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こんなの想定してない
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「お父さんたち、ただいま!」
俺の声に両親の表情はパッと輝いた。
三年ぶりの再会に親子三人で抱きしめあった。手紙のやり取りはしていたけれど、それでもやっぱり騎士を目指して過酷な鍛錬は大変なものだろうと心配していたそうだ。俺の元気な姿を見て二人はホッと息を吐き、そして「逞しくなった」と涙を浮かべながら言ってくれた。
「あんなに細かったのにね」
「今ではもう立派な騎士だな」
二人にそう言われて思わず照れてしまう。俺が無事に騎士になれたのも最終的に二人が送り出してくれたおかげだ。俺もお父さんたちが変わらず元気な姿でいてくれていることに心の底から安堵した。のどかな村だから余程のことはないと思っていたけれど、でももしかしたら病気などしているかもしれないと心配していたから。
親子の再会を済ませると、村を歩いておいでと薦められた。特に変わったことはないけれど懐かしさはあるだろうからと。二人の言葉に頷いて、荷物を下ろして村を歩いて回ることにした。
確かに一見変わっていないようで、でもやっぱり同年代の子たちの成長は見てとれた。一緒に遊んでいた子たちの中には家を継いでいる子もいれば、結婚した子も。みんな再会した時、一瞬俺だと気付かずほとんどの子が驚いていた。
「本当にセオ⁈」
「かっこよくなってんじゃん。誰かと思った!」
「でも相変わらず顔は綺麗ね、よかった~」
「恋人いるの?」
「ばっか野暮なこと聞くなって。首都でもモテてただろうからいないわけがないだろ」
「ねね、もし恋人がいなかったら、私と……」
気付いたら囲まれてしまうことをすっかり忘れていた。いつの間にか周りには人だかり。俺が答える前に色々と聞かれてしまって思わず苦笑を浮かべる。ここはやんわりと断って早々に一人になったほうがいいかもしれない。
あまり長居できないから今のうちに村を見て回りたい、と申し訳なさげに伝えるとみんなは慌てて道を開けてくれた。少しの間でもゆっくりしていってとの言葉にありがとうと返し、手を振って見送るみんなに手を振り返す。
「ふぅ……よかった」
無事に開放されて。そのまま囲まれたまま時間が経ってしまうかと思った。流石に騎士になって身体が大きくなったおかげで、昔のようにただ押されるがままということはなくなってホッとする。
ただしばらくのんびりと歩いていると同年代の子が走ってきて「あとで宴しよう」と言ってくれて、その厚意はありがたく頂くことにした。俺も久しぶりにみんなとゆっくりお喋りしたいし。
宴の準備が終わるまでゆっくり見て回っておいでの言葉に笑顔で頷き、一先ずそこでその子とは別れた。多分だけれど、俺が覚えている限り村の宴は日が傾いてから行われていたはず。まだ夕暮れ時だから、日が傾いたら村の広場に向かおうと歩きだした。
「懐かしいな。ここで薬味を採ったりしたっけ」
しばらく歩いて村の隅のほうまでやってきた。小さい頃身体を鍛えたいからと言ってお父さんたちの手伝いをしていたっけ。ただ疲れていた俺を心配してか、一人になれる場所に二人は向かわせてくれた。
あの時はこの場所も広く見えたのに、今こうして成長してから来てみると自分が思っていた以上に広い場所ではなかった。子どもの時はあんなに必死だったのに大人だと半日かかるなんてことは絶対ない。あんなに高く思えた茂みも今では俺の腰辺りだ。
お父さんたちのために何か少し採っていこうかな、と少しだけ身を屈める。ああでも宴の準備もしてくれているから、またの機会にしようか。近くの屯所だから時間がある時は帰ってこれるはずだ。その時に採ろう、そう思って身体を起こし軽く背筋を伸ばす。もう少しだけ見て回ろうかな、と茂みを越えて広場のほうへ足を向ける。
