4 / 7
甘い唾液
甘い唾液 4
しおりを挟む
*
「あれ?・・・これ何ですか?」
いつの間にかオレの家に置くようになった、黒いパーカーとジーンズに身を包んだ珀英が、夕飯後冷蔵庫を開けて、何やらごそごそして声を上げた。
いつも通り一つに結えている長い金髪が揺れた。
仕事を終えた珀英が当然のように夕飯を作り、同じく仕事を終えて帰宅したオレと一緒にご飯を食べたところだった。
オレは珀英の作ってくれた、体の温まるポトフとササミの大葉巻き、珀英の実家から送られてきたぬか漬けと、小松菜としらすの炒め物を食べて、ソファでごろごろしたところだった。
今日はこの冬一番に冷え込んで寒さが厳しい日だったから、暖房の効いた部屋と珀英のご飯で温まって幸せを感じていた。
以前は酷い偏食だったのが珀英のご飯のおかげで、だんだん好き嫌いがなくなってきたのを実感していたところに、珀英が冷蔵庫から取り出した製氷皿を見た。
見た瞬間。
あれに何が入っているのかを思い出した。
正直すっかり忘れていた。
そしてバレンタインまでまだ数日あることも思い出す。
「あーーーーー?!!待ってっ!!!」
「え?!・・・え?!」
オレが大声出したことで珀英がびっくりして、製氷皿を持ったまま固まっていた。
オレはソファから起き上がって、一直線に冷蔵庫の側にいる珀英のところまで駆け寄った。
珀英の手の中にある製氷皿を奪い取る。驚いて瞬きを繰り返す珀英。オレは珀英をきつく睨みつけた。
無理やり製氷皿を奪い取って、固まるオレ。
製氷皿に入っていたものを見て、固まる珀英。
冷蔵庫の前で二人とも固まって、この後どうしようかと考える。
長い沈黙。
「・・・見た?」
「え・・・いや・・・」
珀英が嬉しそうに口元が緩みながらも、気まずそうに視線をそらす。ほんの少し頬が赤くなっている。
しっかり見てんじゃねぇか!!
じーーーーっと見つめる。
珀英は視線をそらせては、オレの持つ製氷皿を見て、オレの顔を見て、また視線そらせて・・・を繰り返す。
もうどうしたって隠しようがないじゃないか。
オレは諦めて、盛大な溜息をついて。
つい・・っと製氷皿を珀英に差し出す。
珀英は大きな目を更に大きく見開いて、どう反応したらいいのかわからないというように、何故か頭を振って拒否する。
それはそれで、イラッとする。
「は?何?いらないの?」
「え?・・・いやその・・・」
「・・・せっかく作ったのに・・・」
ぷくっと頬を膨らませて、拗ねたように視線を外してそっぽ向く。
「いらないんならいい」
製氷皿をゴミ箱に捨てようとする仕草を見せると、珀英が慌ててオレの手から製氷皿を取り上げる。
「・・・いります!!」
必死に取り返して、胸に抱きしめそうな勢いの珀英を見て、思わずくすりと笑ってしまう。
そうそう。
その反応が見たかった。
そうやって必死にオレを求める珀英が。
欲しかった。
「あれ?・・・これ何ですか?」
いつの間にかオレの家に置くようになった、黒いパーカーとジーンズに身を包んだ珀英が、夕飯後冷蔵庫を開けて、何やらごそごそして声を上げた。
いつも通り一つに結えている長い金髪が揺れた。
仕事を終えた珀英が当然のように夕飯を作り、同じく仕事を終えて帰宅したオレと一緒にご飯を食べたところだった。
オレは珀英の作ってくれた、体の温まるポトフとササミの大葉巻き、珀英の実家から送られてきたぬか漬けと、小松菜としらすの炒め物を食べて、ソファでごろごろしたところだった。
今日はこの冬一番に冷え込んで寒さが厳しい日だったから、暖房の効いた部屋と珀英のご飯で温まって幸せを感じていた。
以前は酷い偏食だったのが珀英のご飯のおかげで、だんだん好き嫌いがなくなってきたのを実感していたところに、珀英が冷蔵庫から取り出した製氷皿を見た。
見た瞬間。
あれに何が入っているのかを思い出した。
正直すっかり忘れていた。
そしてバレンタインまでまだ数日あることも思い出す。
「あーーーーー?!!待ってっ!!!」
「え?!・・・え?!」
オレが大声出したことで珀英がびっくりして、製氷皿を持ったまま固まっていた。
オレはソファから起き上がって、一直線に冷蔵庫の側にいる珀英のところまで駆け寄った。
珀英の手の中にある製氷皿を奪い取る。驚いて瞬きを繰り返す珀英。オレは珀英をきつく睨みつけた。
無理やり製氷皿を奪い取って、固まるオレ。
製氷皿に入っていたものを見て、固まる珀英。
冷蔵庫の前で二人とも固まって、この後どうしようかと考える。
長い沈黙。
「・・・見た?」
「え・・・いや・・・」
珀英が嬉しそうに口元が緩みながらも、気まずそうに視線をそらす。ほんの少し頬が赤くなっている。
しっかり見てんじゃねぇか!!
じーーーーっと見つめる。
珀英は視線をそらせては、オレの持つ製氷皿を見て、オレの顔を見て、また視線そらせて・・・を繰り返す。
もうどうしたって隠しようがないじゃないか。
オレは諦めて、盛大な溜息をついて。
つい・・っと製氷皿を珀英に差し出す。
珀英は大きな目を更に大きく見開いて、どう反応したらいいのかわからないというように、何故か頭を振って拒否する。
それはそれで、イラッとする。
「は?何?いらないの?」
「え?・・・いやその・・・」
「・・・せっかく作ったのに・・・」
ぷくっと頬を膨らませて、拗ねたように視線を外してそっぽ向く。
「いらないんならいい」
製氷皿をゴミ箱に捨てようとする仕草を見せると、珀英が慌ててオレの手から製氷皿を取り上げる。
「・・・いります!!」
必死に取り返して、胸に抱きしめそうな勢いの珀英を見て、思わずくすりと笑ってしまう。
そうそう。
その反応が見たかった。
そうやって必死にオレを求める珀英が。
欲しかった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
年上の恋人は優しい上司
木野葉ゆる
BL
小さな賃貸専門の不動産屋さんに勤める俺の恋人は、年上で優しい上司。
仕事のこととか、日常のこととか、デートのこととか、日記代わりに綴るSS連作。
基本は受け視点(一人称)です。
一日一花BL企画 参加作品も含まれています。
表紙は松下リサ様(@risa_m1012)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!!!
完結済みにいたしました。
6月13日、同人誌を発売しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる