やら剣先がどこかに引っかかる。
ふと視線を向けると一人の若い奴が突き出した槍がそのまま木に突き刺さって身動きが取れないでいた。なんでそんな攻撃しちまったよ、と思いつつもこのままだと確実にアイツは魔獣にやられる。即座に弓を構え魔獣の目を射抜く。雄叫びを上げ怯んだ隙に短剣を突き立てた。ただ皮が分厚かったのと急所じゃなかったため、即座にかかと落としを決めて今度こそ急所に狙いをつけた。
ザッと見たところ数は五体。俺が一体殺ったとしてもあと四体を一人で相手にするのは骨が折れる。ということで緊急用の爆ぜ玉を投げ飛ばし父さんに知らせ、あとはまぁ合流して入れ喰いとなったわけだが。
あの時隊長である男があとで説明をすると言っていたように、我が家に騎士の二人がやってきた。一方は隊長、実は何度か顔合わせをしたことがある。もう一方はもしかしたら村への案内役として連れてきたのか、ついこの間騎士になったと聞いたばかりのセオだった。
我が家は三人ぐらし。来客もほとんどと言っていいほどないため椅子も最低限しか置いてない。俺と父さんが座り、対面には隊長と思われる男が座っている。セオはその男の後ろに控えていた。
「先日はご迷惑をおかけして申し訳ない。私の指導不足だった」
「いいや、おたくも大変だったな。まぁあのくらいの年頃だと突っ走りたくなるんだろう。新人の教育も大変なもんだ」
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隊長の説明だと、どうやら俺が先に見た魔獣を追いかけて森まで入ったようだ。まぁ一体ぐらいなら狩り取れると思っても何にも不思議じゃない。問題はどうしてその魔獣が一体で逃げるように必死に走っていたかをちゃんと考えていなかったかだ。
狩人である俺たちは慣れもあってすぐに状況判断ができる。ただ日頃魔獣相手じゃなく人間相手にしている騎士は見極めが難しかったんだろう。配属されたばかりの新人だと尚更だ。結果最初の魔獣を追いかけて大型の魔獣を森に引き入れてしまったというわけだ。
森に入れば騎士たちの武器は扱いにくい。隊長はそれがわかって恐らくすぐに俺たちに知らせて自分たちは引こうと考えていたんだろうが、なぜかそのやらかし新人が梃子でも動かなかったせいでああいう状況に陥ってしまったというわけだった。
まぁ俺も父さんもでかい魔獣五体は驚いたものの、正直入れ喰い状態だと内心喜んでいた。あれだけの量、かなりの毛皮が剥ぎ取れるし肉なんてしばらくはこの村の保存食に問題がなくなるぐらいだった。
隊長はもう一度「申し訳なかった」と頭を下げ、控えていたセオも同時に頭を下げた。父さんはというと今回大漁だったこともあって「気にするな」と軽く肩を竦めるだけで終わった。
「……実は、貴殿には一つご相談がありまして」
話が終わったところで一拍置いてそう切り出された。隊長の視線が俺とセオに向かう。なるほど、二人だけでこっそりと喋りたいというわけかと俺は席を立った。まぁ面倒事は父さんに任せておけばいい。
「手入れしてくる」
「ああ、任せた」
昨日入れ喰い状態で、そして解体にも時間を要したためそれぞれ普段使っている武器の手入れが昨日できなかった。ということで話が終わるまでさっさと済ませてしまおうと家から出る。ついでについてくるようにセオも出てきた。まぁ他に待機場所がないんだからそうなるか。
とはいえここはセオの故郷でもあるのだから、もしかしたら時間潰しで村をうろつくのかもしれない。特に気を遣うわけでもなく早速小屋に足を運ぶと、なぜか後ろからついてくる足音。チラッと視線を向けてみると当然のようになぜか俺についてきてる。
「時間かかるんじゃねぇの?」
「けどいつ終わるかわかりませんし、近くで待機しておこうと」
「ああ、なるほど」
村うろついて隊長に呼びに来させるのも気が引けるか。セオの言い分に納得し、だからといって別に積極的に会話をすることなく小屋に置いている武器を取り出し手入れをする。
「見ていていいですか?」
「つまんねぇだろ」
「いいえ、俺も剣の手入れをするので。狩人の方はどうやってするのか気になります」
そういうもんなのか。まぁ他にやることねぇし見てることしかできないか。そうか、と適当に相槌を打って気にすることなく武器の手入れを始める。
手を動かしている最中、特に会話は発生しない。セオも大人しく見ているだけだ。そういやこいつ、最初目が合った時は逃げ出していたくせに今はもうそんなことはないのか。それともただの耐久レースでもしてるのか。でもまぁこの間村に帰ってきた時の宴の時は普通に隣に座ってきたなと思い出す。
流石にこの年齢になると狩人に対する物の考えが変わってきたのか。子どもの時はただ獣臭いだけの奴らだと思っていたものが、今ではそうなってもしょうがないことだと理解したのかもしれない。ある意味成長したのかもしれない。