俺は忘れていた。昔、同じような状況に陥ったことがあったことを。ここを出た先に何が近くにあるのかを。衝撃的なことが起きたのにすっかり油断していた俺は、喉の奥でヒッと小さく悲鳴を上げた。
「あっ……」
きっと狩りを終えて、汗を流していたところだったんだろう。目が合った瞬間反射的に目を逸らしてしまった。だというのに欲に忠実なのか、俺の目がゆっくりとさっきの場所へと戻る。
あの頃も逞しい身体つきだと思っていたのに、三年経つとそれよりも更に逞しくなっている。髪を伸ばしているのかわからないけれど、そこからぽたぽたと滴り落ちる雫が頬を伝い鎖骨に落ちる。騎士として鍛えたはずの俺よりも太い腕。くっきりと浮かぶ筋肉。あの頃よりもずっと精悍な顔つきで、射抜くような眼差しが俺に向く。
「あ、これはそのっ、決して覗きとかじゃなくて、た、たまたまっ」
本当に偶然だった決して覗きをしようとしてここに現れたわけじゃない。そんな言い訳を頭の中でぐるぐると回しながらも俺の視線は正直なもので彼から離そうとしない。そんな彼の目がふと、俺の下半身へと向かう。
馬鹿正直に反応している、俺の下半身に。
謝ったところで反応しているのは誤魔化せない。こんな再会をするはずじゃなかった。ちゃんと挨拶に向かって、あなたのおかげで騎士になることができたとそう胸を張って言うはずだったのに。
「……取りあえず抜けば? その間俺は上がって服を着るから」
「え、えっと……はい……そうします……すみません……」
このまま動くこともできず、彼の言葉に甘えるしかなかった。湯船から上がり背を向けたのを確認して泣きたい気持ちになりながら自身を取り出す。俺の気を遣ってくれている、というのはわかっているのに。
それなのに、俺の視線は彼の身体から外すことができない。
滴る雫に湯上がりで火照った身体。曝け出されている身体に尚更下腹部に熱が集まる。前に一度見たあの時もずっと、艶めかしい。
一度見てからその後、成長したものはずっと妄想でしか思い浮かべることができなかった。けれど、自分が妄想していたものよりもずっと刺激的で、煽情的。背中を向けられていることをいいことに彼の身体から目を離すことなく上下に手を動かす。
迫り上がってくる感覚がいつもより早いと気付き、そのまま呆気なく欲を吐き捨てた。息を詰めて、軽く肩で呼吸する。頃合いを見計らってくれたのかもしれない。しっかりと服を着込んだ彼の意識がこちらに向いたのがわかった。
「収まったか」
「あっ……」
「……は?」
吐き出したばかりだというのに、彼の声だけであっという間に元気を取り戻してしまった。流石に居た堪れなさ過ぎる。申し訳なさ過ぎる。いつもはこんなんじゃないんですと言葉にできない言い訳を並べつつ、視界がじんわりと滲む。情けなさ過ぎる。
すでに現状にいっぱいいっぱいだというのに、彼は何を思ったのだろう。
「手伝ってやろうか」
「……えっ⁈」
てつだう。てつだうって、何を。
飲み込めないのに、それなのに馬鹿みたいに首を縦に振って彼の接近を許した。身を屈めた時にふわりと石鹸の香りが鼻腔をくすぐる。すっかり元気を取り戻したそれに無骨な手が伸びて、そして触れる。
そのまま上下に扱かれ自然と息が上がってくる。彼はいつも、自分でする時こんな感じなんだろうか。騎士である俺よりも節々がしっかりしており、皮の厚い手に触れられている。そう思うだけで今まで感じたものよりもずっと強い快楽だった。
身体が震え、脳が痺れる。あの人に、憧れていた人に、恋い焦がれていた人に、彼の香りがわかる距離で手を伸ばせば触れられる距離で。
いつの間にか彼にしがみついてただ快楽に溺れていた。遠くから呼ぶ声が聞こえているからもう行かなきゃいけないのに、それなのにこの時間がもっと続けばいいのにと願っている。こんなの、きっとこれから先こんなことは起きない。この場で終わってしまうなんてもったいなさ過ぎる。
彼の名前を呼んで彼の体温を感じて、一度目以上の吐精感を迎え出されたそれは彼にかかることなく、ぱたたと地面の上に落ちた。
