1 / 1
ぬいぐるみさん
しおりを挟む
うっかりトラックにはねられたぼくはなぜかぬいぐるみに憑依していた。
おみせに並べられた僕は男の人に買われ戸棚の奥に押し込められ外に出れたのはクリスマスの日だった。
「パパとママからよ」
ぼくは娘ちゃんへのプレゼントだったみたいだ。
「ありがとう、ママ、この子大きい、私と同じくらい」
「そうね、同じくらいね。よろこんでくれてよかったは。パパは今日はお仕事だから早く寝ましょ」
「うん、パパお仕事大変なんだね。ねぇ、来年のクリスマスプレゼント、弟か妹が欲しい」
「えっ、あぁ、いい子にしていればね、さぁ、寝ましょ」
ぼくは娘ちゃんに抱きしめられながらじっとしていた。娘ちゃんもママさんも静かに寝息を立てていた。
夜中になりサンタが家々を回っている頃、なぜかぼくは動けるようになった。
そしてぬいぐるみにはないものが。僕は立ち上がってママさんの布団に潜り込み、娘ちゃんが欲しがっていた来年のクリスマスプレゼントをママさんに仕込んであげた。
翌年、ママさんは娘ちゃんの妹ちゃんを産んだ。もちろん娘ちゃんは大喜びだった。
そしてクリスマスの夜、次のお願いをする。
「妹ちゃんが来たから、今度は弟ちゃんが欲しいです、サンタさん」
去年と同じく夜中なると動くことができたので、ママさんに娘ちゃんの喜ぶプレゼントを仕込んであげた。
次の年に娘ちゃんと妹ちゃんに弟ちゃんができた。
娘ちゃんは大喜び。妹ちゃんはまだよく分からないみたい。
クリスマスに娘ちゃんがまたお願いをした。
「もう一人妹ちゃんが欲しいです、サンタさん」
今年はパパさんも仕事が終わってみんなが揃ってのクリスマス。だから僕は動けなくて代わりにパパさんがママさんの布団に潜り込んだ。
でも、次の年は娘ちゃんへのプレゼントはなかった。
その次の年もさらにその次の年も同じだった。
娘ちゃんも大きくなり学校も卒業して仕事もして何人目かの恋人からプロポーズされて結婚することになった。
「お姉ちゃん、旦那さんとラブラブだからね、ハネムーンベビー、期待しているよぉ」
「何言ってるのよ、そんなこと」
娘ちゃんはそう言ってたけど、机の上にいるぼくの前に来ると小声で、
「赤ちゃん、欲しいな」
とつぶやいた。
夜中になると娘ちゃんは静かに寝息を立てている。僕は20年ぶりくらいで動けるようになった。
そして、娘ちゃんの布団の中にもぐりこんで娘ちゃんのお願いするプレゼントを仕込んであげた。
何か月もたったころ、娘ちゃんが帰ってきた。
「ふぅ、辛いなぁ」
娘ちゃんは大きなおなかをしていた。
「お姉ちゃんよかったねぇ」
「うん、新婚旅行では喧嘩ばっかりで、どうなるかと思ったけどね。成田に帰ってきてから仲直りの仲良ししたらこの子が来てくれたみたい」
「へぇ、ぬいぐるみさんにお願いしたからかな?ご利益ご利益」
妹ちゃんの言葉にちょっと変な顔をするママさん。あれ、あのとき、寝てたよ、ね?