ただ無心に手を動かし俺と父さんの武器を磨き上げていく。魔獣相手にしているとすぐに脂がついて切れ味が悪くなる。だから小まめな手入れは欠かせない。しっかりと磨かれたのを確認し、波紋もしっかりとチェックする。
「……あの、リクトさん」
一段落つくのを待っていたのか、武器を置いて道具の整理をしている時にセオが言葉を発した。
「貴方に、言いたいことがあって」
「なんだ」
「その……」
話を切り出したのはセオのほうだというのに、言葉が続かずゴニョゴニョと何やら口ごもっている。訝しげにもう一度なんだと心の中で吐きつつ視線を向けた。
「……俺が、騎士を目指したのは、リクトさんに憧れていたからなんです」
「……は?」
思いも寄らない言葉にマヌケな声が口から出た。そんな話初めて聞いたというか、ずっと同世代から遠巻きにされてきた俺のことをそんな風に思う奴なんて普通いないと思っていた。
っていうか憧れていたんなら狩人を選びそうなもんなのに。そこで騎士選んだのか、と思ったものの。カサドル家だけが狩人をやっていたため、そんな中で「狩人をやりたい」とは少し言い出しにくいかもしれない。
さっきまでモジモジゴニョゴニョしていたくせに、何やら今度は真っ直ぐにこっちを見てくる。最初あんなに素早く目を逸らした奴がだ。
「リクトさんのこと、ずっと格好良いと思っていたんです。身体も逞しくて、周囲の声に左右されなくて。そんな貴方のようになりたい、貴方の隣に立って恥ずかしくない人間になりたい、そう思って騎士を目指したんです」
「そうなのか」
こいつの目、大丈夫か? というのが正直な感想だ。そりゃ狩人を生業としているから他の村の奴らに比べて身体はでかいだろうさ。でもなんでそこで俺の隣に立っても恥ずかしくない人間になりたい、ということになるのか理解できない。いや別にそんな風になる必要なくないか? そもそも俺の隣に立つことができるのは幼馴染二人ぐらいだろ。あとは遠巻きにしてたんだから。
とか、諸々言いたかったものの。何やら真剣な顔をしているため言葉を挟むことなく取りあえず耳を傾けることにした。
「貴方に背中を押してもらえて嬉しかった。あれがあったからもっと頑張ろうと思えたんです」
「ああ、そう」
「好きです、リクトさん」
「ああ、そう……は?」
なんか聞こえた気がした。聞き間違いか、と一度道具に向けていた視線をセオに戻した。
「好きなんです」
それは人間としてか――とか、野暮なことは考えないしそこまで初心ってわけでもない。真剣な眼差しは一切俺から逸らそうとしない。
寧ろ俺はああと納得してしまった。ああなるほど、こいつ本当に恋愛対象として俺のことが好きなのか。
そりゃ好きな奴の裸見たら勃つわな、と。
あの時は騎士になったばかりで、そんで帰ってきてどこか疲れていたから勃っていたのかと思ったが、蓋を開けてみりゃそういうことだったわけだ。そりゃ一度出してもすぐに元気になるわ。
取りあえず片付けるために一旦視線を外す。横からはもう突き刺さるような視線が向かっているのがわかる。見すぎだろと思わず小さくこぼした。
「突然言われてもな」
「……すみません。でも、伝えられる時に伝えないとって思って。気分を悪くさせてしまったのならごめんなさい。でも、リクトさんのこと想い続けてることは許してください」
いや全然引く気ねぇのかよ。子どもの頃周りから散々可愛がられていた奴が、まさかこんな頑固な一面があるとは。
一度息を吐き出せば小さく揺れる肩が目端に映った。
「……ま、俺にそう言ってくる奴いないし。ありがとな」
「……!」
嫌だったらはっきり断ればいいだけの話だ。だがこうして俺に告白してきた奴なんてセオが初めてだし、お前よく俺のこと好きになったなという驚きのほうが大きい。
だがまぁ、思い返せばこいつに告白されても別に嫌悪感は一切なかったし、そもそも俺はこいつの勃ったアレをわざわざ抜いてやっている。嫌悪感があったらあんなことはしない。
「取りあえず、お前のことよく知らねぇし。知っていくところからだな」
「えっ……い、いいんですか⁈」
「別に付き合うってわけじゃねぇぞ」
「ももももちろんです! あ、あの! これから時間があったらできる限り村に顔を出すので! そ、それで、俺のこと知っていってください!」
さっきまで真剣だったくせに一気に子どもに返ったかのようにどもるしはしゃぐし。騎士になったばかりの成人男性だろと思わず小さく吹き出してしまった。
すると急に胸を押さえて短く呻き声を上げるじゃねぇか。一瞬「早まったか」と思いつつ、武器と道具を元の場所に戻すために小屋に向かうと犬のようについてきた。こいつ今後騎士としてやっていけるんだろうか。
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