今まで感じたことのない幸福感――の直後に襲われたのはとてつもない罪悪感だった。
俺の声に両親の表情はパッと輝いた。
三年ぶりの再会に親子三人で抱きしめあった。手紙のやり取りはしていたけれど、それでもやっぱり騎士を目指して過酷な鍛錬は大変なものだろうと心配していたそうだ。俺の元気な姿を見て二人はホッと息を吐き、そして「逞しくなった」と涙を浮かべながら言ってくれた。
「あんなに細かったのにね」
「今ではもう立派な騎士だな」
二人にそう言われて思わず照れてしまう。俺が無事に騎士になれたのも最終的に二人が送り出してくれたおかげだ。俺もお父さんたちが変わらず元気な姿でいてくれていることに心の底から安堵した。のどかな村だから余程のことはないと思っていたけれど、でももしかしたら病気などしているかもしれないと心配していたから。
親子の再会を済ませると、村を歩いておいでと薦められた。特に変わったことはないけれど懐かしさはあるだろうからと。二人の言葉に頷いて、荷物を下ろして村を歩いて回ることにした。
確かに一見変わっていないようで、でもやっぱり同年代の子たちの成長は見てとれた。一緒に遊んでいた子たちの中には家を継いでいる子もいれば、結婚した子も。みんな再会した時、一瞬俺だと気付かずほとんどの子が驚いていた。
「本当にセオ⁈」
「かっこよくなってんじゃん。誰かと思った!」
「でも相変わらず顔は綺麗ね、よかった~」
「恋人いるの?」
「ばっか野暮なこと聞くなって。首都でもモテてただろうからいないわけがないだろ」
「ねね、もし恋人がいなかったら、私と……」
気付いたら囲まれてしまうことをすっかり忘れていた。いつの間にか周りには人だかり。俺が答える前に色々と聞かれてしまって思わず苦笑を浮かべる。ここはやんわりと断って早々に一人になったほうがいいかもしれない。
あまり長居できないから今のうちに村を見て回りたい、と申し訳なさげに伝えるとみんなは慌てて道を開けてくれた。少しの間でもゆっくりしていってとの言葉にありがとうと返し、手を振って見送るみんなに手を振り返す。
「ふぅ……よかった」
無事に開放されて。そのまま囲まれたまま時間が経ってしまうかと思った。流石に騎士になって身体が大きくなったおかげで、昔のようにただ押されるがままということはなくなってホッとする。
ただしばらくのんびりと歩いていると同年代の子が走ってきて「あとで宴しよう」と言ってくれて、その厚意はありがたく頂くことにした。俺も久しぶりにみんなとゆっくりお喋りしたいし。
宴の準備が終わるまでゆっくり見て回っておいでの言葉に笑顔で頷き、一先ずそこでその子とは別れた。多分だけれど、俺が覚えている限り村の宴は日が傾いてから行われていたはず。まだ夕暮れ時だから、日が傾いたら村の広場に向かおうと歩きだした。
「懐かしいな。ここで薬味を採ったりしたっけ」
しばらく歩いて村の隅のほうまでやってきた。小さい頃身体を鍛えたいからと言ってお父さんたちの手伝いをしていたっけ。ただ疲れていた俺を心配してか、一人になれる場所に二人は向かわせてくれた。
あの時はこの場所も広く見えたのに、今こうして成長してから来てみると自分が思っていた以上に広い場所ではなかった。子どもの時はあんなに必死だったのに大人だと半日かかるなんてことは絶対ない。あんなに高く思えた茂みも今では俺の腰辺りだ。
お父さんたちのために何か少し採っていこうかな、と少しだけ身を屈める。ああでも宴の準備もしてくれているから、またの機会にしようか。近くの屯所だから時間がある時は帰ってこれるはずだ。その時に採ろう、そう思って身体を起こし軽く背筋を伸ばす。もう少しだけ見て回ろうかな、と茂みを越えて広場のほうへ足を向ける。
俺は忘れていた。昔、同じような状況に陥ったことがあったことを。ここを出た先に何が近くにあるのかを。衝撃的なことが起きたのにすっかり油断していた俺は、喉の奥でヒッと小さく悲鳴を上げた。