娘ちゃんはときどき里帰りをしてきてた。子供が少し大きくなったころ僕の頭を撫でながらもう一人赤ちゃんが来ますようにとお祈りしをしていた。
だから夜中にぼくはうごいて娘ちゃんの願いをかなえてあげる。
妹ちゃんはなかなか結婚相手が見つからないようだった。彼氏はいるようだったけど。
妹ちゃんも娘ちゃんと同じように僕の頭を撫でてお願いする。
「あの人とは結婚できないけど、せめて子供は欲しいの」
その願いをかなえるため、夜中にぼくはうごいて妹ちゃんの布団に潜り込む。
やがて妹ちゃんのお腹が大きくなり、パパさんママさん娘ちゃん、娘ちゃんの旦那さん、弟ちゃんが深刻な顔で相談している。
やがて妹ちゃんのお腹は限界まで大きくなって、赤ちゃんを連れて帰ってきた。
そのころには僕の体はぼろぼろでいともほつれ目も取れそう。そして僕の意識もとぎれとぎれとなった。ぼくの役目もおわったのかな。
娘ちゃんと妹ちゃんがぼくをお寺に連れて行ってくれた。和尚さんのお経の声を聞いているとぼくはぬいぐるみさんから離れていく。そしてお香の煙に混じり空に向かい昇っていった。
おみせに並べられた僕は男の人に買われ戸棚の奥に押し込められ外に出れたのはクリスマスの日だった。
「パパとママからよ」
ぼくは娘ちゃんへのプレゼントだったみたいだ。
「ありがとう、ママ、この子大きい、私と同じくらい」
「そうね、同じくらいね。よろこんでくれてよかったは。パパは今日はお仕事だから早く寝ましょ」
「うん、パパお仕事大変なんだね。ねぇ、来年のクリスマスプレゼント、弟か妹が欲しい」
「えっ、あぁ、いい子にしていればね、さぁ、寝ましょ」
ぼくは娘ちゃんに抱きしめられながらじっとしていた。娘ちゃんもママさんも静かに寝息を立てていた。
夜中になりサンタが家々を回っている頃、なぜかぼくは動けるようになった。
そしてぬいぐるみにはないものが。僕は立ち上がってママさんの布団に潜り込み、娘ちゃんが欲しがっていた来年のクリスマスプレゼントをママさんに仕込んであげた。
翌年、ママさんは娘ちゃんの妹ちゃんを産んだ。もちろん娘ちゃんは大喜びだった。
そしてクリスマスの夜、次のお願いをする。
「妹ちゃんが来たから、今度は弟ちゃんが欲しいです、サンタさん」
去年と同じく夜中なると動くことができたので、ママさんに娘ちゃんの喜ぶプレゼントを仕込んであげた。
次の年に娘ちゃんと妹ちゃんに弟ちゃんができた。
娘ちゃんは大喜び。妹ちゃんはまだよく分からないみたい。
クリスマスに娘ちゃんがまたお願いをした。
「もう一人妹ちゃんが欲しいです、サンタさん」
今年はパパさんも仕事が終わってみんなが揃ってのクリスマス。だから僕は動けなくて代わりにパパさんがママさんの布団に潜り込んだ。
でも、次の年は娘ちゃんへのプレゼントはなかった。
その次の年もさらにその次の年も同じだった。
娘ちゃんも大きくなり学校も卒業して仕事もして何人目かの恋人からプロポーズされて結婚することになった。
「お姉ちゃん、旦那さんとラブラブだからね、ハネムーンベビー、期待しているよぉ」
「何言ってるのよ、そんなこと」
娘ちゃんはそう言ってたけど、机の上にいるぼくの前に来ると小声で、
「赤ちゃん、欲しいな」
とつぶやいた。
夜中になると娘ちゃんは静かに寝息を立てている。僕は20年ぶりくらいで動けるようになった。
そして、娘ちゃんの布団の中にもぐりこんで娘ちゃんのお願いするプレゼントを仕込んであげた。
何か月もたったころ、娘ちゃんが帰ってきた。
「ふぅ、辛いなぁ」
娘ちゃんは大きなおなかをしていた。
「お姉ちゃんよかったねぇ」
「うん、新婚旅行では喧嘩ばっかりで、どうなるかと思ったけどね。成田に帰ってきてから仲直りの仲良ししたらこの子が来てくれたみたい」
「へぇ、ぬいぐるみさんにお願いしたからかな?ご利益ご利益」
妹ちゃんの言葉にちょっと変な顔をするママさん。あれ、あのとき、寝てたよ、ね?
娘ちゃんはときどき里帰りをしてきてた。子供が少し大きくなったころ僕の頭を撫でながらもう一人赤ちゃんが来ますようにとお祈りしをしていた。
だから夜中にぼくはうごいて娘ちゃんの願いをかなえてあげる。
妹ちゃんはなかなか結婚相手が見つからないようだった。彼氏はいるようだったけど。
妹ちゃんも娘ちゃんと同じように僕の頭を撫でてお願いする。
「あの人とは結婚できないけど、せめて子供は欲しいの」
その願いをかなえるため、夜中にぼくはうごいて妹ちゃんの布団に潜り込む。
やがて妹ちゃんのお腹が大きくなり、パパさんママさん娘ちゃん、娘ちゃんの旦那さん、弟ちゃんが深刻な顔で相談している。
やがて妹ちゃんのお腹は限界まで大きくなって、赤ちゃんを連れて帰ってきた。
そのころには僕の体はぼろぼろでいともほつれ目も取れそう。そして僕の意識もとぎれとぎれとなった。ぼくの役目もおわったのかな。
娘ちゃんと妹ちゃんがぼくをお寺に連れて行ってくれた。和尚さんのお経の声を聞いているとぼくはぬいぐるみさんから離れていく。そしてお香の煙に混じり空に向かい昇っていった。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる