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よくできました
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めったに聞けない緋音の素直な言葉に、珀英は固唾(かたず)を飲んで顔をしかめて目をそらした。
珀英はそのままキッチンへ向かい、冷蔵庫を開けて夕飯用に下ごしらえしていたものを取り出す。
気づくと緋音はソファからダイニングの、いつもの自分の椅子に移動していて、頬杖をついて楽しそうに嬉しそうに珀英を眺めていた。
緋音の薄茶の瞳が楽しそうに煌(きら)めいて、珀英の動きを一瞬も逃(のが)さないように、くるくると追っている。
珀英は緋音の視線を背中に感じながら、冷蔵庫から、ひき肉や玉ねぎなどを中に詰めておいたトマトのファルシを取り出して、上にチーズを乗せてオーブンへ入れて焼き始める。
他にはエビをたっぷり使った魚介のブイヤベースを作っておいたので、コンロに火をつけて温める。
あまりいっぱい食べられない緋音には、これに軽いサラダがつけば十分な量だった。
珀英は昼間に買って来ておいたバゲットを切ってお皿に盛り、焼き上がったトマトのファルシと、ブイヤベースを緋音の座る食卓に並べる。
取り皿やカトラリーを並べているのを、緋音は本当に嬉しそうに眺めていた。
やっと、日本に帰ってきたんだと、実感する。
珀英の作ったご飯が目の前に並べられて、熱い湯気をたてて、美味しそうな芳(かぐわ)しい匂いを嗅いで。本当に日本に帰ってこれて良かった、そう思う。
ロンドンにいた時に、どれほど珀英のご飯を食べたいと思ったかわからない。
自分で作ってみても珀英みたいに美味しくないし、焦げるし、かと思ったら生焼けだったりして、本当に最悪だった。
珀英が作り置きしてくれたのは温めるだけだから、そんなことにはならないけれども。
それでも、作りたてには敵(かな)わない。
そんな最悪な食生活がやっと終わる。
日本に帰ってきたから、これからは毎日珀英の作ったご飯が食べられる。
やっと、その日常に帰ってこれた。
当たり前じゃないけれども、当たり前にしたい、愛おしい日常。
緋音は目の前に並んだ、湯気を立てているとても美味しそうな夕ご飯を、わくわくしながら見ている。
珀英が配膳を終えて、冷蔵庫から冷えたスパーリングワインを持って、専用のグラスを2脚持って緋音の目の前の、いつもの椅子に座った。
珀英が骨太いくせに長くて形の良い指で、ワインの栓を開けると、琥珀色(こはくいろ)の液体をグラスに注ぐ。
同時に真っ白な細かい泡が立っては消えていくのを、緋音はゆっくりと眺(なが)める。
珀英がそっと、緋音の前にグラスを置いた。
珀英が椅子に座って、そっと手を合わせる。
それを合図に緋音も手を合わせると、珀英はそっと呟(つぶや)いた。
「いただきます」
自分ではない、珀英が発したその言葉に、緋音はひどく安堵(あんど)した。
*
思ったよりも緋音さんがご飯を食べてくれた。
用意したご飯をきれいに食べてもらえて嬉しいけど、もしかして足りなかったのか?
以前の緋音さんだったら十分足りる量を出したつもりだったけど、もしかして、ロンドンにいる内に食べる量が増えた?
残り少ない白ワインをゆっくりと飲んでいる緋音さんに、不安になって問いかける。
「ご飯、足りました?まだ食べます?」
「いや、十分。これ以上は無理」
珀英はそのままキッチンへ向かい、冷蔵庫を開けて夕飯用に下ごしらえしていたものを取り出す。
気づくと緋音はソファからダイニングの、いつもの自分の椅子に移動していて、頬杖をついて楽しそうに嬉しそうに珀英を眺めていた。
緋音の薄茶の瞳が楽しそうに煌(きら)めいて、珀英の動きを一瞬も逃(のが)さないように、くるくると追っている。
珀英は緋音の視線を背中に感じながら、冷蔵庫から、ひき肉や玉ねぎなどを中に詰めておいたトマトのファルシを取り出して、上にチーズを乗せてオーブンへ入れて焼き始める。
他にはエビをたっぷり使った魚介のブイヤベースを作っておいたので、コンロに火をつけて温める。
あまりいっぱい食べられない緋音には、これに軽いサラダがつけば十分な量だった。
珀英は昼間に買って来ておいたバゲットを切ってお皿に盛り、焼き上がったトマトのファルシと、ブイヤベースを緋音の座る食卓に並べる。
取り皿やカトラリーを並べているのを、緋音は本当に嬉しそうに眺めていた。
やっと、日本に帰ってきたんだと、実感する。
珀英の作ったご飯が目の前に並べられて、熱い湯気をたてて、美味しそうな芳(かぐわ)しい匂いを嗅いで。本当に日本に帰ってこれて良かった、そう思う。
ロンドンにいた時に、どれほど珀英のご飯を食べたいと思ったかわからない。
自分で作ってみても珀英みたいに美味しくないし、焦げるし、かと思ったら生焼けだったりして、本当に最悪だった。
珀英が作り置きしてくれたのは温めるだけだから、そんなことにはならないけれども。
それでも、作りたてには敵(かな)わない。
そんな最悪な食生活がやっと終わる。
日本に帰ってきたから、これからは毎日珀英の作ったご飯が食べられる。
やっと、その日常に帰ってこれた。
当たり前じゃないけれども、当たり前にしたい、愛おしい日常。
緋音は目の前に並んだ、湯気を立てているとても美味しそうな夕ご飯を、わくわくしながら見ている。
珀英が配膳を終えて、冷蔵庫から冷えたスパーリングワインを持って、専用のグラスを2脚持って緋音の目の前の、いつもの椅子に座った。
珀英が骨太いくせに長くて形の良い指で、ワインの栓を開けると、琥珀色(こはくいろ)の液体をグラスに注ぐ。
同時に真っ白な細かい泡が立っては消えていくのを、緋音はゆっくりと眺(なが)める。
珀英がそっと、緋音の前にグラスを置いた。
珀英が椅子に座って、そっと手を合わせる。
それを合図に緋音も手を合わせると、珀英はそっと呟(つぶや)いた。
「いただきます」
自分ではない、珀英が発したその言葉に、緋音はひどく安堵(あんど)した。
*
思ったよりも緋音さんがご飯を食べてくれた。
用意したご飯をきれいに食べてもらえて嬉しいけど、もしかして足りなかったのか?
以前の緋音さんだったら十分足りる量を出したつもりだったけど、もしかして、ロンドンにいる内に食べる量が増えた?
残り少ない白ワインをゆっくりと飲んでいる緋音さんに、不安になって問いかける。
「ご飯、足りました?まだ食べます?」
「いや、十分。これ以上は無理」
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