「あっ……」
きっと狩りを終えて、汗を流していたところだったんだろう。目が合った瞬間反射的に目を逸らしてしまった。だというのに欲に忠実なのか、俺の目がゆっくりとさっきの場所へと戻る。
あの頃も逞しい身体つきだと思っていたのに、三年経つとそれよりも更に逞しくなっている。髪を伸ばしているのかわからないけれど、そこからぽたぽたと滴り落ちる雫が頬を伝い鎖骨に落ちる。騎士として鍛えたはずの俺よりも太い腕。くっきりと浮かぶ筋肉。あの頃よりもずっと精悍な顔つきで、射抜くような眼差しが俺に向く。
「あ、これはそのっ、決して覗きとかじゃなくて、た、たまたまっ」
本当に偶然だった決して覗きをしようとしてここに現れたわけじゃない。そんな言い訳を頭の中でぐるぐると回しながらも俺の視線は正直なもので彼から離そうとしない。そんな彼の目がふと、俺の下半身へと向かう。
馬鹿正直に反応している、俺の下半身に。
謝ったところで反応しているのは誤魔化せない。こんな再会をするはずじゃなかった。ちゃんと挨拶に向かって、あなたのおかげで騎士になることができたとそう胸を張って言うはずだったのに。
「……取りあえず抜けば? その間俺は上がって服を着るから」
「え、えっと……はい……そうします……すみません……」
このまま動くこともできず、彼の言葉に甘えるしかなかった。湯船から上がり背を向けたのを確認して泣きたい気持ちになりながら自身を取り出す。俺の気を遣ってくれている、というのはわかっているのに。
それなのに、俺の視線は彼の身体から外すことができない。
滴る雫に湯上がりで火照った身体。曝け出されている身体に尚更下腹部に熱が集まる。前に一度見たあの時もずっと、艶めかしい。
一度見てからその後、成長したものはずっと妄想でしか思い浮かべることができなかった。けれど、自分が妄想していたものよりもずっと刺激的で、煽情的。背中を向けられていることをいいことに彼の身体から目を離すことなく上下に手を動かす。
迫り上がってくる感覚がいつもより早いと気付き、そのまま呆気なく欲を吐き捨てた。息を詰めて、軽く肩で呼吸する。頃合いを見計らってくれたのかもしれない。しっかりと服を着込んだ彼の意識がこちらに向いたのがわかった。
「収まったか」
「あっ……」
「……は?」
吐き出したばかりだというのに、彼の声だけであっという間に元気を取り戻してしまった。流石に居た堪れなさ過ぎる。申し訳なさ過ぎる。いつもはこんなんじゃないんですと言葉にできない言い訳を並べつつ、視界がじんわりと滲む。情けなさ過ぎる。
すでに現状にいっぱいいっぱいだというのに、彼は何を思ったのだろう。
「手伝ってやろうか」
「……えっ⁈」
てつだう。てつだうって、何を。
飲み込めないのに、それなのに馬鹿みたいに首を縦に振って彼の接近を許した。身を屈めた時にふわりと石鹸の香りが鼻腔をくすぐる。すっかり元気を取り戻したそれに無骨な手が伸びて、そして触れる。
そのまま上下に扱かれ自然と息が上がってくる。彼はいつも、自分でする時こんな感じなんだろうか。騎士である俺よりも節々がしっかりしており、皮の厚い手に触れられている。そう思うだけで今まで感じたものよりもずっと強い快楽だった。
身体が震え、脳が痺れる。あの人に、憧れていた人に、恋い焦がれていた人に、彼の香りがわかる距離で手を伸ばせば触れられる距離で。
いつの間にか彼にしがみついてただ快楽に溺れていた。遠くから呼ぶ声が聞こえているからもう行かなきゃいけないのに、それなのにこの時間がもっと続けばいいのにと願っている。こんなの、きっとこれから先こんなことは起きない。この場で終わってしまうなんてもったいなさ過ぎる。
彼の名前を呼んで彼の体温を感じて、一度目以上の吐精感を迎え出されたそれは彼にかかることなく、ぱたたと地面の上に落ちた。
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